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「あの~~~ぅ……アールストさん?」


 沈黙が痛い……ペチャクチャと楽しい話をし続けろって言っている訳じゃ無いので必要だと思われる会話位はして欲しい……
 いつもの様に敬称は要りませんとか、それだけでも良いから…

 
 朝からほぼずっとルーチェリアが多分寝入るまで部屋の入り口で見張り役の様なものをしているアールスト。必要に応じてその立ち位置を変え、それでも部屋からは出て行かない。侍女の話によると夜間ルーチェリアが寝入ると寝室にさせて貰っている控え室、と言ってもルーチェリアの隣の元々は側仕えの者の部屋に帰りそこで休んでいると言う。

 これを毎日繰り返しているのだ。部屋に全くの2人だけと言うわけでは無いからまだ良いにしてもなんで話さなくなっちゃったんだろ?ドレスの事で怒っていそうなのはわかるんだけど………

 仕方無しにルーチェリアは入浴の時に侍女を浴室に連れ込んでアールストの無言の理由らしきものを探ってみた。


「沈黙の礼を守っていらっしゃるのでは無いでしょうか?」

「沈黙の、礼?」

 聖騎士団は聖女を護る騎士団である。能力はもちろんの事、使える者の精神面に置いてもその素質は問われるもので、騎士達を縛る戒律もそれは厳しいのだとか。

「ええ、今それをなさる方は多くはないとは思いますけれど…」

「どう言う事なんです?それ?」

 沈黙の礼…主人となる聖女の不利益となる事を徹底的に沈黙を持って守り通す事。これは時には自分が拷問にかけられていても守り通す事になる、のだそうだ。

「ルーチェリア様はご記憶を無くされていますから…」

 聖騎士に憧れを持つ子女達の間ではかなり有名な戒律であるそうで、沈黙の礼を貫き通す騎士の美談が絵本になっていたりする。

 全くと言ってこの世界に対する記憶なんてないルーチェリアにとっては今初めて聞く内容であった。

「え、それっていつまで続くんですかね?」

「はい。貴方様が良し、と仰るまでですわ。」

 聖女の不利益にって…今まで既に散々している様な気がするんですけど?今のルーチェリアは公爵家の息女であっても淑女的な要素はほぼ皆無、聖女としての嗜みが聖女の衣を着る事ならば、いつもボロのお仕着せを着ていて仕事の後には真っ黒ドロドロ……外聞云々問われれば今までのルーチェリアの様相は一切外に出してはいけないもののように思うのだが……?







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