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72.初めての発情 1
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身体が熱い……
身体の芯から熱が沸き上がって来るみたいに14歳であったリリーの身体中を熱が徐々に犯していく…
「リリー!!」
まだあどけない表情の残る当時18歳のノルーがリリーの為にリリーの好きな茶葉で茶を入れている時だった。突然、身体を抱き締めながらリリーはその場で蹲ったのだ。
火照る体表に上がる息…ノルーがどうしたものかとリリーの肩に手を置けば、リリーからはビクッと過剰な反応が返ってくる。
「どうしたのです?リリー?」
ここは王城で今日は月に一度の王城詣の日だ。国王陛下から申し付けられた日に陛下への謁見をするためにリリー達はここにきていた。ただでさえ慣れない王城でリリーにとってはいい思い出はない所。周りにも親身になってくれる者は少ない為に少しでもリラックスしてもらおうとノルーは事前にお茶を淹れるようにしていた。
もしや、茶葉に何か?
最悪の事態がノルーの頭を掠める。側妃に上げられもしなかったΩの愛妾が産んだΩの子供がリリーだった。リリーの母ミライエは王妃に酷く嫌われていた為にリリーには王位継承権もない。だから何の力もないただの貴重なΩの子供だと言うだけのリリーにまさかそこまで……?
毒物………?
ノルーの全身を緊張が走る。
「や……さわ、るな………」
どこか苦しいのか?痛むのか?見たところ吐血はしていないし顔色も悪くは無い。しかしノルーの中では最悪の事態しか浮かんでこない。
「リリー!どこです?どこが痛みます?」
下を向いてなお蹲るリリーの顔を覗き込みながらノルーはリリーの背をさする。
「い…や、だって……ノル…さわる、なっ」
何度聞いてもやはり苦しそうだ。何が嫌なのかもノルーはよく分からないでいる。
「身体が熱い?リリー!待っていて下さい!直ぐに医官を呼んで参ります!」
どんどんリリーの身体は熱を保ち、リリーはただ苦しそうに呻くばかりだ。最悪の事を考えているノルーにとってただ事では無かった。リリーに断りを入れて直ぐに部屋から駆け出す。残念な事にここにはリリー付きの侍女はいない。人を呼びたくても呼び鈴を鳴らした後誰か来るまで待っていなくてはいけないのだ。なのでそれを待っていられないとばかりに呼び鈴を鳴らした後に自ら部屋の外で侍女が来るのを待ち構え、来室しようとして来た侍女には直ぐに医官を呼ぶ様に言い捨ててノルーはまたリリーの所に戻っていく。
「リリーしっかり!しっかりして下さい!今、医官が来ますから!!」
「あっ…ん…耳、側で、話すな…!」
どこを触れてもリリーは苦しそうな声を出す。涙まで流しているなんて余程のことだろう。ノルーがリリーの側でオロオロとしているうちに、医官を呼ぶように言い付けられた侍女と共に2人の医官が走り込む様にリリーの部屋へと入ってくる。
「医官殿!毒かもしれません!お茶を召し上がった後に、リリーが!!」
医官の姿を見たノルーは安堵のためか涙が出そうになった。大切な主人なのだ。自分が生涯尽くして行こうと思えるほど、親友とも、弟とも、大切な家族にも思えるリリーだ。助けてほしい…!
まだ若いノルーはただ純粋にそれしか考えていなかった…
「失礼致しますよリーシュレイト様。こちらをご覧になれますか?」
蹲るリリーに2人の医官はアレコレと声を掛けながら現状を把握していく。
「や……もぅ……っ……」
触られる度にフルフルと身体が震えてくるリリーにそれを見ているだけでも辛そうなノルー。
「これは…」
「ふむ、間違えありませんな。」
「医官殿!何が分かったのです!毒ですか?リリーは?リリーはどうなります?」
「落ち着かれませ。ダーウィン家の若様。おめでとうございます。これは毒ではありませんよ。Ωの方ならば当然迎えるべきものです。」
「え……?こんなに苦しんでいるのに、毒じゃないのですか!?」
「ええ、違いますね。Ω特有の発情期ですよ。」
緊張していた医官達がホッと息を吐いて柔らかな笑みを見せてくれた。
「発、情期…?」
「お聞きになった事はございますでしょう?」
「は……い?」
そういえば身体の仕組みを学ぶ際には必ずや出る内容ではあった。
「で、はでは!リリーは死んだりなんてしませんよね?」
「ほほほ、仲がよろしいようで何よりですな。リーシュレイト様は死にはしませんよ。けれどもこのままでは辛いものです。」
「そうですね。初めてでしょうから、軽い物で試しましょうか?」
「そうしましょう。」
穏やかな医官達の見立てでリリーに投薬が始まる。Ωであるから発情期を抑える為には番となるべくαを見つけるのがいいのだが、いかんせんリリーは王族の血筋を引いている者だ。誰でもいいと言うわけにはいかず、番ともなれば相手の選定に時間を要する事だろう。
それを手っ取り早く解消する為にΩ専用の抑制剤があるのだ。腕の良い研究員が開発している新薬も揃えてあって如何様にも対処出来るはずであった。はずであったのに………
「医官殿!医官殿!!」
本日何度目の医官室への訪問だろうか?言われた通り時間を見計らってリリーに指定量の薬を飲ませて来たのに、体温は一向に下がらないし、呼吸も荒く酷く苦しそうなのだ。目に涙を溜めて耐えている姿にノルーは我慢ができずに医官の元に走り込んでいる。
「おかしいですな……?」
真夜中になっても薬の効き目が現れないリリーは一睡もできないでいた。
身体の芯から熱が沸き上がって来るみたいに14歳であったリリーの身体中を熱が徐々に犯していく…
「リリー!!」
まだあどけない表情の残る当時18歳のノルーがリリーの為にリリーの好きな茶葉で茶を入れている時だった。突然、身体を抱き締めながらリリーはその場で蹲ったのだ。
火照る体表に上がる息…ノルーがどうしたものかとリリーの肩に手を置けば、リリーからはビクッと過剰な反応が返ってくる。
「どうしたのです?リリー?」
ここは王城で今日は月に一度の王城詣の日だ。国王陛下から申し付けられた日に陛下への謁見をするためにリリー達はここにきていた。ただでさえ慣れない王城でリリーにとってはいい思い出はない所。周りにも親身になってくれる者は少ない為に少しでもリラックスしてもらおうとノルーは事前にお茶を淹れるようにしていた。
もしや、茶葉に何か?
