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 だからと言って、言われたままその衣装を着て、言われるまま最上級の生活をする事に何の魅力もない…

「だって、そんなに窮屈な事、したく無いんだもの!!」

「ルーチェリア様!!」

 常に公爵家の令嬢であれ…ルーチェリアが生涯?貫き通してきた矜持を、つい溜まらず大声で破り捨ててしまった…


 やっちゃった…!


 ルーチェリアを呼び止めるアールストをその場に残し走り去る。


 ごめん、ごめんね本物のルーチェリア!

 
 走りながら心の中で何度も謝る。

「で?どちらに向かわれるのです?」
 
「きゃぁぁぁあ!!」

 ビックリした!本当に心臓が止まるかと思った…!

 おいてきたと思ったアールストがかなりのスピードで走っていると思われる自分の横にピッタリとくっついているのだからそりゃ驚きもするだろう。
 
「どうされました!?もしや、挫かれましたか?」

 アールストに驚いて思わず叫び声を上げてしまったのに、当のアールストは全く見当違いな事を聞いてきた。

「ち、ちが…!なんで、貴方ここに!?」

「なぜ?私は聖女の護衛騎士です。常時であれば何時たりともお側を離れることさえ有り得ませんよ?それにご令嬢の御御足おみあしに追いつけない様な鍛え方はしておりませんよ?」


 何それ!?迷惑すぎる!!それで持ってなんで嬉しそうにニコニコついて来てるのよ?

 も、無理…………

 
「あ!!」

 鍛え抜かれた騎士と病弱だったご令嬢…誰がみても体力差や運動能力差が天と地程あるって分かるはず…あっと思った時にはルーチェリアは体制を崩した後で、転ぶと思って目を瞑った瞬間に身体がフワッと浮いていた。

「……あれ?」


 痛くない?


「ルーチェリア様、ご無事ですか?」


 アールストの声がこれでもかと言うほど近くに感じる…?


「えぇぇ!?」

 転ぶかと思った瞬間どうやらアールストに抱き止められてそのまま横抱きにされていたらしい…目を瞑っていたからと言ってそんな事全く気が付かせ無いほどにアールストは見事に受け止めてくれていたらしい。

「ちょ、ちょっと!アールストさん!」

「ルーチェリア様何度も言いますが私に敬称は要りませんよ?」

 ニコニコと満足そうにルーチェリアをその腕に抱くアールストはそのまま歩を止めずにスタスタと歩き続ける。

「汚れますって!騎士様の衣装が~!」

 見ただけでもしっかりした作りの物だとわかる騎士服を直今に触って更に確信を強める。


 これ絶対オーダーメイドな奴ですよね?

 
 抱き上げると同時にきっと神殿騎士の象徴とも言える真白な騎士服はドロドロに汚れているに違いない。
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