14 / 46
14
しおりを挟む
恥ずかしい………
非常に恥ずかしい姿を晒したもんだ……
(どこの高校生男子が、友達の腕に縋り付いて泣くかよ………)
結局あれから保健医が戻ってきて、俺に熱がないのとか体調の確認をしてくれてからも山手はまだ俺の側にいた。泣いている俺の様子が不安定で、山手に側にいる様に保険医も山手に頼んでいたしな………
一通り泣いてしまった俺は当然目が腫れて授業に出る所ではないし、保険医の許可の元ゆっくりしていきなさいという事で…
「………ごめん……」
穴があったら入りたい……落ち着いてから、消え入りそうな声でまずは山手に誤った。
「何が?」
「さっき………腕、掴んじゃったし……気持ち悪かったかと……」
「……宝利君はさ?もし、桐谷君が何かで凄く何かで悩んでいたとして、それが泣くほどのものだったら、引く?」
「え…?蒼梧が…?いや、そんな事、あんまり無かったから…でも、蒼梧が泣いてても、引きはしないな…」
「でしょ?僕も君が泣いたくらいじゃ引かないよ。」
「え……わり……」
「謝らなくっていいって。僕は全然嫌じゃなかった。うん…君の力に…違うな…大事な時に、側にいる事ができて良かったと思ってる。」
「俺、自殺とか、しねぇよ?」
「え…ふふふ。そうじゃないよ。そんな心配はしてないよ。」
「そうなの…?」
(大泣きする程の悩みを抱えた不安定な友人を前にしたら、もしかして、とか思ったりしないのか?)
「うん…死にたいって思ってるわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
死にたいわけじゃなくて、どっちかと言うと、申し訳ない感じ……
「謝らなくて良いからね?君は何も悪いことしていない…絶対に…」
座りながら話していた俺の頭を山手が優しく撫でる。事情なんて知らないはずなのに、山手は断言する様にそう言い切った。気が弱くておどおどしている様な奴なのに、なんだか物凄く逞しく見えるのは俺が弱っているせいなのかもしれない。
「ふ……なんで山手君が断言できるのさ……」
山手の言葉がジンと胸に広がって、また涙が出そうになる。もう泣き笑いだ……
「出来るよ。君は悪くない。さっき言ってたでしょ?君は切られたって……」
やはりこんな猟奇的な夢を何度も見るのは、普通の感覚では異常だと思う。現に山手は今酷く眉を寄せていて不快感を顕にしている。
「…あぁ……」
「ほら、だったら悪くないよ。君の瞳は綺麗だし、何も悪いことをしてないし、君は何も悪くない。寧ろ被害者じゃないか。」
被害者なんだからもっと堂々としていたらいいよ、とまだ俺の頭を撫でながら続けてきた。
「山手君ってさ…優しいよね?モテるだろ?」
もう流石に正気になっているので、いくら友達と言っても頭なでなでは照れ臭い。
のに、サラッとこんな事を躊躇なくできてしまう優しい山手はさぞかしモテるのだろう。
「ん?僕?全然だよ。それに、大勢に好意を寄せられても、本当に好きな人にそれが貰えないんじゃ、意味がないだろう?」
整った顔立ちの奴が、少し寂しそうな顔をしてニッコリと微笑む。
「…へぇ、山手君…その口振りだと好きな人いるんだな?」
(良いなぁ…俺はもうとっくに彼女作ろうとさえ思わなくなってるもんなぁ…)
「好きな人がいても、必ず自分のものになるとは限らないさ…」
(めちゃくちゃ辛そうな顔するじゃん……)
「え?何?もしかして、失恋したて?ごめん?」
(悪いこと、聞いたか?)
山手は苦しそうな顔をする。いつもほわっとする様な表情なのに、何かをグッと耐える様な今の表情は一気に精悍さが増した様な男らしい感じで…
「いや……まだ失恋したって決まってもいない。」
「え?これから言う感じ?あ、彼氏持ちとか?人に言えない感じの?」
自分が大泣きしてしまった恥ずかしさから、ここぞとばかりに話題を山手の恋バナの方へと振る。ちょっと必死すぎる話題転換だが、とっととさっきの事は忘れて欲しいと言うのが本心だ。
山手はまだ楓矢の頭をなでなでしている。
その行為から子供みたいに安心感を吸収する様な状態に甘えながらも、そんな恥ずかしい姿からは早く目を背けて欲しいと言う…なんとも矛盾した勝手な心境………
「言うのは簡単…でも、手に入るかは大きな賭け……」
「賭け……?そんなに大事なの?…有名人とか?」
山手くらい整ったら顔立ちをしているのならば、もしかして芸能事務所とかから声がかかっててもおかしくはないのかもしれないし、そんな繋がりで?
(ちょっと、ドキドキしてきた…)
さっきまでは自分を落ち着かせようと山手の行為を甘受してきていたのに、違う意味で興奮してくる。
「………誰……?」
(ここには俺と山手の二人きりだ。暴露したとしても、その秘密は守るぞ?)
