15 / 74
15 ルシーの婚約者 1
しおりを挟む
「そう言えば、ルシーのお相手の方はどなたなの?」
カザラント子爵邸、中庭に面したテラスでカザラント老婦人カレンがお茶とお菓子をテーブルに並べて待っていてくれた。既にカザラント老モルトにカクル家夫妻はテーブルに付いている。淹れたてのお茶を受け取りながらサラータは疑問を口にした。ここに来るまで、両親にも問うのを忘れていたほどにサラータは浮かれていた様だ。
今更の様な質問なのだが………
「………グッ……」
先にお茶を受け取り、口にしていたカザラント子爵キュリオがくぐもった声を出す。
「……?」
お茶が喉に引っかかった?そんな粗相を子爵がするのかしら?なんて事を考えながら、サラータはルシーの顔を見る。ルシーはゆっくりとお茶を堪能した後にニッコリと極上の笑みを向けてくれた。
ホンワカ、というかきっと世の男性が見たらウットリとしてしまいそうなほど整った美しいルシーの笑み…思わずサラータもニッコリと微笑み返す。ここだけを見たならば、美女二人の満面の笑みが見れて周りの人々は眼福ものだろう。当のサラータはそんなルシーの大好きな笑顔を見れるだけで幸せで満足なのだ。
「フフ…サラ、会ってみたい?」
「まぁ!勿論じゃない!その為に、お二人の結婚をお祝いする為に来たのだもの…!」
「そうね…そうよね?じゃあ、明日の昼城内にいらっしゃいな…?」
「え?お城に?……え?」
お相手はどこの誰です、という返答を期待していたサラータだが、思いも寄らぬ城への登城……
「いえ待って!私は一般人よ?いくら商人の娘と言っても仕事で行くのでは無いし。お城へなんて入れるわけないじゃない?」
「ウフフ…それが入れるの…!数日後には私の結婚式でしょう?だから高位の方がその前に独身最後のお茶会をしましょうってお誘いくださったのよ。」
高位の方とはどなただろうか?サラータの顔には疑問しか浮かばない。
「や、それじゃあ、もっと駄目じゃ無いの?そんな方がお呼びくださるなら招待されていない者が紛れ込むなんて事出来ないわよね?」
行き先は何と言っても城内、だ。腹黒いことがないと言ってもただの市民が入れる訳がない。警備だって万全だろうし、忍び込むことすら無理だろう。
「普通はね?でも、その方がお誘いくださったのよ?遠くから来るお友達もご一緒にって…どう?」
「どうって……見れる物なら、お城の中を見てみたいけど……」
高位の方々が集まるならば、観光気分でなんて行けないだろうし、いくらマナーは習得していると言っても、サラータには不安しかない………
「ホホ、大丈夫よサラ…ほらここに…!」
カレンがスッと助け舟を出してくれた。
「これは招待状なのよ。ちゃんとサラの名前が書かれているでしょう?あちらの方はもうきちんと何方を呼ぶべきか把握なさっているわ。」
カレンから差し出されたものは招待状…差出人にはルシュルト・クルとある。
「………?」
「そのお名に心当たりは?」
初めの一声を発した後は、静かにお茶を楽しんでいたであろうキュリオが首を傾げるサラータに静かに問いかけて来た。
「……いいえ、存じません。」
両親の顔を見ても皆神妙な感じで、どうやらどなたか分かっている?
