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108.消えない熱 7
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王太子の事は夫として敬愛し尊重しているが自分はΩが好きでできればΩに囲まれて生活したい。この後宮は王太子の為の後宮でΩを入れ放題である。ここに入れば各所から色々なΩが入れられて生涯関わっていくことができるだろう。なので王太子の側室候補がΩならば大歓迎である。だから子供はまだ与えられなくても今の自分の状況に非常に満足…………
長い王太子妃の話を要約すればこの様に受け取れた。
「王妃殿下は国王陛下に執着するあまりに、ご自分以外のΩはお認めになりませんでしたわ。」
これはリリーも良く知っている事である。
「けれども私は大歓迎ですの。もし白の邸宅にいるΩが後宮にと希望ならば私が面倒見ますわよ?」
そう断言する王太子妃の瞳がキラキラとしている……
「…………それを望む者がいればですが……」
「ええ、ええ!その際は絶対に1番に私に知らせてくれなくては嫌よ、リーシュレイト様!」
こんな方だっただろうか…?きちんと顔を合わせて話したのが実の母の葬儀だけだというリリーには判断など出来ようはずがないのだが、少なくとも王太子妃の居室であるこの後宮からは全く嫌な印象は受けない。側にいる王太子妃の侍女長から下の侍女までΩの者もいる様だが非常に雰囲気がいいのである。
「妃殿下お行儀が悪うございます。」
王太子妃の行き過ぎをしっかりと止められる側近がいるという事も理由の一つだろう。王太子の周囲の心配はいらないのかもしれない…
「……では義姉上はここにいるΩを全て把握しておられると?」
「ええ、勿論ですわ!王妃殿下の後宮以外でしたら把握済みよ。」
「メリアン・テグリス…という者にお心当たりはありませんか?」
「あら?」
「テグリス嬢のお知り合いで?」
「知っているのですか!?」
「知っているも何も…リーシュレイト様は王太子殿下からその者の名前を聞いたのではないのですか?」
リリーの前にいる2人とはどうやら話が噛み合わない。侍女長もキョトンとしてリリーを見つめ返してきている。
「いえ…兄上からは心当たりないと…しかし、メリアンはここにいるのですね?義姉上?」
「ええ…いつだったかしら…他国の商人からの紹介だとか、なんとか…」
「ここまで来た経緯は知っておられますか?」
「いいえ…けれど他国から来た、と言うだけで状況は察せられますわ。」
他国はゼス国よりもずっとΩに対して冷たいのだ。商人に連れられて他国の王城まで来る者にもそれなりの事情はあるのだろう。
「その者を…探している者がいるのです。」
「お身内ですか?」
「ええ……メリアンは今どこに?」
「メリアン嬢ならこの時間教育係について勉強中ですわね。」
「教育係?」
下働きだろうΩに対して後宮で?
「まぁリーシュレイト様…そのご様子ですと本当に王太子殿下から何も聞かされてはいませんのね?」
「何をです?」
「テグリス嬢は王太子殿下の真の番でございます。」
王族に忠実な侍女長が礼を取りつつリリーへとそう告げる。
返してやれなくなった……
「本人は…なんと…?」
リリーの頭の中には侍女長が告げた言葉がグルグルと回っていて……
「まだ発情期も迎えておられないお方にございます。しっくりとは納得できておられないところがございましょうが、その辺りも含めまして只今教育係を付けているのでございます。」
「だが、兄上とでは一回り以上も離れているではないか…」
「恐れながらリーシュレイト様。番合わされる者達の年齢も性別も問題にはなりません…」
その通りである。αとΩならば番う為に壁となる大きな問題はこの世に無いのだ…
それでも…なんとかしてリリーはアーキンにメリアンを返してやれないか必死に考えてしまっている。これが惚れた弱みと言うのだろうか、番の望みを叶えてやりたい…
「…そうなのだが…」
侍女長の言葉にリリーは何も言い返す事もできずに言葉に詰まった。
「リーシュレイト様。テグリス嬢はどなたのお身内ですの?」
リリーの紫金色の瞳が揺れた…
化け物級の魔力を有しその実力は国王に次ぎ、尚且つΩでありながら勇猛果敢なαの騎士団をまとめ上げΩを護る異例の王子…その魔力と能力に誰をも太刀打ち出来ないだろうという噂は後宮にも密かに聞こえてきているのだ。実質最強を誇るとまで言われるリリーが、王太子妃の前で少しだけ弱さを見せた。
「嬉しいですわ…貴方様もやはり私が好きなΩですわ…私、弱く見えるΩの中にも誰よりも強く相手を思うその強さを垣間見るのが好きですの。」
だから王太子の為のΩが何人いても構いませんのよ。
