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15 ルシーの婚約者 1

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「そう言えば、ルシーのお相手の方はどなたなの?」

 カザラント子爵邸、中庭に面したテラスでカザラント老婦人カレンがお茶とお菓子をテーブルに並べて待っていてくれた。既にカザラント老モルトにカクル家夫妻はテーブルに付いている。淹れたてのお茶を受け取りながらサラータは疑問を口にした。ここに来るまで、両親にも問うのを忘れていたほどにサラータは浮かれていた様だ。
今更の様な質問なのだが………

「………グッ……」

 先にお茶を受け取り、口にしていたカザラント子爵キュリオがくぐもった声を出す。

「……?」

 お茶が喉に引っかかった?そんな粗相を子爵がするのかしら?なんて事を考えながら、サラータはルシーの顔を見る。ルシーはゆっくりとお茶を堪能した後にニッコリと極上の笑みを向けてくれた。

 ホンワカ、というかきっと世の男性が見たらウットリとしてしまいそうなほど整った美しいルシーの笑み…思わずサラータもニッコリと微笑み返す。ここだけを見たならば、美女二人の満面の笑みが見れて周りの人々は眼福ものだろう。当のサラータはそんなルシーの大好きな笑顔を見れるだけで幸せで満足なのだ。

「フフ…サラ、会ってみたい?」

「まぁ!勿論じゃない!その為に、お二人の結婚をお祝いする為に来たのだもの…!」

「そうね…そうよね?じゃあ、明日の昼城内にいらっしゃいな…?」

「え?お城に?……え?」  

 お相手はどこの誰です、という返答を期待していたサラータだが、思いも寄らぬ城への登城……

「いえ待って!私は一般人よ?いくら商人の娘と言っても仕事で行くのでは無いし。お城へなんて入れるわけないじゃない?」

「ウフフ…それが入れるの…!数日後には私の結婚式でしょう?だから高位の方がその前に独身最後のお茶会をしましょうってお誘いくださったのよ。」

 高位の方とはどなただろうか?サラータの顔には疑問しか浮かばない。

「や、それじゃあ、もっと駄目じゃ無いの?そんな方がお呼びくださるなら招待されていない者が紛れ込むなんて事出来ないわよね?」

 行き先は何と言っても城内、だ。腹黒いことがないと言ってもただの市民が入れる訳がない。警備だって万全だろうし、忍び込むことすら無理だろう。

「普通はね?でも、その方がお誘いくださったのよ?遠くから来るお友達もご一緒にって…どう?」

「どうって……見れる物なら、お城の中を見てみたいけど……」

 高位の方々が集まるならば、観光気分でなんて行けないだろうし、いくらマナーは習得していると言っても、サラータには不安しかない………

「ホホ、大丈夫よサラ…ほらここに…!」

 カレンがスッと助け舟を出してくれた。
 
「これは招待状なのよ。ちゃんとサラの名前が書かれているでしょう?あちらの方はもうきちんと何方を呼ぶべきか把握なさっているわ。」

 カレンから差し出されたものは招待状…差出人にはルシュルト・クルとある。

「………?」

「そのお名に心当たりは?」

 初めの一声を発した後は、静かにお茶を楽しんでいたであろうキュリオが首を傾げるサラータに静かに問いかけて来た。

「……いいえ、存じません。」

 両親の顔を見ても皆神妙な感じで、どうやらどなたか分かっている?

「その方がサラータ嬢を城に呼ばれている方ですよ。」

 キュリオは切長の瞳が冷たく光っていたらかなりの迫力を醸し出す美丈夫だと思う。けれど、今は労わる様な優しい瞳でサラータの瞳をしっかりと見ながらそう告げた。









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