最悪の事態がノルーの頭を掠める。側妃に上げられもしなかったΩの愛妾が産んだΩの子供がリリーだった。リリーの母ミライエは王妃に酷く嫌われていた為にリリーには王位継承権もない。だから何の力もないただの貴重なΩの子供だと言うだけのリリーにまさかそこまで……?
毒物………?
ノルーの全身を緊張が走る。
「や……さわ、るな………」
どこか苦しいのか?痛むのか?見たところ吐血はしていないし顔色も悪くは無い。しかしノルーの中では最悪の事態しか浮かんでこない。
「リリー!どこです?どこが痛みます?」
下を向いてなお蹲るリリーの顔を覗き込みながらノルーはリリーの背をさする。
「い…や、だって……ノル…さわる、なっ」
何度聞いてもやはり苦しそうだ。何が嫌なのかもノルーはよく分からないでいる。
「身体が熱い?リリー!待っていて下さい!直ぐに医官を呼んで参ります!」
どんどんリリーの身体は熱を保ち、リリーはただ苦しそうに呻くばかりだ。最悪の事を考えているノルーにとってただ事では無かった。リリーに断りを入れて直ぐに部屋から駆け出す。残念な事にここにはリリー付きの侍女はいない。人を呼びたくても呼び鈴を鳴らした後誰か来るまで待っていなくてはいけないのだ。なのでそれを待っていられないとばかりに呼び鈴を鳴らした後に自ら部屋の外で侍女が来るのを待ち構え、来室しようとして来た侍女には直ぐに医官を呼ぶ様に言い捨ててノルーはまたリリーの所に戻っていく。
「リリーしっかり!しっかりして下さい!今、医官が来ますから!!」
「あっ…ん…耳、側で、話すな…!」
どこを触れてもリリーは苦しそうな声を出す。涙まで流しているなんて余程のことだろう。ノルーがリリーの側でオロオロとしているうちに、医官を呼ぶように言い付けられた侍女と共に2人の医官が走り込む様にリリーの部屋へと入ってくる。
「医官殿!毒かもしれません!お茶を召し上がった後に、リリーが!!」
医官の姿を見たノルーは安堵のためか涙が出そうになった。大切な主人なのだ。自分が生涯尽くして行こうと思えるほど、親友とも、弟とも、大切な家族にも思えるリリーだ。助けてほしい…!
まだ若いノルーはただ純粋にそれしか考えていなかった…
「失礼致しますよリーシュレイト様。こちらをご覧になれますか?」
蹲るリリーに2人の医官はアレコレと声を掛けながら現状を把握していく。
「や……もぅ……っ……」
触られる度にフルフルと身体が震えてくるリリーにそれを見ているだけでも辛そうなノルー。
「これは…」
「ふむ、間違えありませんな。」
「医官殿!何が分かったのです!毒ですか?リリーは?リリーはどうなります?」
「落ち着かれませ。ダーウィン家の若様。おめでとうございます。これは毒ではありませんよ。Ωの方ならば当然迎えるべきものです。」
「え……?こんなに苦しんでいるのに、毒じゃないのですか!?」
「ええ、違いますね。Ω特有の発情期ですよ。」
緊張していた医官達がホッと息を吐いて柔らかな笑みを見せてくれた。
「発、情期…?」
「お聞きになった事はございますでしょう?」
「は……い?」
そういえば身体の仕組みを学ぶ際には必ずや出る内容ではあった。
「で、はでは!リリーは死んだりなんてしませんよね?」
「ほほほ、仲がよろしいようで何よりですな。リーシュレイト様は死にはしませんよ。けれどもこのままでは辛いものです。」
「そうですね。初めてでしょうから、軽い物で試しましょうか?」
「そうしましょう。」
穏やかな医官達の見立てでリリーに投薬が始まる。Ωであるから発情期を抑える為には番となるべくαを見つけるのがいいのだが、いかんせんリリーは王族の血筋を引いている者だ。誰でもいいと言うわけにはいかず、番ともなれば相手の選定に時間を要する事だろう。
それを手っ取り早く解消する為にΩ専用の抑制剤があるのだ。腕の良い研究員が開発している新薬も揃えてあって如何様にも対処出来るはずであった。はずであったのに………
「医官殿!医官殿!!」
本日何度目の医官室への訪問だろうか?言われた通り時間を見計らってリリーに指定量の薬を飲ませて来たのに、体温は一向に下がらないし、呼吸も荒く酷く苦しそうなのだ。目に涙を溜めて耐えている姿にノルーは我慢ができずに医官の元に走り込んでいる。
「おかしいですな……?」
真夜中になっても薬の効き目が現れないリリーは一睡もできないでいた。
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