あっけらかんと言い放ち王太子妃は惜しげもなくリリーに微笑む。
「テグリス嬢はリーシュレイト様の番殿のお身内でよろしいかしら?」
王太子妃は自分の首元を指差してリリーのガードの柘榴石を指し示す。その石と同じ色の瞳をメリアン・テグリスも持っているのだから。
長い王太子妃の話を要約すればこの様に受け取れた。
「王妃殿下は国王陛下に執着するあまりに、ご自分以外のΩはお認めになりませんでしたわ。」
これはリリーも良く知っている事である。
「けれども私は大歓迎ですの。もし白の邸宅にいるΩが後宮にと希望ならば私が面倒見ますわよ?」
そう断言する王太子妃の瞳がキラキラとしている……
「…………それを望む者がいればですが……」
「ええ、ええ!その際は絶対に1番に私に知らせてくれなくては嫌よ、リーシュレイト様!」
こんな方だっただろうか…?きちんと顔を合わせて話したのが実の母の葬儀だけだというリリーには判断など出来ようはずがないのだが、少なくとも王太子妃の居室であるこの後宮からは全く嫌な印象は受けない。側にいる王太子妃の侍女長から下の侍女までΩの者もいる様だが非常に雰囲気がいいのである。
「妃殿下お行儀が悪うございます。」
王太子妃の行き過ぎをしっかりと止められる側近がいるという事も理由の一つだろう。王太子の周囲の心配はいらないのかもしれない…
「……では義姉上はここにいるΩを全て把握しておられると?」
「ええ、勿論ですわ!王妃殿下の後宮以外でしたら把握済みよ。」
「メリアン・テグリス…という者にお心当たりはありませんか?」
「あら?」
「テグリス嬢のお知り合いで?」
「知っているのですか!?」
「知っているも何も…リーシュレイト様は王太子殿下からその者の名前を聞いたのではないのですか?」
リリーの前にいる2人とはどうやら話が噛み合わない。侍女長もキョトンとしてリリーを見つめ返してきている。
「いえ…兄上からは心当たりないと…しかし、メリアンはここにいるのですね?義姉上?」
「ええ…いつだったかしら…他国の商人からの紹介だとか、なんとか…」
「ここまで来た経緯は知っておられますか?」
「いいえ…けれど他国から来た、と言うだけで状況は察せられますわ。」
他国はゼス国よりもずっとΩに対して冷たいのだ。商人に連れられて他国の王城まで来る者にもそれなりの事情はあるのだろう。
「その者を…探している者がいるのです。」
「お身内ですか?」
「ええ……メリアンは今どこに?」
「メリアン嬢ならこの時間教育係について勉強中ですわね。」
「教育係?」
下働きだろうΩに対して後宮で?
「まぁリーシュレイト様…そのご様子ですと本当に王太子殿下から何も聞かされてはいませんのね?」
「何をです?」
「テグリス嬢は王太子殿下の真の番でございます。」
王族に忠実な侍女長が礼を取りつつリリーへとそう告げる。
返してやれなくなった……
「本人は…なんと…?」
リリーの頭の中には侍女長が告げた言葉がグルグルと回っていて……
「まだ発情期も迎えておられないお方にございます。しっくりとは納得できておられないところがございましょうが、その辺りも含めまして只今教育係を付けているのでございます。」
「だが、兄上とでは一回り以上も離れているではないか…」
「恐れながらリーシュレイト様。番合わされる者達の年齢も性別も問題にはなりません…」
その通りである。αとΩならば番う為に壁となる大きな問題はこの世に無いのだ…
それでも…なんとかしてリリーはアーキンにメリアンを返してやれないか必死に考えてしまっている。これが惚れた弱みと言うのだろうか、番の望みを叶えてやりたい…
「…そうなのだが…」
侍女長の言葉にリリーは何も言い返す事もできずに言葉に詰まった。
「リーシュレイト様。テグリス嬢はどなたのお身内ですの?」
リリーの紫金色の瞳が揺れた…
化け物級の魔力を有しその実力は国王に次ぎ、尚且つΩでありながら勇猛果敢なαの騎士団をまとめ上げΩを護る異例の王子…その魔力と能力に誰をも太刀打ち出来ないだろうという噂は後宮にも密かに聞こえてきているのだ。実質最強を誇るとまで言われるリリーが、王太子妃の前で少しだけ弱さを見せた。
「嬉しいですわ…貴方様もやはり私が好きなΩですわ…私、弱く見えるΩの中にも誰よりも強く相手を思うその強さを垣間見るのが好きですの。」
だから王太子の為のΩが何人いても構いませんのよ。
あっけらかんと言い放ち王太子妃は惜しげもなくリリーに微笑む。
「テグリス嬢はリーシュレイト様の番殿のお身内でよろしいかしら?」
王太子妃は自分の首元を指差してリリーのガードの柘榴石を指し示す。その石と同じ色の瞳をメリアン・テグリスも持っているのだから。
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