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50.発現 2
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「何と言うことを、してくれたのだ……!」
ゼス国王城の本城は離宮とは比べ物にならない程の広さに豪華さ、そして仕える人の多さ。王族であるにもかかわらずリーシュレイトは目を白黒させながら初めて見る父が住う城の中を、ワクワクキョロキョロと見物し胸を高鳴らせながら謁見の間へと運ばれて行く。リーシュレイトを抱え上げている者を先頭に長蛇の列を組んだ騎士やら使用人達が王の間へと進むものだから、その光景は異常な事態と写り城内を大いに慌てふためかせた事だろう。一時は何某かの反乱かと思われる程王の間に向かう人々は一致団結している様子であったのだ。
王の間を護る騎士もまたこの異様な一団に自ら進んで扉を開いた様にも見えて、甚だ不可解なこの事象に周りの者達は直ぐに行動に移すことができないでいた。
朝の謁見を行なっていた王の間はこの一団の入室に騒然となる。しかしそう間をおかず近衞騎士達によって王族であるリーシュレイトが取り押さえられ、この事態に幕を下ろすこととなった。
王の前に引き出されたリーシュレイトは理由もわからぬまま厳しい騎士達に両手を拘束されて王の前に引き出されることとなった。リーシュレイトの前には初めて正面から見る父の姿がある。けれども心勇み喜んで見上げた父の姿はリーシュレイトが望む優しく強くて頼もしい、そして母の様に愛情に溢れた眼差しを持った父では無かった。父は綺麗な澄んだ琥珀色の瞳を冷たくリーシュレイトに向けながら上記の台詞を言い放ったのである。
そこには産まれてからまともに顔も合わせたこともない息子を愛しむでも無く、父王の言葉からは忌々しげな声色さえも窺えた。
リーシュレイトは信じて疑わなかったのだ。きっと父上は母上の様によく来たと笑ってくれると。もし言葉は交わせないとしてもいつも優しく見つめてくれる母上の様にその瞳は慈愛に満ちているものだと……
呆然とリーシュレイトは父を見上げる。明らかにここにいてはいけない雰囲気を幼いリーシュレイトは肌で感じてしまった。
「陛下!!どうなっているのです!?」
「まさか!これ程とは!?」
「早く!抑制剤を持ってこんか!!」
両手を拘束されたまま、ぼうっと父を見つめるリーシュレイトの耳に周囲の者達の喧騒が徐々に入ってきた。
「Ωフェロモンではありませんか!?殿下はまだ6歳のはず!」
「馬鹿な!発情期に入るには早すぎますぞ!」
「そんな事は分かっている、だからどうなっているのかと陛下にお聞きしているのだ!」
周囲を見渡せばリーシュレイトを抑えている騎士の他ここまで一緒に来た者達は次々と引き倒され何か薬物を与えられている状態だった。一人二人ではなく何十人もの者達が王の謁見の間で倒れ伏し立派な衣類を身につけたきっと身分が高いだろう者達は動ける侍従や騎士達に何かを必死に言いつけている。
「抑制剤はまだか!?」
バタバタと騎士やら薬師やらが入れ替わり謁見の間を行き来する。そんな中でも父王はリーシュレイトに声をかけなかった。
「父上……?」
何が起こっているのか一番分からないのは拘束されているリーシュレイトだろう。
希望に輝いていた幼い綺麗な顔は今は不安に歪み蒼白になりつつある。
「父上……!」
「王子殿下…!お静かに。お動きなさいますな!」
何かしら父から反応が欲しかったのか又は恐怖を煽る様なこの状況から守って欲しかったのかリーシュレイト自身も訳もわからず父を呼んでいるのに、拘束している騎士はリーシュレイトを自由にはしてくれそうにもない。それどころか眉間に眉根を寄せて厳しい表情を崩そうともせずに王の間で起きている事を見渡している。
「皆、静かに!重傷者はいるか?」
「いえ…!まだ全員とは言えませんが…この者達は、王子殿下のフェロモンに当てられた様子であると……」
倒れた数名を急いで見つつ状況を確認していた医官の一人が恐る恐る声を上げる。
「その様な事は分かっておるだろう?これだけのフェロモンが漂っていると言うのに!」
全体の指揮を取っていたのだろうと思われる初老の高官がいらつきを隠そうともせずに声を荒げた。
「申し訳ありません。何分、この様な事態は初めてのことでして…」
困惑しながらも医官は手際良く抑制剤を次から次へと投与して行く。
「ほう?初めてのことですと?」
騒然ときている室内で、どっしりと構えて状況を観察している高官が一人自分の顎髭に手を当てて医官を睨む。
「は、左用でございます!」
「偽りはないな?」
「それは勿論です!」
「では、陛下。この様な事態を起こすのは今回が初めてと言うことで宜しいですかな?」
医官の答えに頷きつつゼス国王の方へと視線を移した高官は表情の読めぬ視線を遠慮もなく国王へと投げつけている。
「…その様だな…」
「陛下。では王子殿下をどの様に処されます?」
「……まだ己がわからないのだろう。」
「それで、この結果でございますか?」
「ワース公爵…」
「己が分からぬのならば分からせればよろしいのです。殿下の力の制御ができるまでどこぞで幽閉でも?」
「ワース公爵!!国王と幼き殿下を前にして何たる事を!」
