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29.潜入捜査10
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「Ωを、ですか?」
「そうだ。ここにいると聞いている。」
「そりゃあまぁ、Ω在籍の娼館ですからねぇ?」
受付では人の良さそうな中年の男が来所する客の応対をしている。目の前の客はラークの館にはいかにも身分を隠したお忍びで遊びにきました、と言う風情を醸し出しておりそしてまた頓珍漢なことを聞いてくる。ここはΩがいる娼館として売り出している娼館なのだ。
「知っている。」
「知っていて、ですか?」
目の前の男は珍しい灰色の長髪に深い群青色をした瞳を持つ美丈夫だ。
「う~ん、お客様位の外見ならばどの子も喜んで相手しますよ?うちの子達は皆んな粒揃いですからね?」
「Ωが良いんだ。」
「あぁ、お客様もαの方ですね?」
「あぁ、金はある…」
ドンッと鈍い音で男はテーブルの上に重そうな皮袋を置いた。
「へぇ…こりゃまた………」
受付の男は目をパチパチさせて驚きを表して笑顔が引き攣っている。
「待ってくださいね?只今!と言いたい所ですがね?おすすめの子は接客中なんですよ。どうです?他にも可愛い子がいるんで先にそちらで遊んでは?」
「Ωでなければ意味はないのだ。店主はいるか?」
「店主のお知り合いで?」
「あれ?誰かと思えばやはりトンプソン卿ではありませんか!?やぁ!こんな所で会うなんて奇遇も奇遇ですね?」
「おや、旦那様今日はもうお帰りで?」
ペコペコと頭を下げながら受付係は片腕に娼婦の肩を抱いたシジュール・アルトに声をかけた。彼はここ最近頻繁に通ってくれている太客である。
「いや、この子を連れて街に出ようと…それより君!」
「はい?」
シジュールは受付係を手招きで招く。
「なんで御座いましょ?」
「なんでトンプソン卿を立ったままにさせておくのさ?あの方は王都でもちょっとした有名な方だよ?ここまでその名声は伝ってきていないかも知れないけど、繋がりを持っていて損はない方だ。大事にしておいた方がいい。」
「そ、そうなので御座いますか?何分本日初見のお客様でありまして、その、いきなりでございましたから…」
「あぁ!あっちの方かい?ほら、それを知っているってのがもう…分かるだろう?上級階級の方々と繋がりがあるんだよ?」
「ふぇ!そうでございましたか?それは申し訳ない対応をいたしまして……」
「いや、君僕に謝ったってしょうがないだろう?どんな対応がいいのか店主に確認しては?」
「は、はい左様ですね。では、早速……」
とは言ったものの店主は今Ωの元に通っているお客について地下に降りている。
「裏にオーナーが………」
こそっとやりとりを見ていた従業員がオーナーの来所を告げてくれて助かった……
「ちょっっっとお待ちくださいませね?お客様!今直ぐにオーナーに確認を取って参りますので!!」
「お待たせいたしました!」
オーナーと言われた男は黒髪、灰色の瞳をした男だ。裏での対応に雲泥の差が出る程にこちらには愛想が良い。ニコニコと笑いながら手はごまを擦っている。
「Ωをお求めで?」
「そうだ。先程からそう話しているのだが…」
チラリ、と受付の男を流し見る。
「申し訳ありません。うちは皆んなΩなんですよ?どの子でもお好きな子はいませんか?」
「……馬鹿にしてもらっては困る。ここを通る誰からもΩの香りはしなかった。」
「ほ!なる程…お分かりになるのでございますね?それで出会いを求めたいと言うことでしょうか?」
αはΩを求めるものだ。ただの快楽のためにここに訪れる者もいれば本当の番を求めて訪れる者も珍しくはないのだ。
「そうだと言ったら?」
「えぇえぇそうでしょうとも!αの方の渇望はよくわかります。では、今回は特別ですよ?本当でしたらちゃんとした紹介を挟んで頂かなくてはいけない事になっていますからね?」
「それは不作法をした…そこはどんな所だろうか?」
「何、王都や大都市にはなんでも情報通な者がいますでしょう?そう言う者を使えばいいんですよ。」
「それだけでいいのか?紹介状などは?」
「その中にいる方と共に来る、これが紹介状の代わりになりますからね?」
「了解した。では次からはそうしよう。」
「えぇ!是非お願いしますね?で、Ωの子でしたね?」
「あぁ、そうだ。早く会いたいのだが?」
「えぇえぇ分かりますとも!しかし残念な事に只今接客中でございまして…」
「他の者とか!?」
ピキッ……しないはずの音が聞こえた気がした。受付の男が今にも切られそうだと言っていた謎の迫力がトンプソン卿と言われた目の前の男からヒシヒシと伝わってくる。αは自分の者となるべきΩを他人と共有する事を酷く嫌うのだ。
「まぁまぁ…仕方ありませんお客様…ここはその様な場所でありますから…剣を納めて頂けると有難いのですがね?」
「うぅ~む…………」
トンプソン卿はその提案は飲み込めん、と言う雰囲気満載の渋い顔をする。
「したかありません。前のお客様もその、ちゃんとお代を払ってくださってますから…」
