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46 番外編 それぞれの精一杯 *
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「み~~そえ?」
忙しくバタバタと朝の支度をしている時間帯に、間伸びしたのんびりな掛け声が宝利家のリビングに響いている。
「ねぇ、みそえちゃ~~ん?」
「んもぅ!何?うるさいよ、蒼梧!!楓を待ってるんだったらまだ二階だから!」
両親共に共働きな宝利家では忙しい朝の時間を使ってみそえが2人分の弁当を詰めているのだ。ただでさえ女子高生のみそえには身支度っていう朝の大仕事が残っているのに、何を考えてか朝も早くから蒼梧が宝利家へ襲来して来ている。
もう、敵襲と言ってもいいと思う。この朝のクソ忙しい時間に、女ったらし全開の甘えモードで人を呼びつけるんだから!
頼みの綱の楓といえばこの所お付き合いする人ができたとかで、まだ誰かは秘密みたいなんだけど、ただでさえ家にいる時間が減って置いてきぼりになった様な変な寂しさを感じてはイライラしていた所なのに…
朝からこれだ……!
「ねぇ~~俺にも作ってよ、弁当~~」
何度断ってもこれである。
「ちょっと冗談でしょう?あんたん所お手伝いさん沢山いるじゃん?何でわざわざうちに頼むの?」
もぅ~~!馬鹿な事言ってないで楓を起こして来て!前はこんなんじゃなかったのに…そんなに手作りのお弁当が食べたければ沢山いる彼女達に作って貰えばいいじゃない…!
「え~だってみそえのと味わい違うし~俺、みそえ、食べたい。」
は?
ダン!
台所に響くのはデザートのリンゴを真っ二つに叩き切った包丁の音。
「何て言った…?蒼梧…ん?」
言うに事欠いてそれを言う?順番違うよね!?
「だから~みそ「却下!!」」
今日も蒼梧は最後まで言わせてもらえないらしい……
「ん………」
柔らかくて暖かい……
「んぅ……うんん……」
少しだけ息苦しく感じて、顔を背けようとしても、程よい力で抑えられた頭を動かすことができなくて…せめてもの抗議の声を楓矢は上げる。
「ふはっ…ちょ…くる…し…」
そう、苦しい…今の今まで深いディープキスをガッツリとされていたことと、何故か体勢と腹の内側から更に楓矢を圧迫してくる物がある。
「目が、覚めたか?」
色っぽい低い声が耳元で聞こえてきて、泡立つ感覚にふっと意識が戻ってきた。
「あぁ…ん…ぅあ…ぁっ…!」
と、同時に信じられない程の快感が繋がった体の奥から駆け登ってきた。
入ってる…?あ……れ…?
ぼやけてる楓矢の頭では今自分がどんな事になっているか理解できていないかもしれない。いつもの様に刀貴に抱かれ、途中まではいつもと同じ様に気持ちが良かったと思う。
けど、今日は……なぜだか……
普段から何かしてあげたいとどうしても思ってしまうから、ただ一緒に生きて死んで欲しいなんて殊勝なことしか刀貴は言わないから…
だから、だから………
フルセットで楓矢から手を出したのがまずかった…のと、みそえの機嫌が悪くて、もっと寝ていたかったのに早く起こされすぎて寝不足で、スタミナ不足……
「待っ……て……っ」
頼む、少し止まってくれって…
出した声が余りにも掠れてて自分がビックリした。
「駄目だ…あんな、可愛い事しておいて…」
完全に出来上がってしまってる刀貴に、静止の言葉なんて意味ないって、良く覚えておこう。
可愛い事……?お前にとってはだろ?
勉強も家事も完璧な刀貴に対して出来ることって、まぁ、まず無いわけで…知り得る知識を総動員して、俺の精一杯を仕掛けてみた。途中からは自分の頭が飛んでてもう何をしてきたなんか覚えていないけど…………
いつもの様に学校帰りに泊まりに行って、一緒に夕飯作って食べて、風呂に入って…
一緒に生きるって約束したから、どんな所でも好きに出来ると言うか、盛って来るのかとか、ちょっと身構えていたりしたんだけど、意外にも刀貴以外とは経験した事ないけど、普通のお家デートだったと思う…
だから俺の方から仕掛けたさ。さあ寝ましょうと、布団を敷いた時に…
刀貴の頬に触れる様なキスをして……それだけでも今にも溶けそうになるくらい嬉しそうに刀貴は微笑むんだ…
俺に手を添えてこようとした所を、ガッと防いで押しとどめて…
「今日は、俺がする…!」
いつも始まりは刀貴からだ。だからこっちから求めてやる。今までの分、何も返す事ができないから、お前だけが求めてるんじゃないって、俺にもお前が必要だって…全身を使って、わからせてやろうと思って…
頬の次は唇………暖かい、柔らかな刀貴の唇。キスのテクニックなんて無いけどな…刀貴としたのが初めてだし。だから、やられて、気持ち良かったと覚えているやり方で、やるしか無い。軽く噛んだり、舐めたり、吸ったり…そんな事をしてると刀貴は自分から舌を絡めてこようとする。そんな時は一旦引いて、フリフリと首を振る。
やるって言ったろ…?
