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33 王城の舞踏会と亡国の姫君 2

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 夢の様だと、例えてもいいだろうか……

 今まで見た事も無い様な馬車の数々…その外装でさえも、各々趣向を凝らしている所があって見ているだけでも面白いったらない。カクル家の馬車の大きさを超えてくる物は無かったが、洗練されたデザインと装飾に飾られた馬車だけを見ても流石にここは王都であると思わされる。田舎のトラトでは見られない物が定刻迫り来る王城前にワンサカと集まって来るのだ。

 確かサラータは緊張していたはず。朝から浴場に押し込められて全身を磨かれ、香油を塗り込められればマッサージにと全身のお手当てを受けて夢心地になった反面、刻々と国王の前に出なければいけないという重圧も重くのしかかって来た。考えてみれば考える程ここにいるのがあり得ないことの様で、石のように固まってきたサラータを侍女のレイユがバルコニーへと誘ったのだ。

 部屋のバルコニーからは城の正面が良く見える。ここから、幻想的な灯りに映し出された馬車を見物しているのは楽しいものだった。その時サラータはあることに気がつく。ほとんどと言っていいほど、貴族の女性達は見なりを整えた紳士に手を引かれエスコートされて城の中へ入って来る。夜会でダンスもあるだろうから勿論の事パートナーは必要なんだと分かるのだが…

「あの、レイユ…?」

「はい。御用でございますか?お嬢様。」

「あの方達…」

「あぁ、今晩国王にお招きに預かっている貴族の方々ですわね?」

「えぇ、皆さんパートナーと一緒なの?」

「そうですね。正式な夜会ですから。」

「…どうしましょう?私にパートナーは居ないわ……は!そうだ!お父様達は?あ、でも貴族じゃないから……」

 一縷の望みをかけて父を思い出したのだが、そもそも父は商人だ。招待すらされていないだろう…

「ご安心ください。お嬢様。そんな方もたまにはいるのです。」

「そうなの?」

「はい。パートナーが居ない、都合が悪いというそんな方の為にちゃんと別の手立てがございます。」

「あ、そうなんだ……」

 ホッとため息が出た。パートナー同伴の所に一人だけで入ったら嫌な目立ち方にしかならないからだ。

「どの様な手立てがあるの?」

「単純ですわ。他に余った方とパートナーを組んで貰うんですわ…!」

 理解は出来るけれど、見る所一人で入って来る招待客はいなさそうなのだが…

「どなたか、おられるかしら?」

「大丈夫ですわ…!ご心配なさらずにお待ちください。」

 自信満々にニッコリと微笑む侍女レイユ。彼女もしっかりとした働きをしているので信頼はできるし、気休めを話しているのではないだろうけど…誰がパートナーになるのか知っておかないとそれも不安だ。

「ルシー…は…?」

 そういえば今日はまだルシーを見ていない。今日は仕事だろうか?

「申し訳ありません。お嬢様。ルシー様はどうしても外す事のできない仕事が入ってしまいまして…」

 そうよね…仕方ないわ……
 些か不安は膨らんでくるが我儘なんて言えるものではなかった。
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