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117.見出された花 9
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ゼス国城内でのダバルの態度は一貫していた。朝から晩まで寝室も分ける事もなく常にイルンと一緒だ。そして数日遅れて到着したランクース国の迎えの馬車をイルンと揃って当たり前の様に迎えたのだ。一時もイルンを側から離さないダバルの噂はすぐにゼス国の国中を走り抜ける。それはゼス国のみにとどまらず、あっという間に絵本になり、小説になり、演題になり各国に散っていき、夢の様なαの王子様とΩとの熱い恋愛エピソードとして一般市民の羨望の的になってしまったのだ。
ダバルはΩを得る事の素晴らしさ、愛するの事の満足感、Ωを得られた事で自分がどれだけ幸せになったか、またどれだけΩを幸せにしてやれるかなどを語り尽くせるだけ語り尽くした様である。Ωを愛でる一大ブームを巻き起こしたと言ってもいいほどであった。
「なんというか……あの方だから、できたというか………」
同じαである対魔法第1騎士団長ジーンもダバルの行き過ぎとも言える態度に閉口気味だ……人生を舞台に例えたならば花形役者というのはきっとダバルの様な者の事を言うのだろう。
「期待、できそうではありますね。」
ランクース国からやってきたΩ達の資料を手渡しつつ第3騎士団長ヨルマーも席に着く。騎士団長を含めた会議の中身はもっぱらダバルの件になりそうだった。
「陛下も兄上もダバル殿の結婚に対し大いに祝福すると言われている。なのでゼス国としてはΩ擁護派であるダバル殿の後ろ盾となろう。」
有事が起こった際には、という意味ではあるがダバルはゼス国側には非常にウケが良いのだ。
「それでランクース国内でもダバル殿下を支持する貴族家が多くなればΩの対応も改善が期待できましょうね。」
第2騎士団長グレイルの番ランカンは今白の邸宅でΩの若者達に教育を施す仕事を受け持っている。彼は過去に虐待とも呼べる酷い扱いを受け、子を成せない身体になってしまった…だからΩを番に持つ誰もが心から思うのだ。Ωが虐げられず安心して暮らせる世の中になって欲しいと…
「到着したΩは先に白の邸宅に行きルメイに診察してもらう事になっているな。」
「必要ならばマルスを待機させておきましょう。」
医療員の治療が間に合わない場合、回復魔法に長けているマルスは重宝される。
「そうしてくれ。」
「まあランクースのお客人は熱狂的な支持を得てはいますが国内は落ち着いていますよ。怪しい動きをする者もありません。」
対魔法第1騎士団は近衛と連携してダバルが滞在している間の王都の警備を任されている。大々的にΩ擁護に傾いたダバルに対して良からぬ動きをする輩共がいないとも言い切れない為だ。
「お二人は相変わらずなのか?」
ゼス国本城に未だに滞在中のダバルとイルン。常に2人は一緒に行動し、城下を散策したいというイルンの望みを叶えるべく何故かダバルは馬車ではなくて必ず馬で移動する。道中馬上で仲睦まじく笑い合いながら行くものだから嫌でも周囲の人間の目につくわけで…警護する者達にとっては目のやり場に困る事になるのに大々的な宣伝効果は絶大なのだからもう目を瞑るしかない……
「…………いいな……」
階上からならばゆっくりと馬で進む2人の様子が良く見て取れる。羨ましいと思うのは大勢の人々に囲まれている事がじゃない… 自分の番を番として隠し立てする事もなく周囲に宣言し、これは自分のものだと知らしめる事である。αならば当然の衝動だ。それだけじゃない。他国の者の事なのにゼス国の者達は喜び祝福を持って2人を受け入れているのだ。
あの様に祝福を受けた時のリリーはどんな顔をするのだろうか。アーキンを番とする事を馬上のイルンの様に満足気に幸せそうに笑ってくれるだろうか?
「おいアーキン!何惚けてんだよ?」
現在対魔法第2騎士団の面々はダバルとイルンが訪れるだろう施設の事前チェック中であった。
「……悪い…」
「悪いってお前ねぇ…あん?」
アーキンが目で追っているのは馬上の要人達…
「何、物欲しそうな顔で見てるんだよ…」
巷で憧れの的である騎士が情けない…
「そんなに羨ましいなら宣言しちゃえば?」
事情を知らない者はなんとも軽く言ってくれる。
「……本当の番にはならないそうだ……」
「あ?なんだそれ?だってお前達…」
αの人間から見たら全く理解ができない。お互い運命の様な番同士で出会い、思いあっているにも拘らず番わないとはどうした理由で?
「……番わないんだよ…」
どっしりと現実がアーキンにのしかかる。確かにリリーには番えない事を了承した。ただ共に過ごせるだけでも十分だと、幸せだと思えたからだ。けれど、実際離れてみてはどうだ?お互いをお互いの物と示すのはお互いの身体に微かに残った互いの香りだけだった。
離れている間も番の存在を感じたい…
離れていくダバルとイルンがアーキンからどんどんと離れていくリリーの様に思えてザワザワと胸騒ぎが鎮まらない……
ダバルはΩを得る事の素晴らしさ、愛するの事の満足感、Ωを得られた事で自分がどれだけ幸せになったか、またどれだけΩを幸せにしてやれるかなどを語り尽くせるだけ語り尽くした様である。Ωを愛でる一大ブームを巻き起こしたと言ってもいいほどであった。
「なんというか……あの方だから、できたというか………」
同じαである対魔法第1騎士団長ジーンもダバルの行き過ぎとも言える態度に閉口気味だ……人生を舞台に例えたならば花形役者というのはきっとダバルの様な者の事を言うのだろう。
「期待、できそうではありますね。」
ランクース国からやってきたΩ達の資料を手渡しつつ第3騎士団長ヨルマーも席に着く。騎士団長を含めた会議の中身はもっぱらダバルの件になりそうだった。
「陛下も兄上もダバル殿の結婚に対し大いに祝福すると言われている。なのでゼス国としてはΩ擁護派であるダバル殿の後ろ盾となろう。」
有事が起こった際には、という意味ではあるがダバルはゼス国側には非常にウケが良いのだ。
「それでランクース国内でもダバル殿下を支持する貴族家が多くなればΩの対応も改善が期待できましょうね。」
第2騎士団長グレイルの番ランカンは今白の邸宅でΩの若者達に教育を施す仕事を受け持っている。彼は過去に虐待とも呼べる酷い扱いを受け、子を成せない身体になってしまった…だからΩを番に持つ誰もが心から思うのだ。Ωが虐げられず安心して暮らせる世の中になって欲しいと…
「到着したΩは先に白の邸宅に行きルメイに診察してもらう事になっているな。」
「必要ならばマルスを待機させておきましょう。」
医療員の治療が間に合わない場合、回復魔法に長けているマルスは重宝される。
「そうしてくれ。」
「まあランクースのお客人は熱狂的な支持を得てはいますが国内は落ち着いていますよ。怪しい動きをする者もありません。」
対魔法第1騎士団は近衛と連携してダバルが滞在している間の王都の警備を任されている。大々的にΩ擁護に傾いたダバルに対して良からぬ動きをする輩共がいないとも言い切れない為だ。
「お二人は相変わらずなのか?」
ゼス国本城に未だに滞在中のダバルとイルン。常に2人は一緒に行動し、城下を散策したいというイルンの望みを叶えるべく何故かダバルは馬車ではなくて必ず馬で移動する。道中馬上で仲睦まじく笑い合いながら行くものだから嫌でも周囲の人間の目につくわけで…警護する者達にとっては目のやり場に困る事になるのに大々的な宣伝効果は絶大なのだからもう目を瞑るしかない……
「…………いいな……」
階上からならばゆっくりと馬で進む2人の様子が良く見て取れる。羨ましいと思うのは大勢の人々に囲まれている事がじゃない… 自分の番を番として隠し立てする事もなく周囲に宣言し、これは自分のものだと知らしめる事である。αならば当然の衝動だ。それだけじゃない。他国の者の事なのにゼス国の者達は喜び祝福を持って2人を受け入れているのだ。
あの様に祝福を受けた時のリリーはどんな顔をするのだろうか。アーキンを番とする事を馬上のイルンの様に満足気に幸せそうに笑ってくれるだろうか?
「おいアーキン!何惚けてんだよ?」
現在対魔法第2騎士団の面々はダバルとイルンが訪れるだろう施設の事前チェック中であった。
「……悪い…」
「悪いってお前ねぇ…あん?」
アーキンが目で追っているのは馬上の要人達…
「何、物欲しそうな顔で見てるんだよ…」
巷で憧れの的である騎士が情けない…
「そんなに羨ましいなら宣言しちゃえば?」
事情を知らない者はなんとも軽く言ってくれる。
「……本当の番にはならないそうだ……」
「あ?なんだそれ?だってお前達…」
αの人間から見たら全く理解ができない。お互い運命の様な番同士で出会い、思いあっているにも拘らず番わないとはどうした理由で?
「……番わないんだよ…」
どっしりと現実がアーキンにのしかかる。確かにリリーには番えない事を了承した。ただ共に過ごせるだけでも十分だと、幸せだと思えたからだ。けれど、実際離れてみてはどうだ?お互いをお互いの物と示すのはお互いの身体に微かに残った互いの香りだけだった。
離れている間も番の存在を感じたい…
離れていくダバルとイルンがアーキンからどんどんと離れていくリリーの様に思えてザワザワと胸騒ぎが鎮まらない……
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