少しだけ、視線が色っぽくなる刀貴の瞳に吸い込まれそうになるけど、踏ん張る。
続きのキスをして、刀貴を押し倒して、耳やら首筋やら、いつも刀貴が辿る様に舌を這わす…
これが気持ち良いのか、喜んで貰えているのかは、時々刀貴の表情を見て……見て……って、なんて顔してんだよ…!いつも冷静沈着な刀貴が、頬を赤らめ、少し眉根を寄せて、切なげに何かに耐える様に見つめ返してきてる…
ギュ………と、胸の奥が締め付けられる様になって、あぁ何でもしてやりてぇな…て想いに駆られるのはなんでだろ?
そっと刀貴の両頬を包み込んで思わずキスをする。
俺がするって言ったから…?
刀貴は喜んでキスを受け入れるだけで、自分からは手を出してこない。ただ、唇や舌に触れて来る楓矢にされるがままに、優しく、甘く、ウットリとそれに答え続けている。
「はぁ……」
思わず吐息が漏れる…普段ならもう既に、刀貴のペースで楓矢は身体のあちこちを弄られながら裸に剥かれているころだ。唇も身体も刀貴から与えられる快感をバッチリと覚えていて。だからいつもより刺激が足りな過ぎて、反応して立ち上がってしまってる肉棒を思わず刀貴の大腿に擦り付けてしまった。
「楓矢……」
目を細め色っぽく刀貴に見詰められるとそのまま縋りつきたくなる。
が、俺がやる…その言葉通り今夜は楓矢は行動する。
刀貴の身体を辿りながら、辿々しく服を脱がせ、楓矢も服も脱いだ。準備していたローションで手指を潤し楓矢は自分の後口へと持っていく。ただ自分で弄ってるだけだとそっちに意識が持って行かれて居た堪れなくて……思わず刀貴の肉棒を口に含んだ。
「ん……」
耐える様な刀貴のくぐもった声と、ピクリと反応するそれに、こっちまで更に興奮して来て、もう自分の前がガチガチになってるのが少し自分でも信じられない…
「楓矢…」
そっと…撫でる様に刀貴は楓矢の髪を掴む。楓矢が自分ですると言ったからにはそれ以上手を出してこないつもりらしいが、堪えようもなく、愛しそうに何度も何度も撫でて来る。
「ん…」
チュウ…チュク…
舐めしゃぶる音が生々しくて、刀貴の熱い物を奥まで入れると苦しくて、楓矢からもつい声が漏れた。
「もう…いいよ…」
少し息が上がって来ている刀貴が優しく楓矢の頭をあげる。
何が、もういいだ…そんな顔、してるくせに………
ずっと、ずっと待ち続けたんだろ?欲しくて欲しくて待ち続けてたんだろ?だったら好きにすればいいのに。絶対に無理な事、してこないんだ…こっちが求めない限りさ……
「もう、いいから…楓矢…」
ガッチガチに立ち上がってる刀貴の物をまだ掴んだまま、自分の後ろから指を抜いた。
欲しいって…こういうのか……
刀貴を押し倒して楓矢はその上に跨る。
欲しい…刀貴が、他の誰かじゃなくて刀貴が欲しい…ゆうらの気持ちだけじゃなく、楓矢自身の気持ちが、バッチリ重なって同じ重みで刀貴を求めてる。
もう…分かんね……こんなグチャグチャな欲の中に、こいつ、一人でいたのかよ…
頭が沸騰する前に、楓矢は一気に腰を落とした。
「あぁ…ぁっ!」
その刺激で楓矢は白濁を撒き散らす。
「ごめ…いっ…ちゃ……」
「楓矢…楓矢……楓……」
何度も呼ばれる低い声に、何故だか涙がポロポロと溢れて来た。もう、一人じゃないって、一人にしないって…思い切り刀貴に抱きついて楓矢は言う。
「ここ、いるから…ずっと……も…一人に、しないから…」
深く繋がっていて、苦しくて、感情も昂って嗚咽まみれで、ぐちゃぐちゃで…大好きと、愛してるが溢れて止まらなくて…なんて言って刀貴を慰めたらいいのかわからない。
