29 / 88
29
しおりを挟む
「ふむ。苦しゅうない。こちらへ…」
国王が指し示すのは石の祭壇の前だ。
「お待ちください。トルンフィス国王陛下。」
スッとルーチェリアが前に進み出そうとするとそれよりも前にアールストが出てきて遮ってくる。
「君は?」
「私の衣を見て分かりませんか?」
「あぁ、聖騎士殿だな?」
「その通りです。私は聖女ルーチェリア様を守る為にここにおります。その意味がお分かりで?」
「………我らの要請には応えられぬというのか?」
「内容にもよりますね?」
「出来ぬと…?」
ピキッ……
空耳だと思いたい…アールストさんからなんか音が聞こえた……
「陛下は聖女をなんだとお思いになっているのです?本来ならば聖女ルーチェリア様には一国の国王如きに呼びつけられてノコノコとやってくる義理などこの方にはありますまい!」
トルンフィス王国が聖女に対して誠意を尽くさなかったのだから…!そして今日のこの仕打ち…聖女は王の間にて荘厳に迎え入れられるかもと思っていたのに、挨拶もなく本城を素通りして墓場だと?
アールストの怒りは沸点を超えてしまいそうだ。
「…致し方ない事だ。その娘は先日まで社交も出来ぬ身体であったとか…聖女としての働きぶりと、今日見た限りどこも悪そうには見えぬのは幸いなことよ。」
「聖女ルーチェリア様を慮って礼を省略したと?」
「許せ…何分、急を要しているのだ…」
小国であろうと威厳ある立場の国王陛下は随分と疲れている様にも見えた。
ブチッ………
2回目の空耳を聞いた様な気がする…?
そうっとアールストを除き見れば、目が完全に補殺者の様に殺気立ってて……!
聖騎士!!聖騎士ですよ!アールストさん!!それじゃ、暗殺者に~~~
自分が狙われてるわけじゃないのに掌に嫌な汗がじっとりと染み出して来た………
「あ、の!陛下!私の仕事は?何をすればいいんでしょうか?えっとお手紙では王家の逸品の浄化とか伺っているのですけど!」
こうなったら礼儀作法も何も無い。今までは権力者の前で萎縮していたルーチェリアは今度は暗殺者となりそうなアールストの前で必死にこの場を取り繕う羽目になった。
「そうなのだ…王家の恥とも言うべきか…」
そう言って祭壇の上に置いてある長方形の箱に視線を移す。
そうですよね?それですよね?だってそれさっきからずっと瘴気の靄がゾワゾワと漏れ出てますもん…
国王が指し示すのは石の祭壇の前だ。
「お待ちください。トルンフィス国王陛下。」
スッとルーチェリアが前に進み出そうとするとそれよりも前にアールストが出てきて遮ってくる。
「君は?」
「私の衣を見て分かりませんか?」
「あぁ、聖騎士殿だな?」
「その通りです。私は聖女ルーチェリア様を守る為にここにおります。その意味がお分かりで?」
「………我らの要請には応えられぬというのか?」
「内容にもよりますね?」
「出来ぬと…?」
ピキッ……
空耳だと思いたい…アールストさんからなんか音が聞こえた……
「陛下は聖女をなんだとお思いになっているのです?本来ならば聖女ルーチェリア様には一国の国王如きに呼びつけられてノコノコとやってくる義理などこの方にはありますまい!」
トルンフィス王国が聖女に対して誠意を尽くさなかったのだから…!そして今日のこの仕打ち…聖女は王の間にて荘厳に迎え入れられるかもと思っていたのに、挨拶もなく本城を素通りして墓場だと?
アールストの怒りは沸点を超えてしまいそうだ。
「…致し方ない事だ。その娘は先日まで社交も出来ぬ身体であったとか…聖女としての働きぶりと、今日見た限りどこも悪そうには見えぬのは幸いなことよ。」
「聖女ルーチェリア様を慮って礼を省略したと?」
「許せ…何分、急を要しているのだ…」
小国であろうと威厳ある立場の国王陛下は随分と疲れている様にも見えた。
ブチッ………
2回目の空耳を聞いた様な気がする…?
そうっとアールストを除き見れば、目が完全に補殺者の様に殺気立ってて……!
聖騎士!!聖騎士ですよ!アールストさん!!それじゃ、暗殺者に~~~
自分が狙われてるわけじゃないのに掌に嫌な汗がじっとりと染み出して来た………
「あ、の!陛下!私の仕事は?何をすればいいんでしょうか?えっとお手紙では王家の逸品の浄化とか伺っているのですけど!」
こうなったら礼儀作法も何も無い。今までは権力者の前で萎縮していたルーチェリアは今度は暗殺者となりそうなアールストの前で必死にこの場を取り繕う羽目になった。
「そうなのだ…王家の恥とも言うべきか…」
そう言って祭壇の上に置いてある長方形の箱に視線を移す。
そうですよね?それですよね?だってそれさっきからずっと瘴気の靄がゾワゾワと漏れ出てますもん…
10
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません
おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。
ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。
さらっとハッピーエンド。
ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。
転生令嬢、死す。
ぽんぽこ狸
恋愛
転生令嬢、死す。
聖女ファニーは暇していた。それはもう、耐えられないほど退屈であり、このままでは気が狂ってしまいそうだなんて思うほどだった。
前世から、びっくり人間と陰で呼ばれていたような、サプライズとドッキリが大好きなファニーだったが、ここ最近の退屈さと言ったら、もう堪らない。
とくに、婚約が決まってからというもの、退屈が極まっていた。
そんなファニーは、ある思い付きをして、今度、行われる身内だけの婚約パーティーでとあるドッキリを決行しようと考える。
それは、死亡ドッキリ。皆があっと驚いて、きゃあっと悲鳴を上げる様なスリルあるものにするぞ!そう、気合いを入れてファニーは、仮死魔法の開発に取り組むのだった。
五万文字ほどの短編です。さっくり書いております。個人的にミステリーといいますか、読者様にとって意外な展開で驚いてもらえるように書いたつもりです。
文章が肌に合った方は、よろしければ長編もありますのでぞいてみてくれると飛び跳ねて喜びます。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる