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38 囚われた先は

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 レギル王子が引きずられて行き放り込まれた牢は貴族牢などからは程遠い程の簡素な汚らしいもので、レギル王子は両手を後ろ手に縛られたまま放り込まれることとなった。

「領主の館か……」

 国を護る騎士達は各地に駐屯し、その任に就く。が、各地の領主によっては私兵団を擁しており、国の騎士と協力して任に就いている事も珍しくはない。騎士隊の駐屯地にももちろん牢があるが、領主の屋敷にも地下に作られていたり、別棟があったりと私用の牢屋くらいは備えている。運び込まれた建物の外観は騎士の駐屯地ではあり得ないほどの立派な造りであったため、レギル王子は自分は領主の館に連れてこられたと判断する。

「騎士隊に渡さなくてもいいのか?」

 牢の外では見張らしき者達の声がする。

「さぁ、騎士隊のお偉いさんが連れて来たんだろ?」

「ああ、騎士隊舎の牢に入れる筈じゃないのか?」

「まあ、いいだろ?こっちでも拘束されてるんだから一緒だろ?」

「何言ってんだよ?王族だって噂だろ?これがバレたら領主様の首だけじゃ済まなくなるぞ?」

「平気だろ?王族の名を偽っているだけだから。」

「おい!なんでそんなこと分かるんだよ!それが違ったら俺達だって無事に済まないんだぞ!!」

「平気だって…まぁ、見てろよ?」

 なるほど……ここは国にではなくて、誰かに付いている私兵で管理されている。

「…つっ…」

 かなり容赦なく縛り上げてくれた物だから、両手は一切動かせない…牢に入れれる際足まで縛り上げられたので、寝返りさえも真面にとる事ができない姿勢のまま放置される事どれくらい経っただろうか?

「様子はどうだ?」

 外から聞いた事のある声が聞こえてくる?

 どこで…?

「へぇ、おとなしいもんですよ…暴れも、叫びもしませんよ。」

「ふ~ん。肝が座ってるのか?高を括ってるのか?」

 レギル王子はグッと仰向けになって首を入り口の方に回す。

 誰だ?

 ガチャッとドアが開けられればやはり見た顔だが………

「やぁ、兄弟!」

「!?」

「俺の顔を覚えているかい?」

「どこで……!?…宿屋か?」

「ご名答!……よっと!」

「うっ……!」

 仰向けだったレギル王子の胸ぐらをグッと掴んで引き起こして男はレギル王子を座らせた。確か…あのしつこいデイルの兄貴分のエルグと名乗っていた男だ。

「なぜ、ここに?」

「よし、顔に傷は付けられて無いな?」

 エルグはレギルの顎を手で掴むと左右に顔を振らせて確認している。

「おい、お前ら!絶対に身体に傷をつけるなよ?あ~あ、この腕傷できてんじゃん?強く縛りすぎなんじゃねぇの?」

「はぁ、でもそれ騎士隊の人達が…」

「はぁぁ……あいつらガサツだからなぁ…傷者になったら値が下がるって言うのによ……」

 値が下がる………

「…自分が売り物になるとは、ついぞ思わなかったな………」

「あ、高を括ってる方だったな?兄弟…あんたみたいなのをさ、非常に欲しがるお方もいてね?まあ、こちとらいい商売をさせてもらってますけどね。」

 爽やかないい笑顔でエルグは言うがこれはかなりの問題発言だ。

「国際問題になるぞ?」

「お?まだ強気か?それは大丈夫だろ?あんたは国を出てない事になっているらしいじゃない?病気療養中で、代わりの者が立たされているって話だぞ?」

 自分の全てを置いていくつもりだったから、王位継承権が移っていてもレギル王子にはなんら不服はない。

「落ち着いちゃってるな?覚悟の上ってか?いいね……なら、こちらもなんの罪悪感もなく商売ができる。」

「商品になってやるつもりはないんだが…」

「あ、魔法は封じさせてもらってるからな?あんた魔術士様なんだって話だし…ハイスペックだね?」

「…魔力封じの術も道具も手に入る物ではないだろう?」

 魔法自体がもう殆ど忘れ去られている様な世界でそんなアイテムを所持している方が物珍しい。

「ふっここのご領主様がそういうのが好きでねぇ…色々と持ってらっしゃったわけよ。それを今使ってるから、あ、どれだけ影響が出るか分からないから、魔法は使わないでくれよ?こっちは、興行収入が全く入らなくなっちゃったんだから、あんたが売れてもらわなきゃ困るんだよねぇ~」

「なんとも、勝手な言い分だな……」

「本当、いい目してるよな、あんた。その色といい、目力といい、喜ばれそうだ。」

「……」

「あぁ、絶対に自殺なんてしてくれるなよ?もう一人、良さそうな奴がまだ捕まってないんだからさ。そんな事されたらこっちは大損だからな?」

 なんとも勝手な言い分だ…いいたい事だけ言い置いてエルグは牢を去っていった。

 もう一人は捕まってはいない……その、もう一人とはリレランだろうか…?

 大人しく捕まるリレランではないとレギル王子は思っているが、狙われているのが分かっているのは気持ちの良いものではないどころか、レギル王子には不快極まりなかった…………
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