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42 セレント伯爵の目的
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数ヶ月前、赤の姫君と謳われるような娘を養女に迎えられた事はセレント伯爵にとって非常に僥倖であった。セレント伯爵は今までにないほどの興奮さえ覚えていただろう。
国王から下されていたガリンジャー領の内情を探れとの命に期限はなかったが、長引けば長引く程にタッチリアーナ国の中にも影響が強くなるだろう事は想像に容易いものだ。しかし、セレント伯爵などのタッチリアーナ国の者がガリンジャー領の村々を探索する訳にはいかなかった為、どうしても現地の人々をこちら側へと引き込む必要があった。だからガリンジャー領を探る手立てとなる娘が手元にきた事は、王命を成すための大きな一手となったのだ。
赤の姫君、ライザを手に入れる為にセレント伯爵はまず、ガリンジャー領で受け入れられている商人に手当たり次第声をかけた。彼らは大きな町から小さな村々まで出掛けていき商売をする為、村人達に踏み込んで込み入った話をするのに打ってつけの人材だった。その商人達からガリンジャー領のある村に、それは見事な赤毛の少女がいると言う話が出てきた。見事な赤髪にそしてよく聞けば赤い瞳だと。タッチリアーナ国の貴族にとってはこれ以上の朗報はないだろう。何しろ、朱色を持つ人々が優遇されている国調の為、色さえ赤ければ出自はどうでもいいとまで言い出す貴族もいる程で、現に次なる後継者に朱色が入るように朱色を持つ乙女達を側室に迎え入れる家は少なくないのだ。が、今回セレント伯爵の目的は子供を残すためではない。彼にはすでに後継者となる嫡男に二人の娘に恵まれているからだ。セレント伯爵が欲しいのは純粋にタッチリアーナ国王の命を行う協力者だった。その為にはセレント伯爵は小賢しい手を一切使わなかった。初めてライザに接触し、手紙を送った時から自分の目的と、協力者を欲している事を素直に打ち明けていたのである。
「準備はどうか?」
普段から温厚で物静か、優雅さが滲み出ている様な伯爵である。国王の前に出る為にライザに対する準備も怠らず、不足のない様に対応していた。
「はい、旦那様。上々かと存じます。お嬢様は良くお応えくださいまして、素晴らしい仕上がりにございます。」
ライザ付きの侍女からも申し分なし、と報告が上がる。何せ国王の前に出て謁見するのだ。他国の者であったとしても失礼を犯す様な事は許されない。
「恐れながら旦那様。ライザお嬢様がお持ちになっていた物はかつての我が親友、ガルダン・スクラテールの物で間違いありません。陛下も志し半ばで虚しくなったかつての臣下の遺品を、あの様に朱に愛されしお嬢様が運んでこられた事に大変感銘を受けますでしょう。」
「そうであった……陛下はお喜びになるであろうな。スクラテール閣下にはなんとお言葉をかけたら良いものか…」
「旦那様…ガルダンの、スクラテール閣下の孫子にあたる者を見つけてございます。」
「なんと!それは誠か?サージ騎士団長!」
「はい。本人にも確認済みにございます。トランダル国より流れてきた傭兵団の中に在籍していた様で、運が宜しかったかと。」
「誠か……うむ…スクラテール閣下に良い土産ができたの。その者の名は?」
「はい。クリスと申します。」
セレント伯爵は大きく肯くと屋敷の外に目を向けた。それを合図に、侍女と騎士団長は主人の部屋を静かに後にした。
国王から下されていたガリンジャー領の内情を探れとの命に期限はなかったが、長引けば長引く程にタッチリアーナ国の中にも影響が強くなるだろう事は想像に容易いものだ。しかし、セレント伯爵などのタッチリアーナ国の者がガリンジャー領の村々を探索する訳にはいかなかった為、どうしても現地の人々をこちら側へと引き込む必要があった。だからガリンジャー領を探る手立てとなる娘が手元にきた事は、王命を成すための大きな一手となったのだ。
赤の姫君、ライザを手に入れる為にセレント伯爵はまず、ガリンジャー領で受け入れられている商人に手当たり次第声をかけた。彼らは大きな町から小さな村々まで出掛けていき商売をする為、村人達に踏み込んで込み入った話をするのに打ってつけの人材だった。その商人達からガリンジャー領のある村に、それは見事な赤毛の少女がいると言う話が出てきた。見事な赤髪にそしてよく聞けば赤い瞳だと。タッチリアーナ国の貴族にとってはこれ以上の朗報はないだろう。何しろ、朱色を持つ人々が優遇されている国調の為、色さえ赤ければ出自はどうでもいいとまで言い出す貴族もいる程で、現に次なる後継者に朱色が入るように朱色を持つ乙女達を側室に迎え入れる家は少なくないのだ。が、今回セレント伯爵の目的は子供を残すためではない。彼にはすでに後継者となる嫡男に二人の娘に恵まれているからだ。セレント伯爵が欲しいのは純粋にタッチリアーナ国王の命を行う協力者だった。その為にはセレント伯爵は小賢しい手を一切使わなかった。初めてライザに接触し、手紙を送った時から自分の目的と、協力者を欲している事を素直に打ち明けていたのである。
「準備はどうか?」
普段から温厚で物静か、優雅さが滲み出ている様な伯爵である。国王の前に出る為にライザに対する準備も怠らず、不足のない様に対応していた。
「はい、旦那様。上々かと存じます。お嬢様は良くお応えくださいまして、素晴らしい仕上がりにございます。」
ライザ付きの侍女からも申し分なし、と報告が上がる。何せ国王の前に出て謁見するのだ。他国の者であったとしても失礼を犯す様な事は許されない。
「恐れながら旦那様。ライザお嬢様がお持ちになっていた物はかつての我が親友、ガルダン・スクラテールの物で間違いありません。陛下も志し半ばで虚しくなったかつての臣下の遺品を、あの様に朱に愛されしお嬢様が運んでこられた事に大変感銘を受けますでしょう。」
「そうであった……陛下はお喜びになるであろうな。スクラテール閣下にはなんとお言葉をかけたら良いものか…」
「旦那様…ガルダンの、スクラテール閣下の孫子にあたる者を見つけてございます。」
「なんと!それは誠か?サージ騎士団長!」
「はい。本人にも確認済みにございます。トランダル国より流れてきた傭兵団の中に在籍していた様で、運が宜しかったかと。」
「誠か……うむ…スクラテール閣下に良い土産ができたの。その者の名は?」
「はい。クリスと申します。」
セレント伯爵は大きく肯くと屋敷の外に目を向けた。それを合図に、侍女と騎士団長は主人の部屋を静かに後にした。
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