43 / 46
43
しおりを挟む
「楓矢…」
「ん?何?」
「神主の所に行く前に、楓矢には見せて………嫌……」
腫れた顔を晒して出かけるのも憚られたから、あのまま2人とも公のお泊まり理由である映画鑑賞などをしてゴロゴロして過ごしていたのだ。ほやほやしながら映画を見てる時に刀貴が言いにくそうにポツリと呟いたのを聞き逃さなかったさ。
「んん?何を見せるって?」
代々山手家に伝わる家宝とか?ずっと生きてきたんだもんな。今では物珍しいものくらい何かありそうだしな…?
何だ何だと、ただ単に興味が勝って刀貴に擦り寄る。
「………」
なのに刀貴ときたら今までにない位、ムッとした様な考え込んでいる様な硬い表情をし出した。
「え、何?何か、聞いちゃいけないやつ?」
自分から言い出したんだから聞いちゃいけないも何もないもんだが、あまりにも刀貴の顔が真剣で……
「ん?いや、楓矢が悪いんじゃない……明日、挨拶に行こうって話していただろ?」
「あ、うん。蒼梧んとこな?」
「そう……俺には返さなくてはいけない物がある。が、お前を連れて行くべきかどうかまだ迷っている。」
「何で?蒼梧んとこなら赤ん坊の時から行ってんぞ?何を今更?」
なんなら刀貴と付き合い出すつい最近まで泊まりにも行っていた。
「楓矢、恨み言なら頼むからちゃんと俺に言え…」
優しく、本当に壊れ物みたいに撫でながら抱きしめられてキスまでされて…何も言えなくなる様な状況を作り出されたけど…本当なら聞かないでいた方が優しさなのかもしれないけど…
「2人で生きて行くんだろ?俺には背負わせてくんないの?」
ちょっと拗ねちゃうぞ?ここまできて出し惜しみはNGだ。もう言うことがないかさっきも確認しただろ、俺。
「楓矢………お前にはもう背負わせたくないんだ…本当はね……」
あぁ~~もう!
「言って良い?」
「うん?」
「妖刀…紫、だろ?」
あ、ちょっとびっくりした様な顔してやんの…人の顔を鳩まめって笑っただろ?フフフ…今度は俺の番…!
しめしめと思っていたところで思いがけないほど強い力で刀貴に抱きしめられた。
「知っていたのか…?」
「ん…知ってるって言うかさ…刀貴、生きてこれたの妖刀のおかげって言ってただろ?妖刀紫ったら神社の御神体じゃん?そんでお前が神社に返しに行くって言ったら、それしかねぇだろ?」
「そう…紫を返す……それが約束だ…」
「でもなんで紫、刀貴が持ってんの?ん?嫌、神社にあるんじゃねぇの?」
毎年祭事の時にその姿を公にしていなかったっけ?見るのも嫌だったからちゃんとしっかり見たことないんだけども………
「そう言う事にはなっている。」
「なってる?じゃ…」
「社にあるのはレプリカだ。」
「えぇぇ………俺、嫌だったんだけど?あの夢見始めてから神社に行くことがさ…祭事の時だって刀なんて見たくもなかったし…けど、偽物だったのかよ……ずっと?」
「そう、ずっと。これは神主にしか伝えられていないことだ。今では俺と神主と楓矢しか知らない。怖かったのだろう?済まなかった…」
「いいけど…なんだよ、拍子抜けしたわ……で、今、紫どこにあんの?」
「ん、2階に安置している。」
ゾワッ………
やっぱり、お世辞にも大丈夫じゃなかった……何回も自分が刺された刀だと思うと背筋に寒気が走る。
「ほら、やっぱり怖いだろう?俺とて悪戯に恐怖を煽りたくはないんだ…」
「でも、返さなきゃなんだろ?」
「そうだ…じゃなきゃ俺の時間が進まない。」
「あ……」
刀貴の時間…何年も何年も止まったままの………
「俺はな楓矢。お前と生きて、お前と死にたい。もう置いていかれるのも、待っているのも懲り懲りなんだ…」
「そっか……そうだよな……」
俺なんかじゃ想像も付かないくらいの長い時なんだろ?ずっと死なないとかワクワクする様なもんじゃなかったんだろ?
「なぁ、俺も一緒に行くからな?」
勝って知ったる蒼梧の家だ。第2の我が家みたいなもん。妖刀紫がそこにないなら今更行く事に抵抗なんてないしな。刀貴の永い永い時間を進める為の瞬間じゃねえか。付き合わないなんてことありえねぇ。
「楓矢…?」
刀貴が俺を呼ぶ。労わる様に確かめる様に…わかってる。手は繋がなくても隣にいたいんだろう?人前では絶対に手を出すなって固く注意したからかこの頃は、ん?て思われる様な触れ方とかされてないと思う。だからなんの心配もしないで隣を歩いてきた…
(が、すまん刀貴よ…今日は勝手が違いすぎるぞ。)
刀貴の右の手には細長い布に包まれた包みがしっかりと握られている……それが何であるか分かるだけに、山手家を出る前から両手に嫌な汗をかいてて……
待て、刀貴!左手を手を繋ごうと伸ばすんじゃない!家の中なら、なんなら今も喜んで繋ぎたくなるっていう誘惑が襲ってくるじゃないか…!が、今日は無理だ……夕方を過ぎ暗くなりつつあるので人目はそんなに気にならなくなる時間帯で人目も物凄く気になるんだが、1番はお前が手に持ってる物が問題….!!そいつをじっくり見た事なんて無いし金輪際ないと思いたい。
妖刀紫………!!
「ん?何?」
「神主の所に行く前に、楓矢には見せて………嫌……」
腫れた顔を晒して出かけるのも憚られたから、あのまま2人とも公のお泊まり理由である映画鑑賞などをしてゴロゴロして過ごしていたのだ。ほやほやしながら映画を見てる時に刀貴が言いにくそうにポツリと呟いたのを聞き逃さなかったさ。
「んん?何を見せるって?」
代々山手家に伝わる家宝とか?ずっと生きてきたんだもんな。今では物珍しいものくらい何かありそうだしな…?
何だ何だと、ただ単に興味が勝って刀貴に擦り寄る。
「………」
なのに刀貴ときたら今までにない位、ムッとした様な考え込んでいる様な硬い表情をし出した。
「え、何?何か、聞いちゃいけないやつ?」
自分から言い出したんだから聞いちゃいけないも何もないもんだが、あまりにも刀貴の顔が真剣で……
「ん?いや、楓矢が悪いんじゃない……明日、挨拶に行こうって話していただろ?」
「あ、うん。蒼梧んとこな?」
「そう……俺には返さなくてはいけない物がある。が、お前を連れて行くべきかどうかまだ迷っている。」
「何で?蒼梧んとこなら赤ん坊の時から行ってんぞ?何を今更?」
なんなら刀貴と付き合い出すつい最近まで泊まりにも行っていた。
「楓矢、恨み言なら頼むからちゃんと俺に言え…」
優しく、本当に壊れ物みたいに撫でながら抱きしめられてキスまでされて…何も言えなくなる様な状況を作り出されたけど…本当なら聞かないでいた方が優しさなのかもしれないけど…
「2人で生きて行くんだろ?俺には背負わせてくんないの?」
ちょっと拗ねちゃうぞ?ここまできて出し惜しみはNGだ。もう言うことがないかさっきも確認しただろ、俺。
「楓矢………お前にはもう背負わせたくないんだ…本当はね……」
あぁ~~もう!
「言って良い?」
「うん?」
「妖刀…紫、だろ?」
あ、ちょっとびっくりした様な顔してやんの…人の顔を鳩まめって笑っただろ?フフフ…今度は俺の番…!
しめしめと思っていたところで思いがけないほど強い力で刀貴に抱きしめられた。
「知っていたのか…?」
「ん…知ってるって言うかさ…刀貴、生きてこれたの妖刀のおかげって言ってただろ?妖刀紫ったら神社の御神体じゃん?そんでお前が神社に返しに行くって言ったら、それしかねぇだろ?」
「そう…紫を返す……それが約束だ…」
「でもなんで紫、刀貴が持ってんの?ん?嫌、神社にあるんじゃねぇの?」
毎年祭事の時にその姿を公にしていなかったっけ?見るのも嫌だったからちゃんとしっかり見たことないんだけども………
「そう言う事にはなっている。」
「なってる?じゃ…」
「社にあるのはレプリカだ。」
「えぇぇ………俺、嫌だったんだけど?あの夢見始めてから神社に行くことがさ…祭事の時だって刀なんて見たくもなかったし…けど、偽物だったのかよ……ずっと?」
「そう、ずっと。これは神主にしか伝えられていないことだ。今では俺と神主と楓矢しか知らない。怖かったのだろう?済まなかった…」
「いいけど…なんだよ、拍子抜けしたわ……で、今、紫どこにあんの?」
「ん、2階に安置している。」
ゾワッ………
やっぱり、お世辞にも大丈夫じゃなかった……何回も自分が刺された刀だと思うと背筋に寒気が走る。
「ほら、やっぱり怖いだろう?俺とて悪戯に恐怖を煽りたくはないんだ…」
「でも、返さなきゃなんだろ?」
「そうだ…じゃなきゃ俺の時間が進まない。」
「あ……」
刀貴の時間…何年も何年も止まったままの………
「俺はな楓矢。お前と生きて、お前と死にたい。もう置いていかれるのも、待っているのも懲り懲りなんだ…」
「そっか……そうだよな……」
俺なんかじゃ想像も付かないくらいの長い時なんだろ?ずっと死なないとかワクワクする様なもんじゃなかったんだろ?
「なぁ、俺も一緒に行くからな?」
勝って知ったる蒼梧の家だ。第2の我が家みたいなもん。妖刀紫がそこにないなら今更行く事に抵抗なんてないしな。刀貴の永い永い時間を進める為の瞬間じゃねえか。付き合わないなんてことありえねぇ。
「楓矢…?」
刀貴が俺を呼ぶ。労わる様に確かめる様に…わかってる。手は繋がなくても隣にいたいんだろう?人前では絶対に手を出すなって固く注意したからかこの頃は、ん?て思われる様な触れ方とかされてないと思う。だからなんの心配もしないで隣を歩いてきた…
(が、すまん刀貴よ…今日は勝手が違いすぎるぞ。)
刀貴の右の手には細長い布に包まれた包みがしっかりと握られている……それが何であるか分かるだけに、山手家を出る前から両手に嫌な汗をかいてて……
待て、刀貴!左手を手を繋ごうと伸ばすんじゃない!家の中なら、なんなら今も喜んで繋ぎたくなるっていう誘惑が襲ってくるじゃないか…!が、今日は無理だ……夕方を過ぎ暗くなりつつあるので人目はそんなに気にならなくなる時間帯で人目も物凄く気になるんだが、1番はお前が手に持ってる物が問題….!!そいつをじっくり見た事なんて無いし金輪際ないと思いたい。
妖刀紫………!!
12
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる