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「着ませんよ、アールスト!」

 一度呼び捨ててしまえば名前を呼ぶのにも慣れてしまった。美人は3日で飽きると言うけどアールストの美貌にも怖じけずに正面切って言い返す。

「私が聖女だと言う事、バレない方が良いのではないですか?」

「いえ、ばれてもがいません。確かに貴方様は聖女だからです。」

「でもだって、それじゃあ静養にならないじゃないですか?」

「何を言うのです?聖女の衣を着ていらっしゃるのならば貴方様の上に立つ者なんていないのです。貴方様が静養と言えば何人たりともこれを覆す権利もございません。ですから安心してこちらをお召しになって…」


 もうここまで来ると、私の中の聖女のイメージがガタガタですけど、アールストさん?誰が何と言おうと聖女がこう言えばそれを誰もが否定もしちゃいけないって事でしょ?なんか、やだなぁ……


 ニコニコと微笑みながら聖女の衣を差し出しつつこれが至極当然と言い切るアールストへ向かってルーチェリアは複雑そのものの表情を向ける。確かにアールストはルーチェリアはもっと傲慢にもっと尊大になってもいいと言っていたけれども……まだ青少年特有の純真な心根がある内は大人の事情が汚くも見えるものだ。

「よろしいですか?ルーチェリア様。これから参ります中央神殿は聖女の為に建てられている様なものでございます。聖女が産まれればここに神託がおりますし、代々この神殿をお守りしている聖女もいるのですよ?」

「…守っている、聖女?」

「左様です。ルーチェリア様は浄化の力に恵まれておいでですね。同じ様に神殿を聖別し、清浄に保つ役割を持つ聖女もいるのです。」

「では、私の他にも聖女が?」

「はい。以前お伝えしませんでしたっけ?世界各国にはまだまだ聖女と呼ばれる方々がおられるんですよ。」

 聞いた様な、聞いていなかった様な…気がする。講義か何かで言ってたかな?トルンフィス王国では会えなかったのよね~

「では!神殿に行けば他の聖女に会えるんですか?」

「はい!勿論でございます。親交を深められるもよし、情報交換をされるも良し…定期的に神殿詣をなさる聖女方もおられますよ。」


 本物聖女きた~~~!!!


「ですから皆様と同じ様にルーチェリア様もご遠慮なさる事はないんです。」

 先程と同じ綺麗なフォームでアールストは聖女の衣をルーチェリアに差し出した。







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