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14 龍の卵 2
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無数の蝶がレギル王子の前を先導?目隠し?をし、夥しい数の蝶に導かれて行く。
ゆっくりと王子の道を指し示してくれるので間違った方向には進んでいないと信じつつ蝶に促されるままに進んでいく。はっきり言って霧の中に迷い込んだ様な錯覚さえしてしまう程に蝶はレギル王子達に寄り添い離れようとしなかった。
「これで、良く迷いませんな……」
あまりの無数の蝶の数に辟易とさえして来たマラールの眉間にシワが寄る。
「本当に凄い。彼らはこんなに何処にいたんだろう?」
初めてこの谷を見たときには決してこんなにもの無数の蝶は絶対にいなかったのに……
「王の言葉に呼応して他の精霊が反応した様にも見えますな。」
「…うん……」
しばらく蝶との大行進は続いた。この広い谷の中にどれくらいの大きな龍が居るというのか……一歩進むたびにレギル王子の緊張も大きく膨らんでくる。
「王子、何かありました時は僭越ながらこの老いぼれが前に出ますぞ…後はよろしくお願いしましょう…」
落ち着いたマラールの声がすぐ後ろから響いてくる。
「先生……何を…」
「未来の若者を守り育てるのも魔術士の大事な使命ですからな。」
飄々と答えて行くマラールの声は悲観も恐怖も後悔も何も感じさせない落ち着き払った声だ。
「先生…!あなたは我が国カシュクールにとって大事な方だ。勿論、私にとってもです。その様な事態にならないように十分に気を付けてまいります…!」
蝶の道を歩いて行くたびにレギル王子は気を引き締める。先に祖国に立ったコアットとヨシットは無事にランダーン国を抜けられただろうか?国境警備隊に見つからないように上手く国境沿いに移動出来れば良いのだが…これから自分がどんな境遇に陥るかも分からないレギル王子だったが、無事にカシュクールに帰ると誓った仲間のことを今一度思い出してその誓いを心に刻む…
突然、目の前の蝶の群れが切れた…本当に切れた、としか言えないように突然と視界がバッと広がった。広がった先には大きな巨木。その周囲にヒラヒラと無数の蝶が散って行った。
"ここが…?"
龍がいると言う場所だろうか?禍々しい雰囲気などせず、先程と同じく清浄な空気。さっと辺りを見回しても龍と思しき巨体は無い。ので、つい周りにいる蝶達にここに龍がいるのか、と問うてみた。
"そう…ラン…"
"ほら…そこ!"
"寝てる、起きない…"
"話しかけても、答えない。"
先程よりもはっきりと、元気よく蝶達は答えた。そこ、と言うのだからには近くなのだろう。知らず、レギル王子は腰の剣に手を添えている。龍目掛けて抜刀など最早自殺行為でしかない様に思われるが、レギル王子とて剣術を磨き上げて来た手前、身を守ろうとすればやはり腰の剣に無意識に手が行く。
「先生…如何やらここのようです…が……」
「ふむ……」
囲んでいた蝶達はお役目御免とばかりに上空目掛けて霧散して行った。ここが終着点であるのは間違いがない。
「どこでしょうか?もしや、地中に?」
そうであればどの様に探せば?蝶達は寝てると言った。ではどうやって起こせば?ゆっくりレギル王子とマラールは巨木が守る様にしている空間に入って行く…
上空には蝶たちの煌めきや輝きが優しい光を落としている。しかし、一部地表にも他と違う輝きを放つ場所があるのにレギル王子は気が付いた。
「先生!あの部分、光っています!」
巨木の根本近く少しこんもりとしている物が目に入る。そこだけが妙な艶やかさで輝いているのだ。
「行ってみますかな?王子。何やら手掛かりはあるかもしれませんぞ。」
「分かった、行こう!」
レギル王子は完全に警戒を解かずに、先に進み出したマラールの後に続く。老いぼれが前に出ると先程言っていた通りにマラールはまず自分が盾となるつもりらしい…
「おお!!これは!!」
先を行くマラールが思わず、と言う様な声を出す。
「何があったのだ!?先生!」
レギル王子もマラールの横に立ち前方を確認する。マラールの視線の先には、あのこんもりとした物が静かに鎮座している。岩、にしては綺麗な丸みを帯びて、艶やかだ。形は卵にも似ていると言えば似ているが、こんなに大きな卵をレギル王子は今まで見たことなどない。大人の男の腰ほどはあろうそれは、乳白色の艶やかな光を放っている。
「卵……王子!!龍の卵ですぞ!!!」
マラールが興奮した声を出す。今まで古書にしか記されていなかった龍の卵。成体を見つけるよりも尚も難しく龍が飛び交うその時代にも見られるのは非常に希少な物であったと記されていた物だ。
「卵…これは龍の卵ですか?」
「おお、文献で見た通りだ!なんと、美しい
!」
卵………やっと見つけた龍が卵…確かにこれは見た事もない程美しい輝きで、きっと中の龍もそれはそれは美しいだろうと思わせる程のものだ。しかし、探しているのは卵ではない。天変地異に干渉できる力を持つ龍だ…!
