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82.ヤキモチ 2 *

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「罰掃除だと言うのに精が出るな?」

 その声が聞こえた瞬間、アーキンは抱え上げていた飼い葉を見事に全て床に落としてしまった。

「……リリー?」

「あーあ…折角の愛馬の食事が汚れるぞ?」

 直接声を聞いたのはいつぶりで、顔を見るのは……?そんなに間は空いてはいないのに酷く、懐かしい…
 考えるよりも先にアーキンは全速力でリリーの元に駆け寄って力一杯小さなその身体を抱きしめてた。

「う……く、るし…」

 αの力一杯である…リリーでなければ気を失っていたかもしれない。

「リリー!リリー…」

「うぇ…力を抜け!馬鹿力!」

「あ、悪い……」

 勢い余って力加減などは頭から飛んでいたアーキンは急いでリリーを抱きしめた腕の力を緩めるとフードの下の顔を覗き込んでくる。

「大丈夫か?」

 酷く不安気なアーキンの表情だ。初めて組み敷かれた時だってこんな顔をされ無かった……

「くっ…飼い葉の臭いが凄いな…藁の中にでも飛び込んだのか?」

 アーキンの髪やら服には先程まで抱え上げていた細かい飼い葉が至る所にばら撒かれた様にくっついている。飼い葉の乾いた草の匂いとアーキンの香り…これ以上リリーが安心する香りなんてないだろう。リリーは思い切り吸い込んでホッと息を吐く。

「いい匂いがする。」

 アーキンの香りを一嗅ぎする度にリリーは自分の体温が上がるのがわかった。

「俺は嫌だな…リリーに奴の匂いがついてる…!」

 奴、先程リリーに遠慮もなく触っていたあいつだ…!
 
 やっと自分のものになったと言うのにまだ本当の番になる前から他の奴に割り込まれてなるものか!アーキンの瞳に仄暗い炎がゆらゆらと揺れる。

「そうだ、嫌だった…だから、アーキンの匂いで消して…」

 自分から、まだ発情もしてないのに強請るなんて…今までのリリーからでは考えられない。

 アーキンは何も言わずそのままリリーのフードをむしり取る様に引き下げると頭を押さえて深く口付けた。あの時以来、近くで顔も見る事ができなかったから格段に甘く感じる…リリーの身体も火がついた様に熱い……

「ん……ぅ…っ…」
 
 息継ぎさえ忘れてしまう程夢中になりながら、リリーはやっとの思いで対魔法第2騎士団厩舎一棟に誰も入ってこれない様に保護魔法をかけたのだった。
 
 それからはもう抵抗などできはしない。リリーはアーキンに抱き上げられたまま厩舎奥の飼い葉の山まで運ばれる。

 熱くなったリリーの身体は何処も敏感で飼い葉の中に下すとチクチクとする飼い葉の刺激でも甘い痺れが走ってしまうのを止められそうも無かった。

「こんな場所で悪いが…リリーが欲しい……」

 熱く掠れてリリーに触れる事に許しを乞う番の言葉に誰が否と言えるだろう…リリーだって発情しているが如くに身体が燃える様なのに…

「んんっ……」

 答えたくてもアーキンの手が肌の上を掠めるだけで声が漏れる。アーキンはフード付きの外套をリリーの下に器用に敷いて、焦って破かない様に細心の注意を払いながら一枚ずつ服を脱がして行った。
 リリーの白い肌が熱を持ってほんのりと朱に染まっている。上がって行く体温全てがまるでリリーのフェロモンを撒き散らしている様に身体の何処もかしこも芳しい…

「リリー…」

 愛しい者の名前を呼んで、呼吸を整えなければ思うがままに欲をぶつけてリリーに乱暴してしまいそうだった。今だってどれだけ自分の昂りをリリーの中に埋め込んでしまいたいか、その衝動で頭が一杯になっていると言うのに…

「……噛みたい…」

 リリーの首筋に齧り付く様に唇を這わせ濃厚なフェロモンを嗅ぎながらアーキンは無意識にそう呟く。なのにリリーの首には革製のガードが鈍い艶を放ちながらアーキンの行手を阻んでいる。

「なんで…?」

「あっん…!」

 イラついた様にアーキンはガードの上からリリーの首に齧り付く。肌を這う手は少し強めに胸の突起を擦り、潰していく。

「そ、れは…っ…だ…め…」

「なぜだ…?リリーは、俺に身を任せてくれただろう?」

 アーキンの瞳が燃える炎の様に赤く染まる。必死にリリーの唇を求めながらアーキンは性急にリリーの昂りを手に包み込む。

「あん…っ…!」

 背をしならせたリリーの胸の突起を吸いながら少し歯を立てて、リリーを包んでいる手の動きを早めていく。

「あっ!…ぁっ…やぁ!」

 この間と比べてアーキンの性急な愛撫にリリーは声を抑えるどころか、既に後ろは愛液が滴って伝い落ちてくるのが分かるほどだった。

「ほら…リリーもだ…俺が欲しい…?」

 決して弱くはない騎士がこんなことを聞いてくる。赤い瞳は爛々と獲物に食いついて離そうとしない肉食獣の様なのに、声は自信が無さそうに震えている。今にも全て食い尽くそうとしているのに、最後には優しい許可を求めてくる。

「アー…キン…?」

 息が上がって今にも弾けてしまいそうなリリーの瞳にそれは酷く獰猛で冷酷にも、逆に今にも泣きそうな不安な子供の様にも見えて仕方が無い…

 馬鹿だな……本当に…お前は、馬鹿だ…

 本格的に熱が上がってきたリリーは震える両腕をゆっくり上げてしっかりと愛しい番を力一杯抱きしめた…








  






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