「その方がサラータ嬢を城に呼ばれている方ですよ。」
キュリオは切長の瞳が冷たく光っていたらかなりの迫力を醸し出す美丈夫だと思う。けれど、今は労わる様な優しい瞳でサラータの瞳をしっかりと見ながらそう告げた。
カザラント子爵邸、中庭に面したテラスでカザラント老婦人カレンがお茶とお菓子をテーブルに並べて待っていてくれた。既にカザラント老モルトにカクル家夫妻はテーブルに付いている。淹れたてのお茶を受け取りながらサラータは疑問を口にした。ここに来るまで、両親にも問うのを忘れていたほどにサラータは浮かれていた様だ。
今更の様な質問なのだが………
「………グッ……」
先にお茶を受け取り、口にしていたカザラント子爵キュリオがくぐもった声を出す。
「……?」
お茶が喉に引っかかった?そんな粗相を子爵がするのかしら?なんて事を考えながら、サラータはルシーの顔を見る。ルシーはゆっくりとお茶を堪能した後にニッコリと極上の笑みを向けてくれた。
ホンワカ、というかきっと世の男性が見たらウットリとしてしまいそうなほど整った美しいルシーの笑み…思わずサラータもニッコリと微笑み返す。ここだけを見たならば、美女二人の満面の笑みが見れて周りの人々は眼福ものだろう。当のサラータはそんなルシーの大好きな笑顔を見れるだけで幸せで満足なのだ。
「フフ…サラ、会ってみたい?」
「まぁ!勿論じゃない!その為に、お二人の結婚をお祝いする為に来たのだもの…!」
「そうね…そうよね?じゃあ、明日の昼城内にいらっしゃいな…?」
「え?お城に?……え?」
お相手はどこの誰です、という返答を期待していたサラータだが、思いも寄らぬ城への登城……
「いえ待って!私は一般人よ?いくら商人の娘と言っても仕事で行くのでは無いし。お城へなんて入れるわけないじゃない?」
「ウフフ…それが入れるの…!数日後には私の結婚式でしょう?だから高位の方がその前に独身最後のお茶会をしましょうってお誘いくださったのよ。」
高位の方とはどなただろうか?サラータの顔には疑問しか浮かばない。
「や、それじゃあ、もっと駄目じゃ無いの?そんな方がお呼びくださるなら招待されていない者が紛れ込むなんて事出来ないわよね?」
行き先は何と言っても城内、だ。腹黒いことがないと言ってもただの市民が入れる訳がない。警備だって万全だろうし、忍び込むことすら無理だろう。
「普通はね?でも、その方がお誘いくださったのよ?遠くから来るお友達もご一緒にって…どう?」
「どうって……見れる物なら、お城の中を見てみたいけど……」
高位の方々が集まるならば、観光気分でなんて行けないだろうし、いくらマナーは習得していると言っても、サラータには不安しかない………
「ホホ、大丈夫よサラ…ほらここに…!」
カレンがスッと助け舟を出してくれた。
「これは招待状なのよ。ちゃんとサラの名前が書かれているでしょう?あちらの方はもうきちんと何方を呼ぶべきか把握なさっているわ。」
カレンから差し出されたものは招待状…差出人にはルシュルト・クルとある。
「………?」
「そのお名に心当たりは?」
初めの一声を発した後は、静かにお茶を楽しんでいたであろうキュリオが首を傾げるサラータに静かに問いかけて来た。
「……いいえ、存じません。」
両親の顔を見ても皆神妙な感じで、どうやらどなたか分かっている?
「その方がサラータ嬢を城に呼ばれている方ですよ。」
キュリオは切長の瞳が冷たく光っていたらかなりの迫力を醸し出す美丈夫だと思う。けれど、今は労わる様な優しい瞳でサラータの瞳をしっかりと見ながらそう告げた。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
貴方の子どもじゃありません
初瀬 叶
恋愛
あぁ……どうしてこんなことになってしまったんだろう。
私は眠っている男性を起こさない様に、そっと寝台を降りた。
私が着ていたお仕着せは、乱暴に脱がされたせいでボタンは千切れ、エプロンも破れていた。
私は仕方なくそのお仕着せに袖を通すと、止められなくなったシャツの前を握りしめる様にした。
そして、部屋の扉にそっと手を掛ける。
ドアノブは回る。いつの間にか
鍵は開いていたみたいだ。
私は最後に後ろを振り返った。そこには裸で眠っている男性の胸が上下している事が確認出来る。深い眠りについている様だ。
外はまだ夜中。月明かりだけが差し込むこの部屋は薄暗い。男性の顔ははっきりとは確認出来なかった。
※ 私の頭の中の異世界のお話です
※相変わらずのゆるゆるふわふわ設定です。ご了承下さい
※直接的な性描写等はありませんが、その行為を匂わせる言葉を使う場合があります。苦手な方はそっと閉じて下さると、自衛になるかと思います
※誤字脱字がちりばめられている可能性を否定出来ません。広い心で読んでいただけるとありがたいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる