上 下
14 / 29

14 部隊長 *

しおりを挟む

「それが話したかったことか?」

 
 討伐報告から帰ってみれば宿舎がやや騒めき立っている。どうしたものかと残っていた兵の一人を捕まえて確認を取る間も無く、スレントル公爵家の次男坊に話があると声をかけられ今に至る。



「はい。了承頂きたいです。」

 赤茶の瞳には嘘偽りはないだろう。元よりアクサードは冗談で軽々しくこんな事を口にするような男ではない。

 まだ大人の目から見たら十分に青いガキだが、任せた仕事に対してはアクサードは信頼がおける男でもある。



 そのアクサードがスロウル・ガザインバークを預かりたいと申し出てきた。

 国の安泰を左右する事も出来る反乱因子のトップに立てる人物をだ。



に権力を持つ者は必要ないだろう?」
 
 何をしなくても公爵家の人間だ。後ろ盾は必要ないし、そもそも親である公爵が望んではいない。



「ご存知の通り私は次男です。この先私が持てるのは自分の腕のみです。」

 スロウルをあれ呼ばわりした瞬間、ピクリとアクサードの眉が動く。


「この先お前が武功を立てて爵位を賜る事も考えられる。お前は出自が公爵家だからな。それに群がる者も多いだろうさ。」

「部隊長ならば良いというので?」

 明らかにアクサードの眉根が寄った。自分の感情を抑える事に長けていない、だからガキだというのだ。



「俺は元は平民だぞ?腕が少し立つと言うだけでこの地位にいるに過ぎない。簡単に切り捨てられるさ。」

 お前は違うだろう?お前を簡単に切り捨てられたら他の貴族が黙ってはいない。
 


「悪魔でも権力の有無が重要になるのでしたら今すぐ父に勘当してもらってきますが?」

「は?」

 勘当だと?自分に何かあった時はスレントル公爵家は指一本も動かさないという事だぞ?


「貴方にも後ろ盾は無いのでしょう?それなのにスロウルの保護ができる立場に居られる。私も同じ条件ならば手元に置いても良いと言ういう事になります。」

「理屈ではな……そしてもう一つ裏で消されても文句は言えないという事だ。」

 権力も後ろ盾もないのなら後は上の匙加減一つ。



 公には勿論なってはいないが、テドルフ公爵は公爵なりの方法で我が子を守っている。
 全く関心も寄せず酷い接し方をしているが、長い目で見たら野心ある者に利用されないように、スロウルには利用価値が無いと思わせているのだ。



「果たしてどれだけの者が気が付いている事やら…」
  
 もし、なんらかの野心の踏み台として利用しよう者なら間違いなく消される。


「お前、それに耐えられるか?」


「勿論。想像に難しく無いので。野心はありませんし、欲しいのはスロウル自身です。」

「はっ!言い切るねぇ。」

 
 だが、悪く無い。余りにも弱々しくて、つい自分が手を伸ばした部隊長だが、実は妻子がいる。公爵の怒りを買ってまだ消されたくは無い。


「後は本人の気持ち次第。上手くやるんだな。」






「アッ……やっ……だ…」

 暗い部屋に、まだ少し甲高い声が響く…


「こら、逃げるな。」

 いつまでも慣れる事はないというくらい、スロウルはこの行為を嫌がる。
 まあ、好きでも無い奴と睦み合うのは嫌だと言うのは当たり前と言えば当たり前だ。



「嫌じゃなくてどうして欲しいかちゃんと言うんだぞ?」

 嫌だと言うには刺激を受けることを知った身体はしっかりと反応している。

 ゆっくりとスロウルの中心を数回撫であげれば直ぐに固さを持ち始める。


 ……まさか、妻子持ちの自分がこんな子供に手を出すとはね……


 自分の部屋にスロウルを連れ込んでは、伸ばした手を止めることない、そんな自分の姿に部隊長は自嘲した。


 しなやかな手足に細い身体。白い肌に絶世の美貌とくれば、子供や男なんて事吹き飛ばしてクラリと来る者も多いだろう。


「ンゥ……ン!」
 
「声を我慢しなくていい。聞きたいからな。」
 


「やっ…知ら…な……アァン!」

 スロウルを触る手に力をすこし込める。片手は胸を弄って…

「くすぐっ…た…い、から…や、め…」


 くすぐったいと言う割にはいい声で鳴いている。

 
 耳の裏辺り、首筋に沿って舌を這わせ吸い付いて行く。

 ビクンと、スロウルの腰が跳ねる。


「ヤ……アッ……」


 後から抱え込むようにして、力の抜けてきている身体を受け止める。

 首筋が弱い様で舐める様に口付けすると、ピクピクと背が跳ねる。



「フゥ……ンッ……アッ……ァァッ」

 最後まで行かせないようにして、出来るだけスロウルが感じている所を丹念に攻めて行く。

 まだ子供のスロウルに抗う事などできようはずもない。はっきり言って部隊長のやりたい放題である。


 言葉も出ず、喘ぐばかりのスロウルの目に涙が溜まる。



「いっ!…やっ!……そ、れ……やっ!…」


 香油をつけた指で後ろを探れば、スロウルの顔が一気に恐怖に変わった。


「最後までしない。力を抜いてろ……」


 スロウルの姿にいい加減自分も煽られる。
ここに入れたのは最初の一度きりだ。自分の物にするからにはそれなりの証拠もいる。たった一度だけ、欲望のままに抱いた。

 
 異物感に首を振って逃げようとするスロウルを抱え込み直して、スロウル自身を握る手に力を入れてやる。中に入った指からは、中の柔らかさとキツさ、暖かさが伝わって流されそうになるのを、部隊長はグッと堪えた。



「アン……アッアッアッアッ……ッッアァッッ」


 手を早くしてやれば、それに答えて声が上がる。
 スロウルは弱い首も攻められながら、前と後ろの刺激に耐えれずに精を放った…

 
 ぼんやりとした意識の向こうで、スロウル死ぬなよ、と呟く部隊長の声を聞いたような気がした。



********



 部隊長が最後に触れた、もう忘れてしまっても良さそうな昔の記憶だ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...