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143.決意 4
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「アーキン?」
まだ意識が有るのか?
先程はかなり濃厚なフェロモンを当てたのだ。無防備では理性を保てないはず…だからアーキンには悪いがリリーの防御魔法をかけてそのまま魔物から離れた所に叩き落とそうかと思っていたのに。そうすればノルーが回収するだろうから。
「リリーは、護る!!」
汗だくの体に、憔悴しきった表情…腕に込める力も最早限界だろう…
「アーキン…」
愛しい者の香りが、体温が、リリーの心を落ち着かせ、また怪しく沸き立たせる…
「一緒に来るか?」
死んでやるつもりなど毛頭ないが、ここで死ぬのならば一緒が良いと素直に思ってしまったら自然とそんな言葉が出てきた。生死が関わってくるのならアーキンから離れることなど出来はしないし、離れるつもりもない…
「お前が望むなら、共に行くぞ…?」
「死んでも、離さない!!」
熱に浮かされた様なアーキンは執念の塊の様になってリリーを捕まえたのだ。
ならば答えてやらないと…
番なら答えてやらないと…
こんな時でも込み上げてくる愛しさにリリーからは苦笑が漏れる。
「仕方ないな…来い……」
リリーはグッとアーキンを引き寄せるとその唇にキスを贈る。その瞬間、丘の様な魔物はこの場の余韻を残すことなく2人をその腹の中にと飲み込んでいった。
「リリーーーー!!!!あの馬鹿が!!」
バリートを総攻撃しているジーンから無遠慮な悪態が飛ぶ。
「リリー様!!」
「おのれ!」
「何て事を!!」
リリーを丸呑みにして行った元凶を前にして騎士達の指揮は落ちるどころか敵討ちとばかりにその闘志は燃え上がる。
「くっ!リリーの事だ!何か策がある筈だ!こっちも気を抜かずに叩き潰すぞ!」
リリーは強い、簡単に魔物に潰されて殺られはしない。その証拠に足元にはリリーの張った結界が爛々と輝きを保っているのだから。
「殊勝なことだな?リーシュレイト殿下が呑まれたのにこんな所で遊んでいて良いのか?」
「ぬかせ!!!」
渾身の力を込めて蔓を叩き切る。なのに少しの突破口を作ってもすぐ様新しい蔓で塞がれてしまう。剣や、魔力での攻撃も大したダメージになっていない事など百も承知だ。
だがそれがなんだと言うのか。命をかけて戦う仲間がいると言うのならばその仲間の為に命をかける事こそまた騎士道である。
「全く今日は予想外だった…こんな大物が手に入るなんてな。俺はついているのかもしれん。」
「好き勝手、言ってくれる!」
ギリギリとジーンの噛み締めた歯が音を出す。これ以上の策がない以上、ここでこの魔物を足止めし、他の騎士団を待った方が都合がいい。
「さて、アレももらうかな。」
蔓の中からバリートが言う。アレとは下の結界の中に未だに守られているメリアンだ。
「おい、そりゃ冗談じゃねぇぞ?そんな事したらどっちかの国が終わる……」
実際にゼス国王太子の番を拐かしバリートの良い様にしてしまった場合、王太子は必ず報復をするだろう。城からメリアンの姿が見えなくなっただけでも目に見えるほどの憔悴ぶりだったのだから。
第一騎士団全隊に緊張が走る…ここで食い止めなければ全員の命を持っても償いきれない。
「ふん…騎士とは律儀すぎる者だよな?国なぞ滅びても良いじゃ無いか?納める頭が変わるだけだ。愚鈍なΩ達だって変わらず生まれてくるだろうさ。」
国民もバリートにとってはまるでどうでも良い事の様に言う。少なくとも一国の王子の発言とは思えないものだ。
「頭がおかしいのか?王族のくせに、自分の国までどうでも良いなどと…!」
「どうでも良いさ!心が踊らないんだよ、あんな国ではな。唯一楽しませてくれるのがΩ達だけなんて、そんな国要らないだろ?」
狂ってる!!Ωは人であって物でも愛玩具でも無い!
「そうか…この会話自体無意味だったな………」
魔物の巨体が動き出す。バリートが言った通り次はリリーの張った結界ごとメリアンを丸呑みにするに違いない。
ズズズズ…巨体が動くだけでも地鳴りの様な音が響く。
それを、止めねばならない…!
「お前ら全員!歯ぁ食いしばれ!!番殿が呑まれたら2度と自分の番に会えないと思えよ!!」
メリアンが呑まれたら番どころじゃなく家族にさえも会えなくなるかもしれない。親しい人々も戦禍に巻き込まれて本当に国が終わってしまう…全騎士覚悟と気迫を背に貼り付けて体勢を整える。最大限の動きをすべく集中する。誰も彼もが魔物の一挙手一投足を見逃さず瞬時に対応する為だ。
「来るぞ…!!!」
今までにない緊張の中で醜悪の塊の様な魔物が動く。
まだ意識が有るのか?
