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「ねぇ、楓。昨日寝れてた?」
「あん?」
夜中に目が覚めてから、流石に眠れなくなった楓矢はガサゴソと部屋の片付けなんかを始めたものだから隣の部屋のみそえも目が覚めてしまった様だった。
「あぁ、悪りぃ。ちょっと探し物。」
「あら、何?楓ちゃん何か無くしたの?」
珍しく朝食時間にいる母はコーヒーを淹れながら、2人の会話に入ってくる。
「べっつに。家に神社の文献ってあったっけ?」
「うぇ?」
「あら、なあに?」
「蒼梧のとこの?」
「そ。」
「さぁ?あったかしら?何か調べ物?神主の蒼梧君のお父様に聞きに行ったらいいんじゃ無い?」
長い付き合いでも極たまによく知りもしない事柄に出会う。
(いや、本当はあまり踏み込まないところ、だな。)
「ん~別にいいや。大した事じゃ無い。ごっそーさん。」
(本当に大した事じゃ無い。あれは夢なんだから……)
「おっは~楓…お前、今日も酷い顔だな?」
登校中に必ず出会す幼馴染の蒼梧。待ち合わせなんてしなくても、通学途中で出くわせば一緒に行くくらいにはいつも一緒にいる。
「お~っす…寝れねぇ………」
ふぁっと、おおあくびをして短く返した。
「ふ~~ん。やっぱパピーに見てもらう?」
「ん~~ん。蒼梧さ、お前んとこにさ。妖刀あったよな?」
「あ?それがどした?」
キョトンとして蒼梧は返事を返す。
「なんて名前?」
「俺?」
「ちゃう、妖刀…」
「どしたの?今までそんな事聞いて来た事もないじゃん。」
余程おかしかったのか蒼梧はクスクスと笑い出した。
「いいから、名前…付いてんだろ?」
長年神社に祀られている妖刀だ。名刀ならばそれなりの名前だってあるだろう。
「何?見たい?パピーに頼めば触らせてくれるんじゃね?」
「あ?そんなに簡単なのかよ?」
「いんや、ほんとは門外不出。」
「え、じゃあダメじゃん。簡単にそう言う事言うなよな。」
「お前だからだろ?」
「俺?」
(なんで?)
「あのさぁ、お前、女だったら俺の嫁じゃん…」
ぞわっとした…
ぞわぞわと得体の知れない寒気が走って落ち着かない。
いや、蒼梧のことが生理的に受け付けないとかそういうんじゃない…
まだそんな化石のような風習がここでも生きている事に寒気がした。
「何言ってんの?俺、男だろ?」
声が震えそうになった。昨日夢で見た映像が生々しく蘇って来て、一瞬自分もあんな姿になるのかと考えたら戦慄さえ覚えるほどだ。
「だよなぁ…顔が美人でもねぇ~折角紫の瞳持って産まれたのにもったいないよね~~ってマミーも嘆いてたわ。」
「おいおい………お前、それ、俺が女だったら嫁に貰ってたって発言だぞ?」
幼馴染である。赤ん坊の頃から一緒にいて、おねしょの回数も、成長に伴う体の事情あれこれも知っているような仲である。なんなら人には言えない様なあれこれも一緒にした様な仲だ。
(その俺に向かって嫁?)
「なんで?宝利の家じゃそれが普通だろ?」
当たり前のこと聞くなよ、みたいな軽いノリで言ってくれる…
「お前、俺でいいわけ………?」
全身の力が抜けてしまいそうな脱力感を感じるが一応聞いてみよう。
「なんで~?別に楓の事嫌いじゃないしな~……ん~男か?未だ試したことはないけどな。」
「待て待て待て、男は嫁にならんだろうが。」
「時代の流れじゃない?あれ?楓はまだ童貞だったよね?」
どこまで本気かわからない蒼梧の答え。確かにそういう風潮はあるけどさ?お前、無類の女好きだよな?取っ替え引っ替えしてるよな?それで、最後には男でいいわけ?いや、最後になるとは限らないけどよ………
んで、人が童貞だろうとなんだろうと関係ないだろうが!女子が殺される夢と、昨日見た様な濡れ場シーンを見させられたら付き合うのも怖くなるわ!
なんと言ったら良いのか、返す言葉を失う。
「言ってろ!んで、妖刀の名前は?」
「紫、妖刀紫。楓ほんとに知らなかったの?何度もパピー話してただろ?」
(聞いていなかった…ちゃんとまじめに……)
夢を見るようになってからは、つい刀の話から逃げたくて躱しまくっていたから。
「マジか………」
(眩暈がして来た…)
「どしたんだよ?楓?」
「わっるい…今日、サボる……」
こんなんじゃ授業を受けても頭になんて入ってこない。蒼梧と校舎の中までは入って行って、自分は図書室へと向かった…
自習になったクラスの生徒やらがいつでも使える図書室には、私立ならではのオプションがある。図書室奥にある閲覧スペースには、学生には似つかわしくない様なソファーまで置いてあって、勉強をしているふりをして仮眠を取ることもできた。
「ねみぃ………」
切実に安眠がほしい…さっき蒼梧から聞いた衝撃の事実に頭が回らない。
妖刀紫…夢で出て来たのと同じ名前だ。もしかしたら神社で聞いて居たのにも拘らず忘れていて夢にだけ見た、と言う事も考えられるけれど、もし、夢が本当なら?
「神社の妖刀……人、刺してんじゃん……」
刀本来の使い方はそれで合ってるのかも知れないけれど、釈然とはしない事実だ。
「……女と、付き合える気がしねぇ……」
眠気でぼうっとした中、自然と出てきた自分の言葉に衝撃を受ける。
「え~マジで?」
そんなんだったら一生童貞決定だ………
「あん?」
夜中に目が覚めてから、流石に眠れなくなった楓矢はガサゴソと部屋の片付けなんかを始めたものだから隣の部屋のみそえも目が覚めてしまった様だった。
「あぁ、悪りぃ。ちょっと探し物。」
「あら、何?楓ちゃん何か無くしたの?」
珍しく朝食時間にいる母はコーヒーを淹れながら、2人の会話に入ってくる。
「べっつに。家に神社の文献ってあったっけ?」
「うぇ?」
「あら、なあに?」
「蒼梧のとこの?」
「そ。」
「さぁ?あったかしら?何か調べ物?神主の蒼梧君のお父様に聞きに行ったらいいんじゃ無い?」
長い付き合いでも極たまによく知りもしない事柄に出会う。
(いや、本当はあまり踏み込まないところ、だな。)
「ん~別にいいや。大した事じゃ無い。ごっそーさん。」
(本当に大した事じゃ無い。あれは夢なんだから……)
「おっは~楓…お前、今日も酷い顔だな?」
登校中に必ず出会す幼馴染の蒼梧。待ち合わせなんてしなくても、通学途中で出くわせば一緒に行くくらいにはいつも一緒にいる。
「お~っす…寝れねぇ………」
ふぁっと、おおあくびをして短く返した。
「ふ~~ん。やっぱパピーに見てもらう?」
「ん~~ん。蒼梧さ、お前んとこにさ。妖刀あったよな?」
「あ?それがどした?」
キョトンとして蒼梧は返事を返す。
「なんて名前?」
「俺?」
「ちゃう、妖刀…」
「どしたの?今までそんな事聞いて来た事もないじゃん。」
余程おかしかったのか蒼梧はクスクスと笑い出した。
「いいから、名前…付いてんだろ?」
長年神社に祀られている妖刀だ。名刀ならばそれなりの名前だってあるだろう。
「何?見たい?パピーに頼めば触らせてくれるんじゃね?」
「あ?そんなに簡単なのかよ?」
「いんや、ほんとは門外不出。」
「え、じゃあダメじゃん。簡単にそう言う事言うなよな。」
「お前だからだろ?」
「俺?」
(なんで?)
「あのさぁ、お前、女だったら俺の嫁じゃん…」
ぞわっとした…
ぞわぞわと得体の知れない寒気が走って落ち着かない。
いや、蒼梧のことが生理的に受け付けないとかそういうんじゃない…
まだそんな化石のような風習がここでも生きている事に寒気がした。
「何言ってんの?俺、男だろ?」
声が震えそうになった。昨日夢で見た映像が生々しく蘇って来て、一瞬自分もあんな姿になるのかと考えたら戦慄さえ覚えるほどだ。
「だよなぁ…顔が美人でもねぇ~折角紫の瞳持って産まれたのにもったいないよね~~ってマミーも嘆いてたわ。」
「おいおい………お前、それ、俺が女だったら嫁に貰ってたって発言だぞ?」
幼馴染である。赤ん坊の頃から一緒にいて、おねしょの回数も、成長に伴う体の事情あれこれも知っているような仲である。なんなら人には言えない様なあれこれも一緒にした様な仲だ。
(その俺に向かって嫁?)
「なんで?宝利の家じゃそれが普通だろ?」
当たり前のこと聞くなよ、みたいな軽いノリで言ってくれる…
「お前、俺でいいわけ………?」
全身の力が抜けてしまいそうな脱力感を感じるが一応聞いてみよう。
「なんで~?別に楓の事嫌いじゃないしな~……ん~男か?未だ試したことはないけどな。」
「待て待て待て、男は嫁にならんだろうが。」
「時代の流れじゃない?あれ?楓はまだ童貞だったよね?」
どこまで本気かわからない蒼梧の答え。確かにそういう風潮はあるけどさ?お前、無類の女好きだよな?取っ替え引っ替えしてるよな?それで、最後には男でいいわけ?いや、最後になるとは限らないけどよ………
んで、人が童貞だろうとなんだろうと関係ないだろうが!女子が殺される夢と、昨日見た様な濡れ場シーンを見させられたら付き合うのも怖くなるわ!
なんと言ったら良いのか、返す言葉を失う。
「言ってろ!んで、妖刀の名前は?」
「紫、妖刀紫。楓ほんとに知らなかったの?何度もパピー話してただろ?」
(聞いていなかった…ちゃんとまじめに……)
夢を見るようになってからは、つい刀の話から逃げたくて躱しまくっていたから。
「マジか………」
(眩暈がして来た…)
「どしたんだよ?楓?」
「わっるい…今日、サボる……」
こんなんじゃ授業を受けても頭になんて入ってこない。蒼梧と校舎の中までは入って行って、自分は図書室へと向かった…
自習になったクラスの生徒やらがいつでも使える図書室には、私立ならではのオプションがある。図書室奥にある閲覧スペースには、学生には似つかわしくない様なソファーまで置いてあって、勉強をしているふりをして仮眠を取ることもできた。
「ねみぃ………」
切実に安眠がほしい…さっき蒼梧から聞いた衝撃の事実に頭が回らない。
妖刀紫…夢で出て来たのと同じ名前だ。もしかしたら神社で聞いて居たのにも拘らず忘れていて夢にだけ見た、と言う事も考えられるけれど、もし、夢が本当なら?
「神社の妖刀……人、刺してんじゃん……」
刀本来の使い方はそれで合ってるのかも知れないけれど、釈然とはしない事実だ。
「……女と、付き合える気がしねぇ……」
眠気でぼうっとした中、自然と出てきた自分の言葉に衝撃を受ける。
「え~マジで?」
そんなんだったら一生童貞決定だ………
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