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「世紀の大聖女様が聞いて呆れますわ!」
「聖女カナール様!」
聞くに絶えないとアールストが止めに入る。
「お止めにならないで、アールスト様!私達聖女の宿命ですわ。幼かろうと生命を賭けるのも。」
「…聖女カナール様も……?」
「当たり前でしょう?それだけの矜持は持っていてよ!この封印から漏れた靄は私にしか戻せないのですもの。貴方もでしょう?」
「私は…」
やると言ってもまだそこまでの覚悟はできてない…
「貴方にしかできないのですってね?瘴気その物を浄化する事…?」
「ええ…その様です。」
「では、その力使うべきではなくて?」
「聖女カナール様!」
アールストが更に止めに入ってきた。
「私、結界に隙間を開ける事ができますの。」
「聖女ルーチェリア様には関係のない事です!」
「ありますわ。ねぇ?聖女ルーチェリア様?結界を開けて瘴気の靄を押し返すんですの。」
聖女カナールは頻繁に起こる瘴気漏れのために中央神殿を離れられないのだそうだ。そして瘴気を押し戻す場所やタイミングについて最も適した時を選び結界を開ける時の被害を最小にしているんだとか。
「行きましょう!ルーチェリア様。これ以上聞く必要はありません。」
聖女カナールの話の途中であったにも拘らず、アールストはやや強引にルーチェリアの手を取って歩き出す。
「あ!アールスト?いいの?カナール様も聖女なのに…!」
聖女第一の聖騎士の行動とは思えないほどの失礼な態度。アールストがこんな事をするとは思わなかった…
「良いのです。良いですか?私の第一は常に貴方様ですよ?」
ピッと指を突きつけらていつもの様にアールストにそう宣言される。
「分かっているのですけど…でも他の聖女達の仕事内容を知っていてもいいのではないかと…」
だって、聖水の泉で水を清めている聖女達の姿を見学していたって文句言われた事ないし…
「…………これは別問題になります。いいですか、ルーチェリア様。」
片膝ついたアールストがそっと頬に手を伸ばす。
「貴方様の身に何かが起こるかもしれない場合、私はなんとしてもそこからルーチェリア様を守りますよ?」
アールストの金色の瞳が真っ直ぐに、ルーチェリアの澄んだ空を思わせる様な青い瞳を射抜いた。
「聖女カナール様!」
聞くに絶えないとアールストが止めに入る。
「お止めにならないで、アールスト様!私達聖女の宿命ですわ。幼かろうと生命を賭けるのも。」
「…聖女カナール様も……?」
「当たり前でしょう?それだけの矜持は持っていてよ!この封印から漏れた靄は私にしか戻せないのですもの。貴方もでしょう?」
「私は…」
やると言ってもまだそこまでの覚悟はできてない…
「貴方にしかできないのですってね?瘴気その物を浄化する事…?」
「ええ…その様です。」
「では、その力使うべきではなくて?」
「聖女カナール様!」
アールストが更に止めに入ってきた。
「私、結界に隙間を開ける事ができますの。」
「聖女ルーチェリア様には関係のない事です!」
「ありますわ。ねぇ?聖女ルーチェリア様?結界を開けて瘴気の靄を押し返すんですの。」
聖女カナールは頻繁に起こる瘴気漏れのために中央神殿を離れられないのだそうだ。そして瘴気を押し戻す場所やタイミングについて最も適した時を選び結界を開ける時の被害を最小にしているんだとか。
「行きましょう!ルーチェリア様。これ以上聞く必要はありません。」
聖女カナールの話の途中であったにも拘らず、アールストはやや強引にルーチェリアの手を取って歩き出す。
「あ!アールスト?いいの?カナール様も聖女なのに…!」
聖女第一の聖騎士の行動とは思えないほどの失礼な態度。アールストがこんな事をするとは思わなかった…
「良いのです。良いですか?私の第一は常に貴方様ですよ?」
ピッと指を突きつけらていつもの様にアールストにそう宣言される。
「分かっているのですけど…でも他の聖女達の仕事内容を知っていてもいいのではないかと…」
だって、聖水の泉で水を清めている聖女達の姿を見学していたって文句言われた事ないし…
「…………これは別問題になります。いいですか、ルーチェリア様。」
片膝ついたアールストがそっと頬に手を伸ばす。
「貴方様の身に何かが起こるかもしれない場合、私はなんとしてもそこからルーチェリア様を守りますよ?」
アールストの金色の瞳が真っ直ぐに、ルーチェリアの澄んだ空を思わせる様な青い瞳を射抜いた。
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