レギル王子は真剣な目をしてマラールに尋ねる。
「先生…この龍で、カシュクールを救えるとお思いですか?」
ゆっくりと王子の道を指し示してくれるので間違った方向には進んでいないと信じつつ蝶に促されるままに進んでいく。はっきり言って霧の中に迷い込んだ様な錯覚さえしてしまう程に蝶はレギル王子達に寄り添い離れようとしなかった。
「これで、良く迷いませんな……」
あまりの無数の蝶の数に辟易とさえして来たマラールの眉間にシワが寄る。
「本当に凄い。彼らはこんなに何処にいたんだろう?」
初めてこの谷を見たときには決してこんなにもの無数の蝶は絶対にいなかったのに……
「王の言葉に呼応して他の精霊が反応した様にも見えますな。」
「…うん……」
しばらく蝶との大行進は続いた。この広い谷の中にどれくらいの大きな龍が居るというのか……一歩進むたびにレギル王子の緊張も大きく膨らんでくる。
「王子、何かありました時は僭越ながらこの老いぼれが前に出ますぞ…後はよろしくお願いしましょう…」
落ち着いたマラールの声がすぐ後ろから響いてくる。
「先生……何を…」
「未来の若者を守り育てるのも魔術士の大事な使命ですからな。」
飄々と答えて行くマラールの声は悲観も恐怖も後悔も何も感じさせない落ち着き払った声だ。
「先生…!あなたは我が国カシュクールにとって大事な方だ。勿論、私にとってもです。その様な事態にならないように十分に気を付けてまいります…!」
蝶の道を歩いて行くたびにレギル王子は気を引き締める。先に祖国に立ったコアットとヨシットは無事にランダーン国を抜けられただろうか?国境警備隊に見つからないように上手く国境沿いに移動出来れば良いのだが…これから自分がどんな境遇に陥るかも分からないレギル王子だったが、無事にカシュクールに帰ると誓った仲間のことを今一度思い出してその誓いを心に刻む…
突然、目の前の蝶の群れが切れた…本当に切れた、としか言えないように突然と視界がバッと広がった。広がった先には大きな巨木。その周囲にヒラヒラと無数の蝶が散って行った。
"ここが…?"
龍がいると言う場所だろうか?禍々しい雰囲気などせず、先程と同じく清浄な空気。さっと辺りを見回しても龍と思しき巨体は無い。ので、つい周りにいる蝶達にここに龍がいるのか、と問うてみた。
"そう…ラン…"
"ほら…そこ!"
"寝てる、起きない…"
"話しかけても、答えない。"
先程よりもはっきりと、元気よく蝶達は答えた。そこ、と言うのだからには近くなのだろう。知らず、レギル王子は腰の剣に手を添えている。龍目掛けて抜刀など最早自殺行為でしかない様に思われるが、レギル王子とて剣術を磨き上げて来た手前、身を守ろうとすればやはり腰の剣に無意識に手が行く。
「先生…如何やらここのようです…が……」
「ふむ……」
囲んでいた蝶達はお役目御免とばかりに上空目掛けて霧散して行った。ここが終着点であるのは間違いがない。
「どこでしょうか?もしや、地中に?」
そうであればどの様に探せば?蝶達は寝てると言った。ではどうやって起こせば?ゆっくりレギル王子とマラールは巨木が守る様にしている空間に入って行く…
上空には蝶たちの煌めきや輝きが優しい光を落としている。しかし、一部地表にも他と違う輝きを放つ場所があるのにレギル王子は気が付いた。
「先生!あの部分、光っています!」
巨木の根本近く少しこんもりとしている物が目に入る。そこだけが妙な艶やかさで輝いているのだ。
「行ってみますかな?王子。何やら手掛かりはあるかもしれませんぞ。」
「分かった、行こう!」
レギル王子は完全に警戒を解かずに、先に進み出したマラールの後に続く。老いぼれが前に出ると先程言っていた通りにマラールはまず自分が盾となるつもりらしい…
「おお!!これは!!」
先を行くマラールが思わず、と言う様な声を出す。
「何があったのだ!?先生!」
レギル王子もマラールの横に立ち前方を確認する。マラールの視線の先には、あのこんもりとした物が静かに鎮座している。岩、にしては綺麗な丸みを帯びて、艶やかだ。形は卵にも似ていると言えば似ているが、こんなに大きな卵をレギル王子は今まで見たことなどない。大人の男の腰ほどはあろうそれは、乳白色の艶やかな光を放っている。
「卵……王子!!龍の卵ですぞ!!!」
マラールが興奮した声を出す。今まで古書にしか記されていなかった龍の卵。成体を見つけるよりも尚も難しく龍が飛び交うその時代にも見られるのは非常に希少な物であったと記されていた物だ。
「卵…これは龍の卵ですか?」
「おお、文献で見た通りだ!なんと、美しい
!」
卵………やっと見つけた龍が卵…確かにこれは見た事もない程美しい輝きで、きっと中の龍もそれはそれは美しいだろうと思わせる程のものだ。しかし、探しているのは卵ではない。天変地異に干渉できる力を持つ龍だ…!
レギル王子は真剣な目をしてマラールに尋ねる。
「先生…この龍で、カシュクールを救えるとお思いですか?」
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