先程はかなり濃厚なフェロモンを当てたのだ。無防備では理性を保てないはず…だからアーキンには悪いがリリーの防御魔法をかけてそのまま魔物から離れた所に叩き落とそうかと思っていたのに。そうすればノルーが回収するだろうから。
「リリーは、護る!!」
汗だくの体に、憔悴しきった表情…腕に込める力も最早限界だろう…
「アーキン…」
愛しい者の香りが、体温が、リリーの心を落ち着かせ、また怪しく沸き立たせる…
「一緒に来るか?」
死んでやるつもりなど毛頭ないが、ここで死ぬのならば一緒が良いと素直に思ってしまったら自然とそんな言葉が出てきた。生死が関わってくるのならアーキンから離れることなど出来はしないし、離れるつもりもない…
「お前が望むなら、共に行くぞ…?」
「死んでも、離さない!!」
熱に浮かされた様なアーキンは執念の塊の様になってリリーを捕まえたのだ。
ならば答えてやらないと…
番なら答えてやらないと…
こんな時でも込み上げてくる愛しさにリリーからは苦笑が漏れる。
「仕方ないな…来い……」
リリーはグッとアーキンを引き寄せるとその唇にキスを贈る。その瞬間、丘の様な魔物はこの場の余韻を残すことなく2人をその腹の中にと飲み込んでいった。
「リリーーーー!!!!あの馬鹿が!!」
バリートを総攻撃しているジーンから無遠慮な悪態が飛ぶ。
「リリー様!!」
「おのれ!」
「何て事を!!」
リリーを丸呑みにして行った元凶を前にして騎士達の指揮は落ちるどころか敵討ちとばかりにその闘志は燃え上がる。
「くっ!リリーの事だ!何か策がある筈だ!こっちも気を抜かずに叩き潰すぞ!」
リリーは強い、簡単に魔物に潰されて殺られはしない。その証拠に足元にはリリーの張った結界が爛々と輝きを保っているのだから。
「殊勝なことだな?リーシュレイト殿下が呑まれたのにこんな所で遊んでいて良いのか?」
「ぬかせ!!!」
渾身の力を込めて蔓を叩き切る。なのに少しの突破口を作ってもすぐ様新しい蔓で塞がれてしまう。剣や、魔力での攻撃も大したダメージになっていない事など百も承知だ。
だがそれがなんだと言うのか。命をかけて戦う仲間がいると言うのならばその仲間の為に命をかける事こそまた騎士道である。
「全く今日は予想外だった…こんな大物が手に入るなんてな。俺はついているのかもしれん。」
「好き勝手、言ってくれる!」
ギリギリとジーンの噛み締めた歯が音を出す。これ以上の策がない以上、ここでこの魔物を足止めし、他の騎士団を待った方が都合がいい。
「さて、アレももらうかな。」
蔓の中からバリートが言う。アレとは下の結界の中に未だに守られているメリアンだ。
「おい、そりゃ冗談じゃねぇぞ?そんな事したらどっちかの国が終わる……」
実際にゼス国王太子の番を拐かしバリートの良い様にしてしまった場合、王太子は必ず報復をするだろう。城からメリアンの姿が見えなくなっただけでも目に見えるほどの憔悴ぶりだったのだから。
第一騎士団全隊に緊張が走る…ここで食い止めなければ全員の命を持っても償いきれない。
「ふん…騎士とは律儀すぎる者だよな?国なぞ滅びても良いじゃ無いか?納める頭が変わるだけだ。愚鈍なΩ達だって変わらず生まれてくるだろうさ。」
国民もバリートにとってはまるでどうでも良い事の様に言う。少なくとも一国の王子の発言とは思えないものだ。
「頭がおかしいのか?王族のくせに、自分の国までどうでも良いなどと…!」
「どうでも良いさ!心が踊らないんだよ、あんな国ではな。唯一楽しませてくれるのがΩ達だけなんて、そんな国要らないだろ?」
狂ってる!!Ωは人であって物でも愛玩具でも無い!
「そうか…この会話自体無意味だったな………」
魔物の巨体が動き出す。バリートが言った通り次はリリーの張った結界ごとメリアンを丸呑みにするに違いない。
ズズズズ…巨体が動くだけでも地鳴りの様な音が響く。
それを、止めねばならない…!
「お前ら全員!歯ぁ食いしばれ!!番殿が呑まれたら2度と自分の番に会えないと思えよ!!」
メリアンが呑まれたら番どころじゃなく家族にさえも会えなくなるかもしれない。親しい人々も戦禍に巻き込まれて本当に国が終わってしまう…全騎士覚悟と気迫を背に貼り付けて体勢を整える。最大限の動きをすべく集中する。誰も彼もが魔物の一挙手一投足を見逃さず瞬時に対応する為だ。
「来るぞ…!!!」
今までにない緊張の中で醜悪の塊の様な魔物が動く。
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