「ああ…楓矢…」
「好きだし、ちゃんと…愛してるし…」
「うん。わかってる…俺はな…お前が居てくれれば、それで良かった…こうして、触れて、共に生きられて…夢の様だ……」
「あっ……夢じゃ、ないって…!ここに、居るだろ!」
悔しくて、グッと腰を揺らす。
「っ…あぁ…お前はここにいる。俺の手の中にな…はっ…動くぞ?」
「え…待って…!俺が…あぁ!」
「何を言う。ここまでしてくれたのに、愛する妻に返せぬ夫にするつもりか?」
「妻じゃねぇ…し!」
射精後の刺激もまだ治らず、刀貴が少し動いただけで身体中がビクリと反応してしまうのに、刀貴は酷く嬉しそうな顔をして、すまん、と一つ呟いてから、楓矢の腰をしっかりと掴んだ。
「お前が、愛してくれている様に、俺もお前を愛しているんだ。こんなに、してもいいと言われている状況で、男が我慢できると思うなよ?」
「え…ぁっ!ちょ…はぅっん…まっ!やぁ!」
「や、ではないだろう?俺は甲斐性のない男ではないぞ?」
その後、気が失うまで、いや、気を失ってからも刀貴に可愛がられていたのを知ったのは2回目に気を失って、目を覚ました後だった…………
「…………うごげなぃ……」
ついでに声もでねぇ………
「いいよ、楓矢は寝てて。全部俺がしよう。」
冗談でなく、指一本も動かしたくない、動けない…
「み…ず……」
喉がカラカラで声が出ない…
刀貴は冷たい水を入れて来てくれる。文字通り指を動かすのも精一杯の楓矢を片手でヒョイと起こしてから、口移しで飲ませてくれる。冷たくて、久しぶりの水は甘くて、刀貴の唇も柔らかくて優しくて……
「…ちょ、タンマ……!」
これ以上は無理なのに、なんならこれから致しましょう的な雰囲気のあるキスをしてこないでくれ!
「もっと飲むか?」
なんでそんなにノリノリなの?
動かない腕上げて、必死に楓矢は首を振り続ける。
「自分で飲むよ…」
「動かせないのに?」
「誰のせいだ…?」
「楓矢と俺……」
堂々とそんなことを言って、刀貴は楓矢にキスの雨を降らす。
「も、本当に無理だから…」
刀貴のこんな攻撃も躱せないくらいヘロヘロなのに…
「分かっている。腹も減っただろう?このまま食うか?」
「まさか、それも口移し?」
雛?雛かよ、俺…
「それでもいいが、楓矢が嫌なんだろう?」
「当たり前だろ?飯は普通に食いたい…!」
腹は減ったし、刀貴の飯うまい。けど、こんな子供扱いみたいなのは違うと思う。
「なんでこんなに構うん?」
極限まで体力を使いまくったけど、休めば一人でも大丈夫だ。休めばだけど。なのに刀貴はめちゃくちゃ世話したがるし…
「俺が、ゆうらにしてやりたかった事かな……いなくなってから、後悔してもしたりなかった…だから、許せ……」
「…………」
許せと言った刀貴の顔が、これ以上ないってほどに幸せそうで…花が咲いた様に艶やかで…もう、何も言えない……
「……刀貴、幸せ…?」
つい、ポロリと出てきた言葉。
「ああ、この上もなく…楓矢、愛してる…」
ああ、きっとこいつは一生こうだ。一生こうやってさ、言い続けてくれるんだろうな…そんで、俺もこんな蕩ける顔してさ……な~んだ…俺達似た物夫婦になれんじゃん。
「ふふ…俺もだよ…!」
精一杯、動かない両手を持ち上げて刀貴に抱きついた。
------------------
続編、リクエストを頂いたので、書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです!
読んでくださってありがとうございました!
