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138.思わぬ敵 3
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「止めますか!?」
見る限りアーキンを止めるべきと判断すべき所。総司令であるリリーが戦闘中ならば次なる司令官は騎士団長のジーンとなり、騎士達に采配を振らねばならない。
だが、
「待て!!状況を把握する!」
「ショーバン卿!テグリス嬢がこの場にいるはずです!」
先程ははっきりと場所特定ができなかったのだが…保護しなくては!ノルーは必死で当たりを見回す。
「分かった!…あれだろう?」
戦闘地の一角に妙に目立つリリーの結界。
「わざとですね…」
見つけてくれと言わんばかりの結界の張り方にノルーは少し胸を撫で下ろした。
誘き出そうとしているのか……ならばアーキンを無理に止める必要は無い。
「あの馬鹿は後回しだ!周囲に警戒!防御第一で敵を探せ!!」
「はっ!!」
来たな………
攻撃に伴う爆音と周囲に漂う煙で目視はできないがノルーと騎士団一団がこの場に到着したのを確認した。
「アーキン……」
相変わらずアーキンはリリーを執拗に追い詰めてくる。
眠らせるか…?
いつものリリーを見つめる熱い瞳には未だに違う色の感情が宿っていて…何度か衝撃を与えたものの正気には戻らない。
「アーキン、悪く思うなよ?」
「何がだ!貴様、抜け抜けと!!俺の、俺のリリーを返せ!!」
腹の底からのアーキンの叫びと怒号。空中を飛ぶリリーに、渾身の一撃を真上からリリーに向かって真っ直ぐに振り下ろす。
ガァァン………
重い剣撃の音が響き両者とも地面に叩きつけられて行く。魔力量も豊富な才能ある騎士の渾身の一撃だ。周囲の木々はさらに薙ぎ倒され四方に飛ばされて行く。落下の勢いで濛々と立ち込める土埃が辺りを覆った。
「アーキン?」
無意識だろう……?それなのにまだ彼の剣は止まらない。眠らせたはずなのに、それでもまだアーキンは立ち上がり剣を振り回してくるのだ。
「勝手に勝敗つけるなよ?それじゃつまらんだろ?興醒めする。」
「…………お前か………」
片手でアーキンの剣を受け止めながら、リリーはもう一方の手で思い切り光の矢を声の主に放った。同時に声の主の頭上からも矢と化した数多の水流が降り注ぐ。そして弾丸の様な巨体が防御魔法でそれらの攻撃を掻い潜ろうとしている男の真横から突っ込んでいく。
ギィィィィン……
派手な剣撃の音が鳴り止まぬうちに、敵意と殺意を隠しもしないジーンの猛攻が続いて行く。声を出した男がいた所はリリーが張った結界の上、その中にはゼス国王太子の番メリアンが閉じ込められているのだ。
男とジーンは互いに一歩も引かずに剣を合わせて行く。騎士団長の剣技に遅れを取らずに受け止めて行く男もまた手練れであった。
「ジーン…殺すなよ?」
リリーの最大限の譲歩である。兄の番を拐っただけでは飽き足らず、自分の愛する者を今も傷つけて続けているのだから。直ぐに楽になどさせてやるつもりはない。ジリジリと抑えていたリリーの怒りや殺気が辺りに満ちる。
アーキンにフェロモンは使えないだろう。眠らせる様に魔力を使ったのに、あの男は相手が入眠していようと関係なく操るらしい。ならばフェロモンに酔わせる事も無意味だ。
「リリー!!!アーキン殿はどうしたのです?」
一気にリリーの所まで飛んできたノルーが信じられない面持ちでアーキンを見つめている。
「私と同じ系統を得意とする様だ。操られている。」
「操られ………本人目覚めたら……」
ショックどころではなく病んでしまうかもしれない…自分の番を自分の手で殺そうとしているのだから。
「ジーンが相手にしている者がメリアンを拐かした者だ。奴を捕獲するぞ…!」
「了解!周囲を警戒後、逃走経路を塞ぎます!」
まさか一人でここに乗り込んでくるわけではあるまい?騎士団員達は事細かく周囲を巡回し、新たな敵を炙り出そうと必死である。それが終わればここ一体に大掛かりな結界を張り巡らせて男の退路を断つつもりだ。
「アーキン殿!!!何をしているのです!!」
ノルーがリリーと会話をしながらもアーキンはリリーに向かってくる。まるでリリーしか目に入らないかの様に…
「アーキン殿!」
声は届かないと思っていても叫ばずにはいられない。平常心を保っているリリーとて平静ではいられないだろうから。
「こいつが!!俺のリリーを!!」
ダメだ……!術者が解かなければ…
だがしかし、ジーンと交戦中のあの男にはその気はないだろう。殺気を爛々と目にたたえているジーンとの戦闘を楽しんでいる節さえ感じられるのだから。
「…くっ……ご無事で……!」
ノルーはそう呟いてそこから姿を消した。
「クックックッ……貴殿は騎士団長辺りか?」
両者とも推しも引きもしない激戦の中で対している男は非常に楽しそうである。
「………………」
「何だ?会話は嫌いか?」
ドッ………………
ジーンの一撃を交わした男の足元を狙う様に水流が動く。
「あ~あ…濡れたぞ?」
「頭が冷やせて良かったな…?」
飄々としている男に対しジーンは警戒と殺意を解かない。
「なるほど、楽しめそうだ…!」
見る限りアーキンを止めるべきと判断すべき所。総司令であるリリーが戦闘中ならば次なる司令官は騎士団長のジーンとなり、騎士達に采配を振らねばならない。
だが、
「待て!!状況を把握する!」
「ショーバン卿!テグリス嬢がこの場にいるはずです!」
先程ははっきりと場所特定ができなかったのだが…保護しなくては!ノルーは必死で当たりを見回す。
「分かった!…あれだろう?」
戦闘地の一角に妙に目立つリリーの結界。
「わざとですね…」
見つけてくれと言わんばかりの結界の張り方にノルーは少し胸を撫で下ろした。
誘き出そうとしているのか……ならばアーキンを無理に止める必要は無い。
「あの馬鹿は後回しだ!周囲に警戒!防御第一で敵を探せ!!」
「はっ!!」
来たな………
攻撃に伴う爆音と周囲に漂う煙で目視はできないがノルーと騎士団一団がこの場に到着したのを確認した。
「アーキン……」
相変わらずアーキンはリリーを執拗に追い詰めてくる。
眠らせるか…?
いつものリリーを見つめる熱い瞳には未だに違う色の感情が宿っていて…何度か衝撃を与えたものの正気には戻らない。
「アーキン、悪く思うなよ?」
「何がだ!貴様、抜け抜けと!!俺の、俺のリリーを返せ!!」
腹の底からのアーキンの叫びと怒号。空中を飛ぶリリーに、渾身の一撃を真上からリリーに向かって真っ直ぐに振り下ろす。
ガァァン………
重い剣撃の音が響き両者とも地面に叩きつけられて行く。魔力量も豊富な才能ある騎士の渾身の一撃だ。周囲の木々はさらに薙ぎ倒され四方に飛ばされて行く。落下の勢いで濛々と立ち込める土埃が辺りを覆った。
「アーキン?」
無意識だろう……?それなのにまだ彼の剣は止まらない。眠らせたはずなのに、それでもまだアーキンは立ち上がり剣を振り回してくるのだ。
「勝手に勝敗つけるなよ?それじゃつまらんだろ?興醒めする。」
「…………お前か………」
片手でアーキンの剣を受け止めながら、リリーはもう一方の手で思い切り光の矢を声の主に放った。同時に声の主の頭上からも矢と化した数多の水流が降り注ぐ。そして弾丸の様な巨体が防御魔法でそれらの攻撃を掻い潜ろうとしている男の真横から突っ込んでいく。
ギィィィィン……
派手な剣撃の音が鳴り止まぬうちに、敵意と殺意を隠しもしないジーンの猛攻が続いて行く。声を出した男がいた所はリリーが張った結界の上、その中にはゼス国王太子の番メリアンが閉じ込められているのだ。
男とジーンは互いに一歩も引かずに剣を合わせて行く。騎士団長の剣技に遅れを取らずに受け止めて行く男もまた手練れであった。
「ジーン…殺すなよ?」
リリーの最大限の譲歩である。兄の番を拐っただけでは飽き足らず、自分の愛する者を今も傷つけて続けているのだから。直ぐに楽になどさせてやるつもりはない。ジリジリと抑えていたリリーの怒りや殺気が辺りに満ちる。
アーキンにフェロモンは使えないだろう。眠らせる様に魔力を使ったのに、あの男は相手が入眠していようと関係なく操るらしい。ならばフェロモンに酔わせる事も無意味だ。
「リリー!!!アーキン殿はどうしたのです?」
一気にリリーの所まで飛んできたノルーが信じられない面持ちでアーキンを見つめている。
「私と同じ系統を得意とする様だ。操られている。」
「操られ………本人目覚めたら……」
ショックどころではなく病んでしまうかもしれない…自分の番を自分の手で殺そうとしているのだから。
「ジーンが相手にしている者がメリアンを拐かした者だ。奴を捕獲するぞ…!」
「了解!周囲を警戒後、逃走経路を塞ぎます!」
まさか一人でここに乗り込んでくるわけではあるまい?騎士団員達は事細かく周囲を巡回し、新たな敵を炙り出そうと必死である。それが終わればここ一体に大掛かりな結界を張り巡らせて男の退路を断つつもりだ。
「アーキン殿!!!何をしているのです!!」
ノルーがリリーと会話をしながらもアーキンはリリーに向かってくる。まるでリリーしか目に入らないかの様に…
「アーキン殿!」
声は届かないと思っていても叫ばずにはいられない。平常心を保っているリリーとて平静ではいられないだろうから。
「こいつが!!俺のリリーを!!」
ダメだ……!術者が解かなければ…
だがしかし、ジーンと交戦中のあの男にはその気はないだろう。殺気を爛々と目にたたえているジーンとの戦闘を楽しんでいる節さえ感じられるのだから。
「…くっ……ご無事で……!」
ノルーはそう呟いてそこから姿を消した。
「クックックッ……貴殿は騎士団長辺りか?」
両者とも推しも引きもしない激戦の中で対している男は非常に楽しそうである。
「………………」
「何だ?会話は嫌いか?」
ドッ………………
ジーンの一撃を交わした男の足元を狙う様に水流が動く。
「あ~あ…濡れたぞ?」
「頭が冷やせて良かったな…?」
飄々としている男に対しジーンは警戒と殺意を解かない。
「なるほど、楽しめそうだ…!」
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