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33 再会 2

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「はい、整ったよ。」

 野営地では寝具は皆んなで洗い清潔を保っている。今日の担当者がそれぞれのテントまで届けてくれるのだ。カーリーは食後もまだ時折ぼうっとしているクリスの寝床を、クリスの代わりに今し方整え終えた様だった。

「え…?カーリー?あ!ありがと…」

 気がつけば寝る支度はできていた。

「どうしたのさ、クリス?今日は仕事終わりからずっと変。手合わせの時も心ここに在らずって感じで冷や冷やしながら見てたんだからね?」

 腕試し大会のための手合わせだ。剣技は嫌と言うほど叩き込まれていたし、日々怠らずに鍛錬してきたクリスにとっては何も考えずとも剣を振るえる。だから、カーリーが冷や冷やするほどのことではなかった様に思うのだが、カーリーは甚く心配していたと言う。

「ご、ごめん……ちょっと考え事してて……」

 いつのまにか、カーリーに両頬を掴まれたまま固定されていたクリス。誤魔化そうとしてもそうはいかなそうだ。

「ライザ…だろ?…何か、言われたのか?」

「……ライザに?ここにはいないのに?」

「クリスがそんなに取り乱すのって、村を出された時以来だろ?だから…誰かから何か村の事でも言われたのかと……」

「………」

 カーリーの勘は鋭い……

「……ううん…何にも言われていない…ただ、少しだけ里心が出たのかもね……」

「…里心って…クリス、そんな子供でも無いのに…」

「…うん。いい別れはして来なかったから……わっぷ!」

「ほら!仕方がないな!」

 気がつけば、クリスはカーリーに引き寄せられて抱きしめられていた。

「悲しい時には泣くのが良いんだろう?子供だってそうしてる。里心が出たのなら、ここで泣けばいいさ…!」

 カーリーに抱きしめられたまま、クリスはキョトンとしてしまう。

「泣くって?俺?」

「そうだよ。村には帰れなくて悲しい、寂しいって泣けばいい…!」

「ここで……?」

「不満か?」

 不満も何も、クリスは今カーリーの腕の中だ。幼い子供だったらそのまま泣けばいいだろうが、男としては断じて違うとクリスは言いたい。

「……泣かない……」

 クリスだって大の男だ。目の前にいる女に自分のテントで抱き抱えられて、さあ泣け、と言われてもどうしろと言うのか。

「……絶対、泣かない…!」

 本当は、ライザがここにいて、自分達が護るべき貴族のお嬢様となっている事に頭はまだ混乱中で、コイル騎士団長からはライザに会えと言われているし、けれど、クリス自身は会いたいのか会いたくないのかも心がくしゃくしゃで結論なんて出てはいないのだ。

「分かった……泣かなくてもいいから…少しだけでも良いから、こうしてると少しは落ち着くだろう?」
 
 泣かない宣言をしたクリスをカーリーはまだ離してはくれないらしい。カーリーの身体は柔らかくて暖かく、いい匂いがして……なるほど、ある意味凄く落ち着くが………

「カーリー………」

「……何…?」

「カーリー……ちょっと……」

「だから、何?」

「ちょっと、違う意味で落ち着か無いから、一度離して欲しい……」

「嫌だ…」

「カーリー……!ちゃんと、何があったか話すから!」

 もうカーリーの抱き締める力が優しく包み込む様にではなくて、何度目かの攻防でクリスをギリギリと締め付けるものへと変わっていた…

「約束する?」

「する…!する!」

 パンパンとクリスがカーリーの肩を叩いた所でやっとクリスは解放された。












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