忙しくバタバタと朝の支度をしている時間帯に、間伸びしたのんびりな掛け声が宝利家のリビングに響いている。
「ねぇ、みそえちゃ~~ん?」
「んもぅ!何?うるさいよ、蒼梧!!楓を待ってるんだったらまだ二階だから!」
両親共に共働きな宝利家では忙しい朝の時間を使ってみそえが2人分の弁当を詰めているのだ。ただでさえ女子高生のみそえには身支度っていう朝の大仕事が残っているのに、何を考えてか朝も早くから蒼梧が宝利家へ襲来して来ている。
もう、敵襲と言ってもいいと思う。この朝のクソ忙しい時間に、女ったらし全開の甘えモードで人を呼びつけるんだから!
頼みの綱の楓といえばこの所お付き合いする人ができたとかで、まだ誰かは秘密みたいなんだけど、ただでさえ家にいる時間が減って置いてきぼりになった様な変な寂しさを感じてはイライラしていた所なのに…
朝からこれだ……!
「ねぇ~~俺にも作ってよ、弁当~~」
何度断ってもこれである。
「ちょっと冗談でしょう?あんたん所お手伝いさん沢山いるじゃん?何でわざわざうちに頼むの?」
もぅ~~!馬鹿な事言ってないで楓を起こして来て!前はこんなんじゃなかったのに…そんなに手作りのお弁当が食べたければ沢山いる彼女達に作って貰えばいいじゃない…!
「え~だってみそえのと味わい違うし~俺、みそえ、食べたい。」
は?
ダン!
台所に響くのはデザートのリンゴを真っ二つに叩き切った包丁の音。
「何て言った…?蒼梧…ん?」
言うに事欠いてそれを言う?順番違うよね!?
「だから~みそ「却下!!」」
今日も蒼梧は最後まで言わせてもらえないらしい……
「ん………」
柔らかくて暖かい……
「んぅ……うんん……」
少しだけ息苦しく感じて、顔を背けようとしても、程よい力で抑えられた頭を動かすことができなくて…せめてもの抗議の声を楓矢は上げる。
「ふはっ…ちょ…くる…し…」
そう、苦しい…今の今まで深いディープキスをガッツリとされていたことと、何故か体勢と腹の内側から更に楓矢を圧迫してくる物がある。
「目が、覚めたか?」
色っぽい低い声が耳元で聞こえてきて、泡立つ感覚にふっと意識が戻ってきた。
「あぁ…ん…ぅあ…ぁっ…!」
と、同時に信じられない程の快感が繋がった体の奥から駆け登ってきた。
入ってる…?あ……れ…?
ぼやけてる楓矢の頭では今自分がどんな事になっているか理解できていないかもしれない。いつもの様に刀貴に抱かれ、途中まではいつもと同じ様に気持ちが良かったと思う。
けど、今日は……なぜだか……
普段から何かしてあげたいとどうしても思ってしまうから、ただ一緒に生きて死んで欲しいなんて殊勝なことしか刀貴は言わないから…
だから、だから………
フルセットで楓矢から手を出したのがまずかった…のと、みそえの機嫌が悪くて、もっと寝ていたかったのに早く起こされすぎて寝不足で、スタミナ不足……
「待っ……て……っ」
頼む、少し止まってくれって…
出した声が余りにも掠れてて自分がビックリした。
「駄目だ…あんな、可愛い事しておいて…」
完全に出来上がってしまってる刀貴に、静止の言葉なんて意味ないって、良く覚えておこう。
可愛い事……?お前にとってはだろ?
勉強も家事も完璧な刀貴に対して出来ることって、まぁ、まず無いわけで…知り得る知識を総動員して、俺の精一杯を仕掛けてみた。途中からは自分の頭が飛んでてもう何をしてきたなんか覚えていないけど…………
いつもの様に学校帰りに泊まりに行って、一緒に夕飯作って食べて、風呂に入って…
一緒に生きるって約束したから、どんな所でも好きに出来ると言うか、盛って来るのかとか、ちょっと身構えていたりしたんだけど、意外にも刀貴以外とは経験した事ないけど、普通のお家デートだったと思う…
だから俺の方から仕掛けたさ。さあ寝ましょうと、布団を敷いた時に…
刀貴の頬に触れる様なキスをして……それだけでも今にも溶けそうになるくらい嬉しそうに刀貴は微笑むんだ…
俺に手を添えてこようとした所を、ガッと防いで押しとどめて…
「今日は、俺がする…!」
いつも始まりは刀貴からだ。だからこっちから求めてやる。今までの分、何も返す事ができないから、お前だけが求めてるんじゃないって、俺にもお前が必要だって…全身を使って、わからせてやろうと思って…
頬の次は唇………暖かい、柔らかな刀貴の唇。キスのテクニックなんて無いけどな…刀貴としたのが初めてだし。だから、やられて、気持ち良かったと覚えているやり方で、やるしか無い。軽く噛んだり、舐めたり、吸ったり…そんな事をしてると刀貴は自分から舌を絡めてこようとする。そんな時は一旦引いて、フリフリと首を振る。
やるって言ったろ…?
