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40夢から覚めて 2

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「………父さんはさ…」

「ん?」

「俺じゃなくて、ライザに託した物があったんだよ。」

「…物?」

「そう、それが……確かな証拠になるんだろうな…」

「…鉱員の件?」
  
 カーリーも全てではないにしても金鉱山の裏の部分を聞いたことがあるのだ。何故、破格の報酬が貰えるのか…何故、事故が多いのか…けれど傭兵である自分達は正義の使徒じゃない。報酬に見合った仕事を雇い主に提供するのが仕事なんだから、余計な詮索も意見も言わないが吉だ。 

「…ん……」

「それが何だって、ライザが貴族になるのさ?貴族だって言うんなら、クリスの方が血筋はいいだろ?」

「…どうなんだろうね…けど…」

「タッチリアーナ、ならでは?」

「うん……凄いね、カーリーよく分かったじゃん。」

 久しぶりに見るようなクリスの満面の笑顔…それが嬉しい反面、カーリーについての話の内容ではない事にカーリーの心はモヤモヤする。

「まぁね。ここでならライザは引く手数多で受け入れられる。」

「そう…そうなんだよ。きっと誰が何を言ったとしても、例え、父さんが生きていたとしても、きっとここでは赤い色を持つ人々の意見が優先されるんだと思う。だから…」

 あまり下々の人々にはわからないかも知れないが、朱色を纏った人々の上層部での意見はかなりの確率で重要視されているのだ。

「ねぇ、クリス。ライザの持っているものって何?」

「……ごめん、カーリー。言えない……」

 ニッコリ笑っていたクリスの笑顔が苦笑に変わる。

「……そっか。」

「……うん…」

 ここでカーリーに分かったことがある。クリスはライザを恨んではいないと言うこと。ライザの証言を元に村を叩き出されたのだとしても…
 そしてきっと、ライザもだ…カーリーはライザに直に会って話したわけではないし、どのような経緯で貴族と縁を結んだのなんて分からない。が、たった一人でこんな所まで来るなんて、ライザには余程の決意があってのことだろう。少なくともライザは村人を救おうとしているのだから。

「自分が裕福になりたいわけじゃ、ないんだろう?」

「多分ね。これが自分の仕事だって言ってたから。」

「仕事、か……なら、何をしてもいいってて…?そうは思わないけどね…」

 ライザの態度に釈然としないカーリーはクリスに聞こえるか聞こえないか位の小さな声でポツリと呟いた。ライザと村民がクリスを叩き出してくれたからこそ、今クリスはカーリーとこうして日々を過ごすことができているのだけれど。

「え?何か言った?」

「べつに…」

「そ?……」

「ライザは優しくしてくれた…?」
 
 返ってくる答えが分かっている質問をカーリーはあえてする。チロリと、クリスの反応を盗み見るように伺いながら。

「どうだろう…そっけなかったかな……」

 クリスの答えにホッとした…そんな自分が女々しくてカーリーは密かに腹が立つ。優しくされたら誰だって靡いてしまうに違いないだろうし。

「でも、やり遂げようとしているライザは凄いよ…やっぱり…………」

 一瞬、カーリーの息が止まりそうになる。クリスが何を言おうとしたのか、最後まで言葉にしてくれなくて良かったのか、悪かったのか……

 何かを決めた瞳をしているクリスの灰青の瞳を直視する勇気がカーリーには無くて、何も言わずにカーリーはもう一度目を閉じた……






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