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25.潜入捜査6 *

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 田舎町の簡易宿舎の様な一室に団長や騎士などの区別なく同じような部屋に泊まる。ここセロント領までくるのにほぼ野宿状態であった騎士達にとっては部屋のグレードなど気にならないものだ。屋根があってベッドがあって美味しい飯が食える。彼らの遠征中これらが揃っていれば最早何もいうことはないくらいだ。

「入りますよ?リリー?」

 そんな簡素な部屋の一室に当然リリーも宿泊している。先程ノルーに呼ばれたグレイルは声をかけてリリーの部屋へと入る。

「リリー?」

 普段のリリーの部屋ならばまだ明かりが付き書類などに目を通して仕事をしているはずである。今も今後の作戦の事でグレイルが呼ばれたのだと思っていたのだがどうやら今夜は違う様だった。
 グレイルは一歩中に入ると隊服を掴まれ有無を言わさず部屋の中へと引っ張り込まれたのだ。

「リ…」

 名前を最後まで言わせずグレイルは口を塞がれる事になった。

 噛み付く様なリリーのキス。切羽詰まった様子にグレイルは目を見張って驚きはしたものの、いつもの様に舌を絡めて答え始める。

「んっ……」

 最初の勢いだけはリリーが優勢…だが本気を出せばリリーはすぐにグレイルのペースに飲み込まれる…

「リリー?少し発情仕掛けてますね?」

 やっと口を離したリリーにグレイルは静かに問う。無言のリリーだが若干体温は上がり呼吸も少し乱れている。部屋が明るければその綺麗な頬も蒸気しているのが分かっただろう。そして隠しようも無いほどのリリーのフェロモンが漏れ出しているから…

「………」

「しかし、ここでは………」

 ここは簡素な宿屋である。リリーの発情を止めなければならないが安宿は何分壁も薄い…何かしていれば音が漏れてしまうだろう。

「私が…する……」

「リリー?」

 言うが早いか、リリーはグレイルの前に跪いて下衣を寛げ始めた。

「……我慢するのは私の方ですね……?」

 Ωの発情を収めるのに一番良い方法はαの番と交わる事で体液を貰う事だ。番がいないならば効果は薄くなるがαであれさえすれば抑える事もできる。

 リリーは寛げた下衣からグレイルの中心を探り出して躊躇せずに口に含んだ。

「……っ……」

 発情仕掛けのΩの口腔内は熱く絡みついてくる。リリーのフェロモンの香りに遮断していても引き摺られそうになる恐怖にグレイルは一瞬襲われる。こんな時グレイルは心から番を持っていて良かったと思わされるのだ。自分の半身、自分の命、我が全て……この遠征で寂しく一人寝をしているのかと思うと、いくら相手が年上の番と言えども待たせてしまうこちらの方が切なくなる。リリーに猛った己を愛撫されながらもリリーに溺れずに番に思いを馳せる事ができるのも番を持てた者の特権と言ってもいい。

「ふっ……ぅ………」

 グレイルの物が大きくなればリリーは苦しそうに眉根を寄せる。そんなリリーをそっと撫でながらグレイルは自分の番に想いを寄せる。なんとも矛盾した行為だがここでリリーを発情させるわけにはいかないのだ。
 この花街はΩが多いと謳われているところ。その為来ている客層はαが多いのだ。こんな中で抑制剤の効かないリリーが発情したら目も当てられないことになる。やるとしてもそれは最後の奥の手として取っておきたい。だから今はリリーの求めるままに部下であるグレイルは答えるのだ。欲しいと言われれば欲しい分だけ……

「…….っ!!」

 一瞬息を詰めて硬直した身体から精を放つ。

「ん……っ…」

 リリーはそれを全て飲み込んだ。

「はっ……落ち着きましたか…?」

 荒くなる息をどうにか整えてグレイルは乱れた髪をかき上げた。

「……少しはな………」

「珍しいですね?リリー……ここに貴方を誘惑するαが居ましたか?」

 ここ最近ずっとリリーは気を張っていた様に思う。自分で引き入れた新騎士の顔も見に行かずにただこの街に急いで移動して来たのだ。普段のリリーで有れば濃厚な関係を築こうとまではしないが自分が気にかけた騎士の動向ぐらいは確認するはずなのに……

「……ぬかせ…」

「新騎士の誰かならば……思い切って、消しましょうか…?」

 ピクッ……初めてリリーの表情が動いた。普段自分の要望をあまり口にしない方であるから周りにいる者達がリリーの感情を読み取るのには長けてくる。

「…殺すのは…許さない……」

 低いリリーの声…本気だ……

「分かっています。私だって…番を殺せと言われたら喜んで私が殺されるか一緒に死にますよ……」

 愛しい愛しい…愛しい番……どうして彼を見捨てるなんて言葉が自分からでで行こうとするのか…そんな事は到底無理なのに…

「けれど、貴方を発情させる訳にはいきませんからね?」

 処断できなくとも、共に番わせる訳にもいかない理由がある…お互いにとっては地獄の様な選択だ…

「分かってる…だからお前を呼んだんだ。もう一度付き合え……」

 薄暗い部屋で紫金色の瞳がゆらりと光りグレイルを見つめ上げる。リリーはグレイル自身を離さず、また口に含み始めた。

「仕方ないですね…明日に響かない程度でお願いします……」

 柔らかな艶やかな紫金色の髪をやさしく撫でながら、グレイルは愛する番を思い浮かべる………










      




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