少しだけ、視線が色っぽくなる刀貴の瞳に吸い込まれそうになるけど、踏ん張る。
続きのキスをして、刀貴を押し倒して、耳やら首筋やら、いつも刀貴が辿る様に舌を這わす…
これが気持ち良いのか、喜んで貰えているのかは、時々刀貴の表情を見て……見て……って、なんて顔してんだよ…!いつも冷静沈着な刀貴が、頬を赤らめ、少し眉根を寄せて、切なげに何かに耐える様に見つめ返してきてる…
ギュ………と、胸の奥が締め付けられる様になって、あぁ何でもしてやりてぇな…て想いに駆られるのはなんでだろ?
そっと刀貴の両頬を包み込んで思わずキスをする。
俺がするって言ったから…?
刀貴は喜んでキスを受け入れるだけで、自分からは手を出してこない。ただ、唇や舌に触れて来る楓矢にされるがままに、優しく、甘く、ウットリとそれに答え続けている。
「はぁ……」
思わず吐息が漏れる…普段ならもう既に、刀貴のペースで楓矢は身体のあちこちを弄られながら裸に剥かれているころだ。唇も身体も刀貴から与えられる快感をバッチリと覚えていて。だからいつもより刺激が足りな過ぎて、反応して立ち上がってしまってる肉棒を思わず刀貴の大腿に擦り付けてしまった。
「楓矢……」
目を細め色っぽく刀貴に見詰められるとそのまま縋りつきたくなる。
が、俺がやる…その言葉通り今夜は楓矢は行動する。
刀貴の身体を辿りながら、辿々しく服を脱がせ、楓矢も服も脱いだ。準備していたローションで手指を潤し楓矢は自分の後口へと持っていく。ただ自分で弄ってるだけだとそっちに意識が持って行かれて居た堪れなくて……思わず刀貴の肉棒を口に含んだ。
「ん……」
耐える様な刀貴のくぐもった声と、ピクリと反応するそれに、こっちまで更に興奮して来て、もう自分の前がガチガチになってるのが少し自分でも信じられない…
「楓矢…」
そっと…撫でる様に刀貴は楓矢の髪を掴む。楓矢が自分ですると言ったからにはそれ以上手を出してこないつもりらしいが、堪えようもなく、愛しそうに何度も何度も撫でて来る。
「ん…」
チュウ…チュク…
舐めしゃぶる音が生々しくて、刀貴の熱い物を奥まで入れると苦しくて、楓矢からもつい声が漏れた。
「もう…いいよ…」
少し息が上がって来ている刀貴が優しく楓矢の頭をあげる。
何が、もういいだ…そんな顔、してるくせに………
ずっと、ずっと待ち続けたんだろ?欲しくて欲しくて待ち続けてたんだろ?だったら好きにすればいいのに。絶対に無理な事、してこないんだ…こっちが求めない限りさ……
「もう、いいから…楓矢…」
ガッチガチに立ち上がってる刀貴の物をまだ掴んだまま、自分の後ろから指を抜いた。
欲しいって…こういうのか……
刀貴を押し倒して楓矢はその上に跨る。
欲しい…刀貴が、他の誰かじゃなくて刀貴が欲しい…ゆうらの気持ちだけじゃなく、楓矢自身の気持ちが、バッチリ重なって同じ重みで刀貴を求めてる。
もう…分かんね……こんなグチャグチャな欲の中に、こいつ、一人でいたのかよ…
頭が沸騰する前に、楓矢は一気に腰を落とした。
「あぁ…ぁっ!」
その刺激で楓矢は白濁を撒き散らす。
「ごめ…いっ…ちゃ……」
「楓矢…楓矢……楓……」
何度も呼ばれる低い声に、何故だか涙がポロポロと溢れて来た。もう、一人じゃないって、一人にしないって…思い切り刀貴に抱きついて楓矢は言う。
「ここ、いるから…ずっと……も…一人に、しないから…」
深く繋がっていて、苦しくて、感情も昂って嗚咽まみれで、ぐちゃぐちゃで…大好きと、愛してるが溢れて止まらなくて…なんて言って刀貴を慰めたらいいのかわからない。
「ああ…楓矢…」
「好きだし、ちゃんと…愛してるし…」
「うん。わかってる…俺はな…お前が居てくれれば、それで良かった…こうして、触れて、共に生きられて…夢の様だ……」
「あっ……夢じゃ、ないって…!ここに、居るだろ!」
