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 山の中腹で騎士様の叫び声が響いていく……

「えっと……?」


 この人は確か、昨夜会った聖騎士と言ってた人ね?


 昨夜は余りにもキラキラした騎士がルーチェリアの目の前に立ったものだから、ちょっと驚いてしまったのだ。こちらの一般常識にやっと慣れたかなと言う前に聖女認定されて、あれよこれよと仕事が舞い込み今回は初の遠征のようなものに参加した。

 昨夜会った時には丁度馬車の中に変えの服類を詰め込んでいる最中だった。勿論、普段というかその日も色々動かなくちゃいけなくて動きやすい格好をしていた所に王子様の様な騎士にあってしまえば、自分が聖女認定されました、なんて言い出せなかった。

 その騎士様が目の前で固まっていらっしゃる……


 それはしょうがないと言ったらしょうがないのだ。聖女ルーチェリア。しっかりと聖女と認定はされていても現在、えも言われぬドロドロの汚れで全身ベッタベタであるのだから。

「恐れながら、お聞きしますが……?」

 聖騎士アールストはフルフルと肩が震えているのが分かるほど動揺している。

「はい。何でしょうか?」

「カルンシス公爵家ご令嬢、聖女ルーチェリア様で……?」


 一生懸命に笑顔を作ろうとしているのだろうけど、ちょっと引き攣ってますよ?


「はい…そうです。」

「………神殿付きの、侍女達は…?」

「あそこにいますね?」

「……これは、公爵家のご意向で?」

「え?良くわかりませんが?」

「…私は、神殿から遣わされているガルンドーラ聖騎士団の一員、アールストと申します…!聖女付きの侍女達は何をしていたのだ!」

「も、申し訳ありません!」

 神殿の侍女達はガバッとその場にひれ伏す。

「そして、カルンシス公爵家の面々も、これは聖女殿に対する虐待か!?国王までも許可されているという事ならば、トルンフィス王国は全世界を敵に回したとしても過言ではないぞ!?」

「えぇえぇえ!?」

 聖騎士アールストの誇りと信仰心からくるこの言葉に一番驚きの声を上げたのは、当の聖女ルーチェリアだった。











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