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 1通の手紙が今手元にある。毎日手紙を書く事を日課としているルーチェリアには見慣れた物だ。けれどもこれは自分が書いた物ではない。

 聖女ルーチェリア様へ

 そう書かれた手紙は聖女カナールからの物だった。内容は、瘴気を浄化してしまうくらいの力があるのならば、今も瘴気と戦い、傷ついている聖女達のためにその力を見せてみよ、というものだ。そのためにならば、聖女カナールは協力を惜しまないという。

 ギュッと手紙を握りしめる。


 これってあれよね?地下神殿に溜まっているっていう瘴気を浄化しろって事よね?

 
 聖女の力を現した小さな子供達までもが犠牲になっていると聞いてしまえばそうした方が良いのはわかるのだ。


 アールストも様子がおかしかった…


 そっとアールストの触れた所に手を当てる。大きくて思ったよりも骨張ってゴツゴツした、暖かい手……

「きっとまたダメって言うよね…?」


 暖かかったアールストの手……ルーチェリアはまた握りしめることができるのかな……?


「あら、遅いお越しですこと…!」

 夜も深けた夜半に、昼間聖女カナールが瘴気を押し戻した地点でルーチェリアはカナールと対峙している。

「この手紙をもらってからすぐに来たつもりよ?」

「そう?私はここでずっと待っていてよ?」

「そう…」 

「嫌だわ、貴方ったらずっとそんな暗い顔して…可哀想な聖女達を助ける事になるのよ?胸をお張りなさいな!」

「助けるって…やっぱり…」

「その為に来たのでしょう?」

 小さな聖女達が犠牲になっていいはずがない…それに命をかけている他の聖女達も…だから……

「………」

「悩んでいるの?そんな貴方はやっぱり下賎な心根ね。」

「下賎ではありません!!」

 
 アールスト…!?


 一人で来たと思ったのに、振り返ればそこにはアールストがいるではないか。

「聖女カナール様…ここで何をしているのかお聞きしても?」

 今は夜も深け深夜に近い。

「貴方こそどうしているの、アールスト?」

「いつも言っているでしょう?貴方様の御身第一と。こんな夜更けにお一人でどこに行こうとしているのかと思ったら。」

 アールストの表情がとても厳しい……

「ご機嫌ようアールスト様。こんな月夜の晩にお会いできるなんて素敵な事ですわね?」

「素敵な事、ですか…それで済めばどれほど良いでしょうね?聖女カナール様…」

 アールストの隣には月の光に美しく照らされた銀の髪のレストール神官長の姿もある。いつも優しい微笑みを湛えているレストール神官長は今夜は緊張を張り付けたような表情をして…











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