悔しくて、グッと腰を揺らす。
「っ…あぁ…お前はここにいる。俺の手の中にな…はっ…動くぞ?」
「え…待って…!俺が…あぁ!」
「何を言う。ここまでしてくれたのに、愛する妻に返せぬ夫にするつもりか?」
「妻じゃねぇ…し!」
射精後の刺激もまだ治らず、刀貴が少し動いただけで身体中がビクリと反応してしまうのに、刀貴は酷く嬉しそうな顔をして、すまん、と一つ呟いてから、楓矢の腰をしっかりと掴んだ。
「お前が、愛してくれている様に、俺もお前を愛しているんだ。こんなに、してもいいと言われている状況で、男が我慢できると思うなよ?」
「え…ぁっ!ちょ…はぅっん…まっ!やぁ!」
「や、ではないだろう?俺は甲斐性のない男ではないぞ?」
その後、気が失うまで、いや、気を失ってからも刀貴に可愛がられていたのを知ったのは2回目に気を失って、目を覚ました後だった…………
「…………うごげなぃ……」
ついでに声もでねぇ………
「いいよ、楓矢は寝てて。全部俺がしよう。」
冗談でなく、指一本も動かしたくない、動けない…
「み…ず……」
喉がカラカラで声が出ない…
刀貴は冷たい水を入れて来てくれる。文字通り指を動かすのも精一杯の楓矢を片手でヒョイと起こしてから、口移しで飲ませてくれる。冷たくて、久しぶりの水は甘くて、刀貴の唇も柔らかくて優しくて……
「…ちょ、タンマ……!」
これ以上は無理なのに、なんならこれから致しましょう的な雰囲気のあるキスをしてこないでくれ!
「もっと飲むか?」
なんでそんなにノリノリなの?
動かない腕上げて、必死に楓矢は首を振り続ける。
「自分で飲むよ…」
「動かせないのに?」
「誰のせいだ…?」
「楓矢と俺……」
堂々とそんなことを言って、刀貴は楓矢にキスの雨を降らす。
「も、本当に無理だから…」
刀貴のこんな攻撃も躱せないくらいヘロヘロなのに…
「分かっている。腹も減っただろう?このまま食うか?」
「まさか、それも口移し?」
雛?雛かよ、俺…
「それでもいいが、楓矢が嫌なんだろう?」
「当たり前だろ?飯は普通に食いたい…!」
腹は減ったし、刀貴の飯うまい。けど、こんな子供扱いみたいなのは違うと思う。
「なんでこんなに構うん?」
極限まで体力を使いまくったけど、休めば一人でも大丈夫だ。休めばだけど。なのに刀貴はめちゃくちゃ世話したがるし…
「俺が、ゆうらにしてやりたかった事かな……いなくなってから、後悔してもしたりなかった…だから、許せ……」
「…………」
許せと言った刀貴の顔が、これ以上ないってほどに幸せそうで…花が咲いた様に艶やかで…もう、何も言えない……
「……刀貴、幸せ…?」
つい、ポロリと出てきた言葉。
「ああ、この上もなく…楓矢、愛してる…」
ああ、きっとこいつは一生こうだ。一生こうやってさ、言い続けてくれるんだろうな…そんで、俺もこんな蕩ける顔してさ……な~んだ…俺達似た物夫婦になれんじゃん。
「ふふ…俺もだよ…!」
精一杯、動かない両手を持ち上げて刀貴に抱きついた。
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続編、リクエストを頂いたので、書いてみました。
楽しんでいただけたら幸いです!
読んでくださってありがとうございました!
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凄くドキドキしながら読みました。二人のイチャラブ番外編なども読めたら嬉しいです☺これからも末永く幸せにすっと一緒に過ごして欲しい二人ですね。ドキドキする素敵なお話をありがとうございました。
朝倉真琴様、感想ありがとうございます。
楽しんで頂けましたら書いている方は幸せです😊
イチャラブ番外編ですね、只今執筆中が2件ありまして遅くなるかもしれませんが進めてみたいと思います👍
ありがとうございました。