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17.新米騎士1
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訓練場に最後まで立って残っていた見習い騎士達は総勢7名。何故か立膝をついていたマルスもそこに入っていた。
「皆さん揃いましたね?」
ハガイの隣にはリリーの侍従ノルーが控えていた。
「は、今回は以上7名ですな。」
いつも上から目線のハガイがノルーに敬語を使っているとは…その場に残された見習い達に緊張が走る。
「おめでとうございます。諸君はこれより対魔法騎士団に召し上げられます。私は対魔法騎士団総司令補佐のノルー・ダーウィンです。これからは諸君の同僚となりますのでお見知り置きを。」
「今から一週間以内にお前らは騎士団本部に移動となる!詳しい説明はそこで聞かされるが、この一週間は自由時間じゃあねぇぞ?荷物は後でもいいが本部での訓練が早々に始まる!気合い入れてけよ!!」
「「はっ!!」」
ボロボロの姿のままそれでも士気は上がるというものだ。なんと言っても目標だった騎士団に上がれるのだから。昇格した者達はこれから新米騎士としての訓練が始まる。見習い騎士とは比べ物にならないほどのものだという噂もある…
今日は、いなかった…リリーの侍従であるノルーが来ているのだからきっとリリーも居るだろうと踏んで辺りを探したのだが、それらしきフードを被った人物をこの日アーキンは見つけることが出来なかった。
新米騎士の朝は早い。何しろ早朝宿舎から出て行って城にある騎士団本部まで出向かなくてはならないからだ。普段であれば見習い騎士達は結界によって外に出ることも叶わないだろうに、新米騎士となるとフリーパスらしい。
「本日からここがお前達新米に与えられる訓練場である!」
王城に付き通された所は訓練場と言ってもここは王城別棟の室内の一室。だだっ広い応接間に家具がほとんど置いていないがらんとした様な部屋である。説明をしているのは対魔法騎士団第2騎士団副官タブロット・シャーレと名乗った。新米騎士7名はその場で座らされた。長身で細身だが何処となく威圧感のあるタブロットは姿勢を崩さず粛々と訓練の説明をしていく。
「訓練は3日間この部屋の中にて行う。3日間はここを出ること叶わずと心得よ。貴殿等の魔力操作訓練とでも思って励む様に!」
「魔力操作…?」
「何かの特性のか?」
魔力量に応じまた各々得意な分野というものがあるのだがそれのどれの訓練というのだろうか?魔力と言うからには攻撃や防御や治癒、特殊作用を及ぼす云々と多岐にわたる。
「ふ~ん、攻撃ではないのは確かでしょうねぇ?」
ここは室内…訓練場であれば分かりもするがここで炎やら、大洪水やら、強風など起こせもしないだろう。
「静かに!何も得意な大技を繰り出して見せよと言うわけではない。だが、対魔法騎士団に在籍するためには1番重要な訓練だ。これを乗り越えられなければ貴殿等にはその資格さえもない事になるため、健闘を祈る。」
資格さえ無くなると言うのであれば一大事だ。今まで見習い騎士としてやって来たことが全て水の泡となってしまう。
ゴクッ…
皆固唾を飲んで次なるタブロットの言動に注視した。
ガタッ…タブロットはこの部屋にある数少ない椅子に腰掛け、手に持ってた本を開き始めた…
「……?」
「え………?」
何事もなかった様に本に視線を落とすタブロットを前にして、ただ床に座っている新米騎士達は何をすればいいんだろうか…
「あの、シャーレ卿…質問をお許しください!」
身の置き所のない様な現況に耐えられずマルスが声を上げた。
「許す…」
視線を落とさないまま、タブロットはその先を促した。
「はっ我らは何をしていれば良いのでしょう?」
このまま床に座ったまま動かないで何らかの現象が起こるまで待ち続ければ良いのか、部屋の中を動き回って魔力操作の何らかのヒントを見つければいいのか…
「何もしなくていい。」
「え…それはどう言う?」
何もしなくていい?いつまで、このままでいろと言うのだろうか。新米騎士達の顔には不安の色が濃い。
パタン…読んでいたと思われる本を閉じてタブロットはやっと新米騎士達に視線を送る。
「もう、訓練は始まっている。ただ貴殿らは飲み込まれない様に足掻くように。限界と感じた者はその場で手を上げる様に。」
限界……何のだ…皆の頭にはきっと疑問符しか無いだろう。互いに顔を見合わせている所で各自ハッキリと異変を感じ取った。
「うっ…!」
「これ、はっ!」
「何で!!」
各自一斉に口元を覆い出す。訓練場と言われるこの部屋の中にαにとっては避けて通れぬ香りが充満し出したからだ。αが絶対に無視することのできない、Ωの香りだ……!
「ふっ…っ…」
何度と息を吸わないように耐えたとしても限界というものがある。一息吸ってしまえば頭の芯から甘く痺れて麻痺してくる様な強烈な香り……
Ωが…発情してる…?
誰もが一斉に落ち着かなくなった。キョロキョロと辺りを見回してどこにΩがいるのか見定めようとしているのだ。αを狂わすΩのフェロモン…それも発情しているΩのフェロモンは引き摺られないαはいないと言われるほど強力なのだった。
「皆さん揃いましたね?」
ハガイの隣にはリリーの侍従ノルーが控えていた。
「は、今回は以上7名ですな。」
いつも上から目線のハガイがノルーに敬語を使っているとは…その場に残された見習い達に緊張が走る。
「おめでとうございます。諸君はこれより対魔法騎士団に召し上げられます。私は対魔法騎士団総司令補佐のノルー・ダーウィンです。これからは諸君の同僚となりますのでお見知り置きを。」
「今から一週間以内にお前らは騎士団本部に移動となる!詳しい説明はそこで聞かされるが、この一週間は自由時間じゃあねぇぞ?荷物は後でもいいが本部での訓練が早々に始まる!気合い入れてけよ!!」
「「はっ!!」」
ボロボロの姿のままそれでも士気は上がるというものだ。なんと言っても目標だった騎士団に上がれるのだから。昇格した者達はこれから新米騎士としての訓練が始まる。見習い騎士とは比べ物にならないほどのものだという噂もある…
今日は、いなかった…リリーの侍従であるノルーが来ているのだからきっとリリーも居るだろうと踏んで辺りを探したのだが、それらしきフードを被った人物をこの日アーキンは見つけることが出来なかった。
新米騎士の朝は早い。何しろ早朝宿舎から出て行って城にある騎士団本部まで出向かなくてはならないからだ。普段であれば見習い騎士達は結界によって外に出ることも叶わないだろうに、新米騎士となるとフリーパスらしい。
「本日からここがお前達新米に与えられる訓練場である!」
王城に付き通された所は訓練場と言ってもここは王城別棟の室内の一室。だだっ広い応接間に家具がほとんど置いていないがらんとした様な部屋である。説明をしているのは対魔法騎士団第2騎士団副官タブロット・シャーレと名乗った。新米騎士7名はその場で座らされた。長身で細身だが何処となく威圧感のあるタブロットは姿勢を崩さず粛々と訓練の説明をしていく。
「訓練は3日間この部屋の中にて行う。3日間はここを出ること叶わずと心得よ。貴殿等の魔力操作訓練とでも思って励む様に!」
「魔力操作…?」
「何かの特性のか?」
魔力量に応じまた各々得意な分野というものがあるのだがそれのどれの訓練というのだろうか?魔力と言うからには攻撃や防御や治癒、特殊作用を及ぼす云々と多岐にわたる。
「ふ~ん、攻撃ではないのは確かでしょうねぇ?」
ここは室内…訓練場であれば分かりもするがここで炎やら、大洪水やら、強風など起こせもしないだろう。
「静かに!何も得意な大技を繰り出して見せよと言うわけではない。だが、対魔法騎士団に在籍するためには1番重要な訓練だ。これを乗り越えられなければ貴殿等にはその資格さえもない事になるため、健闘を祈る。」
資格さえ無くなると言うのであれば一大事だ。今まで見習い騎士としてやって来たことが全て水の泡となってしまう。
ゴクッ…
皆固唾を飲んで次なるタブロットの言動に注視した。
ガタッ…タブロットはこの部屋にある数少ない椅子に腰掛け、手に持ってた本を開き始めた…
「……?」
「え………?」
何事もなかった様に本に視線を落とすタブロットを前にして、ただ床に座っている新米騎士達は何をすればいいんだろうか…
「あの、シャーレ卿…質問をお許しください!」
身の置き所のない様な現況に耐えられずマルスが声を上げた。
「許す…」
視線を落とさないまま、タブロットはその先を促した。
「はっ我らは何をしていれば良いのでしょう?」
このまま床に座ったまま動かないで何らかの現象が起こるまで待ち続ければ良いのか、部屋の中を動き回って魔力操作の何らかのヒントを見つければいいのか…
「何もしなくていい。」
「え…それはどう言う?」
何もしなくていい?いつまで、このままでいろと言うのだろうか。新米騎士達の顔には不安の色が濃い。
パタン…読んでいたと思われる本を閉じてタブロットはやっと新米騎士達に視線を送る。
「もう、訓練は始まっている。ただ貴殿らは飲み込まれない様に足掻くように。限界と感じた者はその場で手を上げる様に。」
限界……何のだ…皆の頭にはきっと疑問符しか無いだろう。互いに顔を見合わせている所で各自ハッキリと異変を感じ取った。
「うっ…!」
「これ、はっ!」
「何で!!」
各自一斉に口元を覆い出す。訓練場と言われるこの部屋の中にαにとっては避けて通れぬ香りが充満し出したからだ。αが絶対に無視することのできない、Ωの香りだ……!
「ふっ…っ…」
何度と息を吸わないように耐えたとしても限界というものがある。一息吸ってしまえば頭の芯から甘く痺れて麻痺してくる様な強烈な香り……
Ωが…発情してる…?
誰もが一斉に落ち着かなくなった。キョロキョロと辺りを見回してどこにΩがいるのか見定めようとしているのだ。αを狂わすΩのフェロモン…それも発情しているΩのフェロモンは引き摺られないαはいないと言われるほど強力なのだった。
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