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11 冬季の村は戦場 3
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やるべき事は山の様にあった。村を囲っている塀に資材小屋、薪や燃料の貯蔵庫に食糧庫、家畜小屋の補強と警護。雪が止めば村の外に出て村の外側から塀に沿って一周してくる。この中でも一番狙われやすいのは食糧庫と燃料の貯蔵庫だ。周辺の村々はこれらの備蓄に余念はないが、賊の類はそうではないのだろう。この時期に襲撃に遭う村が一番多いのだ。村の外を確認して斥候の痕跡を逸早く見付けるのもクリスの仕事だった。
「やぁ!クリス、お疲れ様!」
資材小屋で道具の点検と手入れ、補強作業をしている所にクリスも手伝いに入る。
「今日は冷えるなぁ~」
作業小屋の側に焚き火を燃やし、暖をとりながら資材の欠陥を確認する。これは次に金鉱山に入る村人達の道具で資材の破損や欠損は時に命に関わるものになるために徹底して行われる。
「お、そう言えばさっきライザの家に街からの商人が来てたみたいだぞ?何か買うのか?」
「ん?店のじゃなくて?」
作業をしつつもおしゃべりな人の口は止まらないものだ。
「違うだろ?食糧扱う奴じゃ無かったぞ?」
「何だろう?ビルカ母さんが何かで頼んだのかな?」
「ん~かなり良い身なりしていた商人だったぜ?マコスの店が賑わっているって言ってもあそこ迄上等な商人を呼ぶか?」
なんで高級品を扱う様な商人がやって来ているのか見当もつかないまま、珍しい事もあるものだと、居酒屋マコスへとクリスは向かう。
「じゃ、こちらは預かっていきますね!いや~良いお取引が出来ましたよ!先方様も大喜びなさる事間違えなしです。また、同じようにお願いしたいもんですな!」
丁度、居酒屋マコスの裏手から商人が帰ろうとしている所らしかった。見送りにはライザだけが顔を出している。
「ただいま、ライザ?」
商人を呼んだのはライザなのか?ライザも高級品を買うほどの収入はないはずで、それをクリスもよく知っていた。
「あら、お帰りなさい。思ったより早かったのね?」
「早いのは何も異常が無い証拠だから悪くは無いだろ?」
「まぁ、ね……」
「いや~~!こちらのご主人様ですか?」
ニコニコと笑顔で商人は愛想を振りまく。
「は?え、いえ、違いますよ?」
「おや、違われるのですか?」
「ええ。」
「いえね、とても良い商品を買い取れましたのでね。こちら様のご主人でしたらまた同じ様な物を頂きたいとお願いしようかと思っていたところなんですよ。」
身なりの良い商人は事情を聞かなくてもペラペラと話しだす。
「はあ……何か買取に来たんですね?」
「ええ、そうなんです!見てください!こちらの様な立派な毛皮!あ、何かこの様な物、この村に他にありませんかね?いえね、ここまで来るとなると大分時間をとられましてね。物のついででは無いんですが、良い物がありましたら高値で買い取らせて頂きたいんですよ?こちらの毛皮も貴族方に大変人気な商品でしてね。外国からもわざわざこの様な物を探しに来られる方々もおられる位でして今回もその様な方達からのお使いで参ったわけでして。で、どうでしょう?あ、貴方の腰の剣なんて、かなりのお値打ち品ではありませんか?」
毛皮……それはクリスが必死になって山で獲ってきた熊の物だろう。それを買取に?クリスにはその後もペラペラと勝手に話す商人の話は頭に入って来ない。
「ライザ………」
商人の物だろう、立派な荷馬車に積まれた毛皮を目にしてクリスはそのままライザに向き直った。
「ええ、思いもよらない程良い値で引き取ってもらえたわ。ありがとう、ね。クリス。」
悪びれもせずにニッコリと微笑む姿はいつものライザだ。
「………いえ……これは売りません。」
なおもクリスの剣に食いついて来そうな商人を何とか振り切って、クリスは自宅へと入って行った。
そう言えば、赤い石のついた指輪をライザがしている所も、クリスはこの頃見ていなかった…
「やぁ!クリス、お疲れ様!」
資材小屋で道具の点検と手入れ、補強作業をしている所にクリスも手伝いに入る。
「今日は冷えるなぁ~」
作業小屋の側に焚き火を燃やし、暖をとりながら資材の欠陥を確認する。これは次に金鉱山に入る村人達の道具で資材の破損や欠損は時に命に関わるものになるために徹底して行われる。
「お、そう言えばさっきライザの家に街からの商人が来てたみたいだぞ?何か買うのか?」
「ん?店のじゃなくて?」
作業をしつつもおしゃべりな人の口は止まらないものだ。
「違うだろ?食糧扱う奴じゃ無かったぞ?」
「何だろう?ビルカ母さんが何かで頼んだのかな?」
「ん~かなり良い身なりしていた商人だったぜ?マコスの店が賑わっているって言ってもあそこ迄上等な商人を呼ぶか?」
なんで高級品を扱う様な商人がやって来ているのか見当もつかないまま、珍しい事もあるものだと、居酒屋マコスへとクリスは向かう。
「じゃ、こちらは預かっていきますね!いや~良いお取引が出来ましたよ!先方様も大喜びなさる事間違えなしです。また、同じようにお願いしたいもんですな!」
丁度、居酒屋マコスの裏手から商人が帰ろうとしている所らしかった。見送りにはライザだけが顔を出している。
「ただいま、ライザ?」
商人を呼んだのはライザなのか?ライザも高級品を買うほどの収入はないはずで、それをクリスもよく知っていた。
「あら、お帰りなさい。思ったより早かったのね?」
「早いのは何も異常が無い証拠だから悪くは無いだろ?」
「まぁ、ね……」
「いや~~!こちらのご主人様ですか?」
ニコニコと笑顔で商人は愛想を振りまく。
「は?え、いえ、違いますよ?」
「おや、違われるのですか?」
「ええ。」
「いえね、とても良い商品を買い取れましたのでね。こちら様のご主人でしたらまた同じ様な物を頂きたいとお願いしようかと思っていたところなんですよ。」
身なりの良い商人は事情を聞かなくてもペラペラと話しだす。
「はあ……何か買取に来たんですね?」
「ええ、そうなんです!見てください!こちらの様な立派な毛皮!あ、何かこの様な物、この村に他にありませんかね?いえね、ここまで来るとなると大分時間をとられましてね。物のついででは無いんですが、良い物がありましたら高値で買い取らせて頂きたいんですよ?こちらの毛皮も貴族方に大変人気な商品でしてね。外国からもわざわざこの様な物を探しに来られる方々もおられる位でして今回もその様な方達からのお使いで参ったわけでして。で、どうでしょう?あ、貴方の腰の剣なんて、かなりのお値打ち品ではありませんか?」
毛皮……それはクリスが必死になって山で獲ってきた熊の物だろう。それを買取に?クリスにはその後もペラペラと勝手に話す商人の話は頭に入って来ない。
「ライザ………」
商人の物だろう、立派な荷馬車に積まれた毛皮を目にしてクリスはそのままライザに向き直った。
「ええ、思いもよらない程良い値で引き取ってもらえたわ。ありがとう、ね。クリス。」
悪びれもせずにニッコリと微笑む姿はいつものライザだ。
「………いえ……これは売りません。」
なおもクリスの剣に食いついて来そうな商人を何とか振り切って、クリスは自宅へと入って行った。
そう言えば、赤い石のついた指輪をライザがしている所も、クリスはこの頃見ていなかった…
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