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86.ヤキモチ 6
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「ヤリスって、セロントにいた?」
潜入調査員の1人としてセロントに先に入っていたリリーの側近だ。暗器の名人とも聞いたことがある。
「そう。今も近くにいる。」
「え、これ見られてんのか……?」
大の男がゴロゴロと子供みたいに転がって番を可愛がる姿とか、他色々と?
「王族としては褥を観察されるのは普通のことだが?」
そうか…それよりも、そんな事よりも…
「そうか、分かった…見られてる事は見られた後じゃもう文句も言えないしな、仕方ない。が、リリーは俺の命も賭けるって言うんだな…?」
アーキンの命はおもちゃじゃない。賭け事に使っていいものでもない……
コクリ…リリーは静かに頷く。
「だから嫌ならば離れ…」
「嫌だね!」
リリーに最後まで言わせずにアーキンはキッパリと言い切った。
「リリーにとっては俺の命を盾に番にならない様に自制をかけているであってるよな?まさか、俺が邪魔だから陥れて葬り去ろうとしているとか言わないよな?」
今度はいたずらっ子の様な笑みを浮かべてアーキンはニヤリと笑った。
「お前は邪魔な者と褥を共にするのか?」
「冗談言うな。絶対にこれと言う者とじゃなければ嫌だ。」
意地の悪い笑みを浮かべていたのにこう言う台詞を言う時にはアーキンは至極真面目な顔でリリーを見つめてくる。
「こう言う事だろう?リリーが本能に負けて俺に番と言えば俺は喜んで今すぐにでもリリーと本当の番になる。だがそれはできないから、きっと自分の命を取られるよりもお前にとってはきつい方を選んだんだ。」
キュウッ……リリーの眉根が苦しそうに寄る。
「リリーの目的は分かった…」
アーキンは優しくリリーの頬を撫でながらゆっくりと反対の頬に口付ける。
「お前の為なら喜んで死ぬのに…邪魔だったなら戦地の前線にでも送ってくれ?それとも俺に死ねと言えばいい。どうして自分だけで重荷を負おうとするんだ?」
「怒っていいんだぞ、アーキン?私は勝手にお前の命を掛けているんだから。」
「だからいいって…お前に俺の命をやるよ…そうだよな、一度でも番えるのなら死んでもいいな…」
どこか夢心地でアーキンはこんな事まで言ってくるのだ。だから尚更アーキンとは番わない………
「わざとそんな事をしてみろ?私も後を追うからな…!」
リリーだとて分かっているのだ。これだけ惹かれあって居るのだからもう離れる事など不可能だと。1人に不幸が起きて儚くなってしまったとしたらもう生きる希望なんて持てないだろう。
「それは困った。俺はリリーに後を追わせたくはない…それに、リリー抑制剤が効かないんだろう?誰かがまたリリーに触れるかもしれないと思ったら…そんなリリーを1人になんかさせたら俺は死んでも死にきれない…」
冗談の様にそう呟いて本格的にまたアーキンはリリーに覆い被さってくる…
リリーはただ全身に広がっていくアーキンから受ける甘い刺激を身体一杯に受け止めていった…
「そろそろ用意するか?」
数日間この厩舎管理小屋で目一杯過ごしてしまった。何しろヤリスが用意してくれた食料は十分だったし、湯が入っているピッチャーには魔法の処置がしてあっていつでも適温の湯が欲しいだけ出てくるのだ。最早ここから出る必要がない程アーキンにとっては至れり尽くせりの状態で過ごしていた。
対魔法第2騎士団は最初のあの日の午後に確かに厩舎から出立して行った。管理小屋にリリーの保護魔法がかけられていると言ってもガヤガヤと外から聞こえる仲間達の声にはなんとも落ち着かない気分を味合わせてもらったものだ。皆が出立後アーキンはリリーと濃密な時間を過ごしながら時折ガランとしてしまった厩舎に行って愛馬の世話をしまたリリーの元に帰ってくるという生活をしていた。この時に姿は見せなかったがリリーもヤリスから何やら報告を受けていたらしい。
「あぁ、潮時だな…」
お互いに体を清めあって、ヤリスが用意してくれていた衣類を身につける。リリーには新しいフード付きのマントまで用意されていた。
騎士団総司令官リーシュレイト・リヨール・ゼス。細身の身体に騎士団の真新しい司令官の制服を身につけて凛と立つ。それが一騎士アーキン・テグリスの番である。戦場に出れば上司と部下、日常であっても王族と他国の平民だ。身分の差は天と地ほどで普段顔を合わせても気やすく話などして良いはずもない関係…
不思議なものだ…こんなに生きる場所と身分が違うのに、引き合わされれば一時も離れ難い程に互いを求め合うのだから…
「用意は出来たのか?後1日で合流するぞ!」
小さな小瓶に入った薬液をリリーはグッと飲み干すと既に上官の顔となっていた。
「リリー、馬の準備が出来ております。」
いつの間にかノルーがリリーの愛馬と自分の愛馬を対魔法第2騎士団厩舎前に引いてきていた。
「お疲れ様です、リリー、アーキン殿。いい顔になりましたねぇ。」
ほっこりと微笑まれてなんと返していいものか…アーキンはペコリと黙礼を持って返答した。
潜入調査員の1人としてセロントに先に入っていたリリーの側近だ。暗器の名人とも聞いたことがある。
「そう。今も近くにいる。」
「え、これ見られてんのか……?」
大の男がゴロゴロと子供みたいに転がって番を可愛がる姿とか、他色々と?