こればかりはここで商売をする者達ならば誰でも皆んな一度以上は言われる事であった。
「そうだ。ここにいると聞いている。」
「そりゃあまぁ、Ω在籍の娼館ですからねぇ?」
受付では人の良さそうな中年の男が来所する客の応対をしている。目の前の客はラークの館にはいかにも身分を隠したお忍びで遊びにきました、と言う風情を醸し出しておりそしてまた頓珍漢なことを聞いてくる。ここはΩがいる娼館として売り出している娼館なのだ。
「知っている。」
「知っていて、ですか?」
目の前の男は珍しい灰色の長髪に深い群青色をした瞳を持つ美丈夫だ。
「う~ん、お客様位の外見ならばどの子も喜んで相手しますよ?うちの子達は皆んな粒揃いですからね?」
「Ωが良いんだ。」
「あぁ、お客様もαの方ですね?」
「あぁ、金はある…」
ドンッと鈍い音で男はテーブルの上に重そうな皮袋を置いた。
「へぇ…こりゃまた………」
受付の男は目をパチパチさせて驚きを表して笑顔が引き攣っている。
「待ってくださいね?只今!と言いたい所ですがね?おすすめの子は接客中なんですよ。どうです?他にも可愛い子がいるんで先にそちらで遊んでは?」
「Ωでなければ意味はないのだ。店主はいるか?」
「店主のお知り合いで?」
「あれ?誰かと思えばやはりトンプソン卿ではありませんか!?やぁ!こんな所で会うなんて奇遇も奇遇ですね?」
「おや、旦那様今日はもうお帰りで?」
ペコペコと頭を下げながら受付係は片腕に娼婦の肩を抱いたシジュール・アルトに声をかけた。彼はここ最近頻繁に通ってくれている太客である。
「いや、この子を連れて街に出ようと…それより君!」
「はい?」
シジュールは受付係を手招きで招く。
「なんで御座いましょ?」
「なんでトンプソン卿を立ったままにさせておくのさ?あの方は王都でもちょっとした有名な方だよ?ここまでその名声は伝ってきていないかも知れないけど、繋がりを持っていて損はない方だ。大事にしておいた方がいい。」
「そ、そうなので御座いますか?何分本日初見のお客様でありまして、その、いきなりでございましたから…」
「あぁ!あっちの方かい?ほら、それを知っているってのがもう…分かるだろう?上級階級の方々と繋がりがあるんだよ?」
「ふぇ!そうでございましたか?それは申し訳ない対応をいたしまして……」
「いや、君僕に謝ったってしょうがないだろう?どんな対応がいいのか店主に確認しては?」
「は、はい左様ですね。では、早速……」
とは言ったものの店主は今Ωの元に通っているお客について地下に降りている。
「裏にオーナーが………」
こそっとやりとりを見ていた従業員がオーナーの来所を告げてくれて助かった……
「ちょっっっとお待ちくださいませね?お客様!今直ぐにオーナーに確認を取って参りますので!!」
「お待たせいたしました!」
オーナーと言われた男は黒髪、灰色の瞳をした男だ。裏での対応に雲泥の差が出る程にこちらには愛想が良い。ニコニコと笑いながら手はごまを擦っている。
「Ωをお求めで?」
「そうだ。先程からそう話しているのだが…」
チラリ、と受付の男を流し見る。
「申し訳ありません。うちは皆んなΩなんですよ?どの子でもお好きな子はいませんか?」
「……馬鹿にしてもらっては困る。ここを通る誰からもΩの香りはしなかった。」
「ほ!なる程…お分かりになるのでございますね?それで出会いを求めたいと言うことでしょうか?」
αはΩを求めるものだ。ただの快楽のためにここに訪れる者もいれば本当の番を求めて訪れる者も珍しくはないのだ。
「そうだと言ったら?」
「えぇえぇそうでしょうとも!αの方の渇望はよくわかります。では、今回は特別ですよ?本当でしたらちゃんとした紹介を挟んで頂かなくてはいけない事になっていますからね?」
「それは不作法をした…そこはどんな所だろうか?」
「何、王都や大都市にはなんでも情報通な者がいますでしょう?そう言う者を使えばいいんですよ。」
「それだけでいいのか?紹介状などは?」
「その中にいる方と共に来る、これが紹介状の代わりになりますからね?」
「了解した。では次からはそうしよう。」
「えぇ!是非お願いしますね?で、Ωの子でしたね?」
「あぁ、そうだ。早く会いたいのだが?」
「えぇえぇ分かりますとも!しかし残念な事に只今接客中でございまして…」
「他の者とか!?」
ピキッ……しないはずの音が聞こえた気がした。受付の男が今にも切られそうだと言っていた謎の迫力がトンプソン卿と言われた目の前の男からヒシヒシと伝わってくる。αは自分の者となるべきΩを他人と共有する事を酷く嫌うのだ。
「まぁまぁ…仕方ありませんお客様…ここはその様な場所でありますから…剣を納めて頂けると有難いのですがね?」
「うぅ~む…………」
トンプソン卿はその提案は飲み込めん、と言う雰囲気満載の渋い顔をする。
「したかありません。前のお客様もその、ちゃんとお代を払ってくださってますから…」
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