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 神殿と言われなければきっとわからない……

 とても落ち着いた色合いの建物が増えて来たと思ったらその街中を歩く人々も見たことがある様な服装を着用していて…ん?と小首を傾げてルーチェリアはアールストを振り返る。

「アールスト…ここはどこです?」

「おや、着いた様ですね?」

 軽く目を瞑っていただけのアールストはルーチェリアの声に直ぐに目を開けた。

 大きな街の様だけど、今まで通ってきた街とは違う。建てられている建物の大きさも整然とし色にも統一感がある。優しい雰囲気の色で溢れて温かみがあるのに大きな市場の様な活気はない。全体的に落ち着いていて何処となく懐かしさも感じる様な……

「ルーチェリア様、ここが中央神殿です。」

「神殿……ここが…?」

 良く管理された落ち着いた大きな街…一見するだけでは神殿とは思えない。けれど街ゆく人を見て見ると神殿侍女達が着る様な神官服や、アールストと同じ様な聖騎士の様な服装の人達が行き交っているのが良くわかった。アールストに言わせると侍女や騎士にも階級があり似通った衣装の中でそれぞれ少しづつ変化をつけているとのことだった。慣れていないルーチェリアが見てもその違いはさっぱりと分からなかったのだけれども。

「はい。そして今から私達は神託の間に向かいます。」

 神託の間…聖女に関する神託が降りるこの神殿内で1番神聖な場所だという。

「そんな所に…?部外者が?」

 怒られない……?
 
「ルーチェリア様……貴方様こそが入るにふさわしい聖女様ですよ?」

 アールストには呆れられてしまいそうだが、ルーチェリア自身自分がそんなに物凄い人物だとは到底思えないのだから仕方がないだろう。

「だって…だって。アールスト…」

 馬車が進んで行く中央神殿の更に奥に徐々に見えてくるのは殊更立派な大きな城……?

 城と言ってもいい位なのだ。真っ白な眩しいばかりの壁には所々深い海の様な青いグラデーションを放つステンドグラスが嵌め込まれていて、目が覚める様な美しさを惜しげもなく見せてくれる壮大な城。その建物の至る所に繊細な彫刻が彫られ、上部には幾つもの尖塔が突き出しているのが遠くからでもよく見えた。そして非常に高く作られていて、神殿の目の前まで来ると上を見上げるのが苦痛に感じるほどなのだからもう言葉が出なかった…













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