「王族としては褥を観察されるのは普通のことだが?」
そうか…それよりも、そんな事よりも…
「そうか、分かった…見られてる事は見られた後じゃもう文句も言えないしな、仕方ない。が、リリーは俺の命も賭けるって言うんだな…?」
アーキンの命はおもちゃじゃない。賭け事に使っていいものでもない……
コクリ…リリーは静かに頷く。
「だから嫌ならば離れ…」
「嫌だね!」
リリーに最後まで言わせずにアーキンはキッパリと言い切った。
「リリーにとっては俺の命を盾に番にならない様に自制をかけているであってるよな?まさか、俺が邪魔だから陥れて葬り去ろうとしているとか言わないよな?」
今度はいたずらっ子の様な笑みを浮かべてアーキンはニヤリと笑った。
「お前は邪魔な者と褥を共にするのか?」
「冗談言うな。絶対にこれと言う者とじゃなければ嫌だ。」
意地の悪い笑みを浮かべていたのにこう言う台詞を言う時にはアーキンは至極真面目な顔でリリーを見つめてくる。
「こう言う事だろう?リリーが本能に負けて俺に番と言えば俺は喜んで今すぐにでもリリーと本当の番になる。だがそれはできないから、きっと自分の命を取られるよりもお前にとってはきつい方を選んだんだ。」
キュウッ……リリーの眉根が苦しそうに寄る。
「リリーの目的は分かった…」
アーキンは優しくリリーの頬を撫でながらゆっくりと反対の頬に口付ける。
「お前の為なら喜んで死ぬのに…邪魔だったなら戦地の前線にでも送ってくれ?それとも俺に死ねと言えばいい。どうして自分だけで重荷を負おうとするんだ?」
「怒っていいんだぞ、アーキン?私は勝手にお前の命を掛けているんだから。」
「だからいいって…お前に俺の命をやるよ…そうだよな、一度でも番えるのなら死んでもいいな…」
どこか夢心地でアーキンはこんな事まで言ってくるのだ。だから尚更アーキンとは番わない………
「わざとそんな事をしてみろ?私も後を追うからな…!」
リリーだとて分かっているのだ。これだけ惹かれあって居るのだからもう離れる事など不可能だと。1人に不幸が起きて儚くなってしまったとしたらもう生きる希望なんて持てないだろう。
「それは困った。俺はリリーに後を追わせたくはない…それに、リリー抑制剤が効かないんだろう?誰かがまたリリーに触れるかもしれないと思ったら…そんなリリーを1人になんかさせたら俺は死んでも死にきれない…」
冗談の様にそう呟いて本格的にまたアーキンはリリーに覆い被さってくる…
リリーはただ全身に広がっていくアーキンから受ける甘い刺激を身体一杯に受け止めていった…
「そろそろ用意するか?」
数日間この厩舎管理小屋で目一杯過ごしてしまった。何しろヤリスが用意してくれた食料は十分だったし、湯が入っているピッチャーには魔法の処置がしてあっていつでも適温の湯が欲しいだけ出てくるのだ。最早ここから出る必要がない程アーキンにとっては至れり尽くせりの状態で過ごしていた。
対魔法第2騎士団は最初のあの日の午後に確かに厩舎から出立して行った。管理小屋にリリーの保護魔法がかけられていると言ってもガヤガヤと外から聞こえる仲間達の声にはなんとも落ち着かない気分を味合わせてもらったものだ。皆が出立後アーキンはリリーと濃密な時間を過ごしながら時折ガランとしてしまった厩舎に行って愛馬の世話をしまたリリーの元に帰ってくるという生活をしていた。この時に姿は見せなかったがリリーもヤリスから何やら報告を受けていたらしい。
「あぁ、潮時だな…」
お互いに体を清めあって、ヤリスが用意してくれていた衣類を身につける。リリーには新しいフード付きのマントまで用意されていた。
騎士団総司令官リーシュレイト・リヨール・ゼス。細身の身体に騎士団の真新しい司令官の制服を身につけて凛と立つ。それが一騎士アーキン・テグリスの番である。戦場に出れば上司と部下、日常であっても王族と他国の平民だ。身分の差は天と地ほどで普段顔を合わせても気やすく話などして良いはずもない関係…
不思議なものだ…こんなに生きる場所と身分が違うのに、引き合わされれば一時も離れ難い程に互いを求め合うのだから…
「用意は出来たのか?後1日で合流するぞ!」
小さな小瓶に入った薬液をリリーはグッと飲み干すと既に上官の顔となっていた。
「リリー、馬の準備が出来ております。」
いつの間にかノルーがリリーの愛馬と自分の愛馬を対魔法第2騎士団厩舎前に引いてきていた。
「お疲れ様です、リリー、アーキン殿。いい顔になりましたねぇ。」
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