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21、再会 3

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 オアシスの周囲はひどい物だった。砂地に降りて地面を刺激すれば、あっと言う間に蛇に飲まれてしまう図が出来上がるほど、直ぐ下に蛇達がいる。何故この周辺一体にこんなに密集しているのか定かではないのだが、周囲の魔物を掃討しようと思ったらかなりの日数を要してしまうだろう。

「やってられんな…」

 討伐依頼ならばいざ知らず、日々延々と蛇を相手にしていても仕方がない。シショールは魔力も愛刀もこの手に戻ってきたのだから、早くランカントから抜け出しても良い筈であるのだ。
  
 が………である……

「世話に、なっているしな……」

 このランカントの地でこのオアシスがなければシショールの命は既に無い。蛇から浴びた大量の血を洗い落としながら、シショールは思いを巡らす。

 どうしたいのか…ここから出たいか…?

 サザンカに問うた疑問はそのままシショールにも返って来る。このオアシスから出て、サザンカを魔侯爵家に返す?そんな事はできないだろう、と想像に難しく無い。シショール自身ももうエルリーナと対峙する気はこれっぽっちもないのだから…では…

他国に行くか………」

 外の世界を見せて自分で自由に生きる道を選び取る事が出来ると、教えてやるのも良いかもしれない。

「冒険者になる……」

 シショールと同じように依頼こなし、金銭を受け取る。その日限りの暮らしに近くなってしまうところもあるが、サザンカの能力を持ってするならば案外難しくは無いかもしれない。

 後は本人がどう考えるかだけだ。

 サラサラと泉の中には清らかな清水が流れ込んでくる。魔物の汚れを洗い落としてもまだ清さを保つ不思議な泉だ。この砂漠の荒地に、雨が降り泉ができる。それだけでもう奇跡の様なものなのに…それを歯牙にも掛けない者がいるとは…全く驚かせてくれた者であった。

「できる限りのことをしておくかな……」

 面倒は面倒だが、このランカントの中を一人だけで放り出されるよりかは面倒では無い。一気に風の魔法で衣類を乾かしたシショールは、そのままこの地を後にした。

 





「いませんね………」

 そろそろ夕食の時間である。いつもならばシショールの姿があっても良いのに、先程の蛇騒ぎの後よりシショールの姿が見えなくなった。あれだけ魔力に溢れて剣技も優秀となれば、結界外に出たとしてもまた蛇を数匹切り倒して来るだけで怪我の一つもないのだろうけれど……

(心配なんてしなくて良いわ…問題ないわよ。)

 フーはサザンカ以外の事となると途端に冷たくなる。精霊なのだから仕方がないのかもしれないが、時折サザンカは少し寂しくもなるのだ。もし、友達という者ができたら…もし、家族が自分を受け入れてくれたら…フーは自分の様にその人達を受け入れてくれるだろうかと。幼い頃からサザンカにはフーしかいなかったのだから、もしフーに拒絶されでもしたらどうして良いのかわからなくなってしまう。

 きゅぅぅぅ…っと寄った眉間をフーがそっと実体の無い手で揉み解す。

(そんなに力を入れたら、ここに跡がつくわよ?)

「フー…」

(……貴方が思い悩むなんて…)


 そんな必要すらないのに…邪魔な物は全て、私が排除して来るのに…大切なサザンカを思い煩わせているのは誰?


「おい、恐ろしいな精霊殿。」

 少なからず、俺への殺気を感じたぞ?とシショールは少し慎重にサザンカへと近づいて行く。

「あ!お帰りなさい!シショールさん!どちらに行ってらしたんです?」

 警戒体制のシショールに対し、サザンカはパァ…!と顔を輝かせながらシショールの側に寄って行く。

「ああ、結界の外をもう一度見回っていたんだ。」

「ランカント、をですか?」


 つい先ほどシショールは蛇の掃討で血みどろで帰ってきているのに、また行ったというのだろうか?


「ん?ああ、掃討じゃないからな?あくまでも見回りだ。ここの正確な位置を知るためでもあるし、移動手段を作るためでもある。」

「移動手段?」

「そうだ。お前と俺のな?」

「私も………?」

 サザンカはここを出たことがない。強いて言えば、魔侯爵家の小屋の中とランカントのオアシスのみだ。

「一緒に?」

「行きたくは無いか?世界は広いぞ?嫌ならば家に帰らなくてもいい…根無草の様に冒険者として世界を回るのはさぞ楽しいだろうな?自由とは、そんなものだろう?」

「一人では……ないのですか?」

「ん?一人がいいのか?」

 今まで一人だったから…育った環境によっては、人間が嫌いでも無理はない。一人だとて生きる知恵と、精霊がいるのならば問題は無さそうなのだから…

「私は…世間を知りません……」

「知っている。ならば、知れば良い。」

「足手纏いに、なるかも知れないです…」

「最初は皆んなそうだ。誰でも最初から一人では生きていけないだろ?」

 サザンカもだ。親には捨てられたかも知れないが、フーがいたから生きていけているのだ。

「私も…見てみたい…かも、知れないです……」

「はっ!なんだ?その中途半端な答え!」

 もじもじとしながらも、これは自分なりの心境を素直に込めたサザンカなりの答えなのだ。それが煮え切らない答えだとしても、今はそれで十分だった。















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