「ふふ…興味津々だね?もう、気分は大丈夫?」
「あぁ…大分落ち着いたし……で?誰?」
頭を撫でてる山手の手首をそっと掴んで探る様に楓矢は見上げる。
「知りたいの?」
「そりゃあね?」
(こんな事話すチャンスそうそう無いからな。)
「僕の手は?気持ち悪くは無かった?」
「…全然…?」
「そう?」
ふわっと物凄く嬉しそうに笑った山手の笑顔に、見覚えがある…
「あれ?お前と何処かで会わなかった?」
非常に恥ずかしい姿を晒したもんだ……
(どこの高校生男子が、友達の腕に縋り付いて泣くかよ………)
結局あれから保健医が戻ってきて、俺に熱がないのとか体調の確認をしてくれてからも山手はまだ俺の側にいた。泣いている俺の様子が不安定で、山手に側にいる様に保険医も山手に頼んでいたしな………
一通り泣いてしまった俺は当然目が腫れて授業に出る所ではないし、保険医の許可の元ゆっくりしていきなさいという事で…
「………ごめん……」
穴があったら入りたい……落ち着いてから、消え入りそうな声でまずは山手に誤った。
「何が?」
「さっき………腕、掴んじゃったし……気持ち悪かったかと……」
「……宝利君はさ?もし、桐谷君が何かで凄く何かで悩んでいたとして、それが泣くほどのものだったら、引く?」
「え…?蒼梧が…?いや、そんな事、あんまり無かったから…でも、蒼梧が泣いてても、引きはしないな…」
「でしょ?僕も君が泣いたくらいじゃ引かないよ。」
「え……わり……」
「謝らなくっていいって。僕は全然嫌じゃなかった。うん…君の力に…違うな…大事な時に、側にいる事ができて良かったと思ってる。」
「俺、自殺とか、しねぇよ?」
「え…ふふふ。そうじゃないよ。そんな心配はしてないよ。」
「そうなの…?」
(大泣きする程の悩みを抱えた不安定な友人を前にしたら、もしかして、とか思ったりしないのか?)
「うん…死にたいって思ってるわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだな……」
死にたいわけじゃなくて、どっちかと言うと、申し訳ない感じ……
「謝らなくて良いからね?君は何も悪いことしていない…絶対に…」
座りながら話していた俺の頭を山手が優しく撫でる。事情なんて知らないはずなのに、山手は断言する様にそう言い切った。気が弱くておどおどしている様な奴なのに、なんだか物凄く逞しく見えるのは俺が弱っているせいなのかもしれない。
「ふ……なんで山手君が断言できるのさ……」
山手の言葉がジンと胸に広がって、また涙が出そうになる。もう泣き笑いだ……
「出来るよ。君は悪くない。さっき言ってたでしょ?君は切られたって……」
やはりこんな猟奇的な夢を何度も見るのは、普通の感覚では異常だと思う。現に山手は今酷く眉を寄せていて不快感を顕にしている。
「…あぁ……」
「ほら、だったら悪くないよ。君の瞳は綺麗だし、何も悪いことをしてないし、君は何も悪くない。寧ろ被害者じゃないか。」
被害者なんだからもっと堂々としていたらいいよ、とまだ俺の頭を撫でながら続けてきた。
「山手君ってさ…優しいよね?モテるだろ?」
もう流石に正気になっているので、いくら友達と言っても頭なでなでは照れ臭い。
のに、サラッとこんな事を躊躇なくできてしまう優しい山手はさぞかしモテるのだろう。
「ん?僕?全然だよ。それに、大勢に好意を寄せられても、本当に好きな人にそれが貰えないんじゃ、意味がないだろう?」
整った顔立ちの奴が、少し寂しそうな顔をしてニッコリと微笑む。
「…へぇ、山手君…その口振りだと好きな人いるんだな?」
(良いなぁ…俺はもうとっくに彼女作ろうとさえ思わなくなってるもんなぁ…)
「好きな人がいても、必ず自分のものになるとは限らないさ…」
(めちゃくちゃ辛そうな顔するじゃん……)
「え?何?もしかして、失恋したて?ごめん?」
(悪いこと、聞いたか?)
山手は苦しそうな顔をする。いつもほわっとする様な表情なのに、何かをグッと耐える様な今の表情は一気に精悍さが増した様な男らしい感じで…
「いや……まだ失恋したって決まってもいない。」
「え?これから言う感じ?あ、彼氏持ちとか?人に言えない感じの?」
自分が大泣きしてしまった恥ずかしさから、ここぞとばかりに話題を山手の恋バナの方へと振る。ちょっと必死すぎる話題転換だが、とっととさっきの事は忘れて欲しいと言うのが本心だ。
山手はまだ楓矢の頭をなでなでしている。
その行為から子供みたいに安心感を吸収する様な状態に甘えながらも、そんな恥ずかしい姿からは早く目を背けて欲しいと言う…なんとも矛盾した勝手な心境………
「言うのは簡単…でも、手に入るかは大きな賭け……」
「賭け……?そんなに大事なの?…有名人とか?」
山手くらい整ったら顔立ちをしているのならば、もしかして芸能事務所とかから声がかかっててもおかしくはないのかもしれないし、そんな繋がりで?
(ちょっと、ドキドキしてきた…)
さっきまでは自分を落ち着かせようと山手の行為を甘受してきていたのに、違う意味で興奮してくる。
「………誰……?」
(ここには俺と山手の二人きりだ。暴露したとしても、その秘密は守るぞ?)
「ふふ…興味津々だね?もう、気分は大丈夫?」
「あぁ…大分落ち着いたし……で?誰?」
頭を撫でてる山手の手首をそっと掴んで探る様に楓矢は見上げる。
「知りたいの?」
「そりゃあね?」
(こんな事話すチャンスそうそう無いからな。)
「僕の手は?気持ち悪くは無かった?」
「…全然…?」
「そう?」
ふわっと物凄く嬉しそうに笑った山手の笑顔に、見覚えがある…
「あれ?お前と何処かで会わなかった?」
15
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる