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「王家からにございます。」

 ゆっくりと用意してくれた湯に浸かりながら泡立てた泡で汚れを落とす…丁寧にやらないと落ち切らないから…

「王家……?王…家!?どこのです?」

 歴史に礼儀作法、ここで生きて行くのには問題ないくらいは勉強できているだろうか?ルーチェリアが聞き間違いではなければ侍女達は確かに王家、と言ったのだ。

「はい。トルンフィス王家にございます。」


 トルンフィス王家…この国の王様だ…


「なんと?なんと書いてあります?」

「開封してもよろしいので?」


 ええ、もちろん!と言いたいところだけど、名指しで来た手紙ならば本人以外が開けてはいけない物なのだろう。

 ルーチェリアは今ままでで一番の素早さでヘドロ汚れを落としてみせた。

「こちらに……」

 手紙をこんなに丁寧に扱うのかって言うくらいに丁寧に持って来られた一通の手紙。上質な紙を使用してて良い香りさえしてきそうだ。神殿侍女が(身近なお世話をする役はカルンシス公爵家の侍女よりも神殿侍女がメインなってて)丁寧に封を切ってくれたものをこれまた丁寧に差し出してくれた。

「なんと?」

 だんだんと表情が固くなっていったのを侍女達は心配したのだろう。結果はトルンフィス国王からの呼び出しであった。


「行く事はありませんよ。」

 案の定というか誰が部屋に入れたのか、アールストの返答はスッパリと切り捨てる側だった。

「でも国王、王様からの呼び出しでしょう?」


 この国の最高権力者である人なんだから…無視したらそれなりの罰が降るのでは?不敬罪、だっけ?


「用があるのは彼方のようです。では、彼方から来させれば良いのです。」

 随分と傲慢な意見ではないだろうか?が、うんうんと神殿侍女さん達もみんな頷いていて…聖女は国王と同等に敬い国王に準ずる扱いをするべし、と言うのがこの世界での常識だったわけで。アールストはそれに忠実に行動しているに過ぎない。

「聖女ルーチェリア様…トルンフィス国王は大いなる力の持ち主であられる貴方様を…まずは王宮にでも迎え入れて王族と同等の扱いをするべきでした。」

「え…でもそれは、他の国が黙ってないのでは?」

 聖女は大変貴重な存在だ。一国のそれも弱小国の国王が囲って良いものではないだろうに…?

「当たり前です!トルンフィスの様な小国がそんな暴挙を起こしたならばあっという間に大国に攻め滅ぼされてこの国には草も残りませんよ。」

「えぇぇぇ~そんなに…ですか?じゃぁ…このままでも問題なかったのですよね?」

 トルンフィス王城じゃなくてルーチェリアの実家のカルンシス公爵家にいるのだから。

「いいえ!問題ですよ?やろうとすればできるのに聖女に敬意も表さず何もしないで放置していたのですから。」

 やろうと思えばいくらでも…他の方法を取るなりやりようはあったはず。それをやろうともしなかったトルンフィス王家にアールストはどうやら腹を立てているらしかった。









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