この発言に対抗して来たのはまだ年若い女性とも見紛うほどの美貌を持った駆け出しだろうと思われる医官であった。
ゼス国王城の本城は離宮とは比べ物にならない程の広さに豪華さ、そして仕える人の多さ。王族であるにもかかわらずリーシュレイトは目を白黒させながら初めて見る父が住う城の中を、ワクワクキョロキョロと見物し胸を高鳴らせながら謁見の間へと運ばれて行く。リーシュレイトを抱え上げている者を先頭に長蛇の列を組んだ騎士やら使用人達が王の間へと進むものだから、その光景は異常な事態と写り城内を大いに慌てふためかせた事だろう。一時は何某かの反乱かと思われる程王の間に向かう人々は一致団結している様子であったのだ。
王の間を護る騎士もまたこの異様な一団に自ら進んで扉を開いた様にも見えて、甚だ不可解なこの事象に周りの者達は直ぐに行動に移すことができないでいた。
朝の謁見を行なっていた王の間はこの一団の入室に騒然となる。しかしそう間をおかず近衞騎士達によって王族であるリーシュレイトが取り押さえられ、この事態に幕を下ろすこととなった。
王の前に引き出されたリーシュレイトは理由もわからぬまま厳しい騎士達に両手を拘束されて王の前に引き出されることとなった。リーシュレイトの前には初めて正面から見る父の姿がある。けれども心勇み喜んで見上げた父の姿はリーシュレイトが望む優しく強くて頼もしい、そして母の様に愛情に溢れた眼差しを持った父では無かった。父は綺麗な澄んだ琥珀色の瞳を冷たくリーシュレイトに向けながら上記の台詞を言い放ったのである。
そこには産まれてからまともに顔も合わせたこともない息子を愛しむでも無く、父王の言葉からは忌々しげな声色さえも窺えた。
リーシュレイトは信じて疑わなかったのだ。きっと父上は母上の様によく来たと笑ってくれると。もし言葉は交わせないとしてもいつも優しく見つめてくれる母上の様にその瞳は慈愛に満ちているものだと……
呆然とリーシュレイトは父を見上げる。明らかにここにいてはいけない雰囲気を幼いリーシュレイトは肌で感じてしまった。
「陛下!!どうなっているのです!?」
「まさか!これ程とは!?」
「早く!抑制剤を持ってこんか!!」
両手を拘束されたまま、ぼうっと父を見つめるリーシュレイトの耳に周囲の者達の喧騒が徐々に入ってきた。
「Ωフェロモンではありませんか!?殿下はまだ6歳のはず!」
「馬鹿な!発情期に入るには早すぎますぞ!」
「そんな事は分かっている、だからどうなっているのかと陛下にお聞きしているのだ!」
周囲を見渡せばリーシュレイトを抑えている騎士の他ここまで一緒に来た者達は次々と引き倒され何か薬物を与えられている状態だった。一人二人ではなく何十人もの者達が王の謁見の間で倒れ伏し立派な衣類を身につけたきっと身分が高いだろう者達は動ける侍従や騎士達に何かを必死に言いつけている。
「抑制剤はまだか!?」
バタバタと騎士やら薬師やらが入れ替わり謁見の間を行き来する。そんな中でも父王はリーシュレイトに声をかけなかった。
「父上……?」
何が起こっているのか一番分からないのは拘束されているリーシュレイトだろう。
希望に輝いていた幼い綺麗な顔は今は不安に歪み蒼白になりつつある。
「父上……!」
「王子殿下…!お静かに。お動きなさいますな!」
何かしら父から反応が欲しかったのか又は恐怖を煽る様なこの状況から守って欲しかったのかリーシュレイト自身も訳もわからず父を呼んでいるのに、拘束している騎士はリーシュレイトを自由にはしてくれそうにもない。それどころか眉間に眉根を寄せて厳しい表情を崩そうともせずに王の間で起きている事を見渡している。
「皆、静かに!重傷者はいるか?」
「いえ…!まだ全員とは言えませんが…この者達は、王子殿下のフェロモンに当てられた様子であると……」
倒れた数名を急いで見つつ状況を確認していた医官の一人が恐る恐る声を上げる。
「その様な事は分かっておるだろう?これだけのフェロモンが漂っていると言うのに!」
全体の指揮を取っていたのだろうと思われる初老の高官がいらつきを隠そうともせずに声を荒げた。
「申し訳ありません。何分、この様な事態は初めてのことでして…」
困惑しながらも医官は手際良く抑制剤を次から次へと投与して行く。
「ほう?初めてのことですと?」
騒然ときている室内で、どっしりと構えて状況を観察している高官が一人自分の顎髭に手を当てて医官を睨む。
「は、左用でございます!」
「偽りはないな?」
「それは勿論です!」
「では、陛下。この様な事態を起こすのは今回が初めてと言うことで宜しいですかな?」
医官の答えに頷きつつゼス国王の方へと視線を移した高官は表情の読めぬ視線を遠慮もなく国王へと投げつけている。
「…その様だな…」
「陛下。では王子殿下をどの様に処されます?」
「……まだ己がわからないのだろう。」
「それで、この結果でございますか?」
「ワース公爵…」
「己が分からぬのならば分からせればよろしいのです。殿下の力の制御ができるまでどこぞで幽閉でも?」
「ワース公爵!!国王と幼き殿下を前にして何たる事を!」
この発言に対抗して来たのはまだ年若い女性とも見紛うほどの美貌を持った駆け出しだろうと思われる医官であった。
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