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45 どうしたい? *

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 いつもの病室にいつもの面会…最初はどうなる事かと思っていたが、思いがけず皆さん協力的で…凄い事に今まで秘密にしようとして来た人達にはまだバレていない。

 そんな面会が終わってしまえば……

「……んっ……ふっ」

 まだここにいます、と言い置いた光生が先に両親を帰してしまい、夕食までは羽織と二人の時間になる…

 普段だったらまりと羽織と松花三人でワイワイしながら食事の支度をしている時間で、光生は会社の仕事やら何かの難しい書類とよく睨めっこをしている。その時間がふと、懐かしくなってしまうほど長くここにいる様な気がしてならない羽織は今は喜んで光生の舌を受け入れてしまっていて……

「こ…ぅくん…ん…も、帰らないと…」

 二人とも待ってるし…

「今日はいい…まだここに居たい…はお…」

「ふっ…」

 病院だけど、病室なんだけどこの時間はどうしても離れ難くて…光生は帰らないと、と言っている羽織から離れられないでいる。羽織も両腕をしっかり光生の首に回してしまっているし…

「しばらく誰もこない様に言ってあるし、羽織、我慢は良くないよ?」

 耳元で囁かれれば、腰が震えて声を殺すのがやっとなのに…人払いをしたって、こう言う事をするためでしょう?後でどんな顔をしてスタッフの人と顔を合わせればいいの…?ホヤンとしてきた頭の中では真っ当な考えが浮かんではすぐにフワッと消えていった…

「俺が…お前に触りたい…傷が痛むか?」

 フルフル…もう、全然痛まない…鏡で見れば抜糸が終わったピンク色の傷跡が首元に見えて嫌でも目を引いてしまうだろうけど…

「気持ち……悪い…?」

 自分が見ても躊躇するほどだから光生が見たら嫌な思いをするんじゃないかと、ひどく心配になって来る。

「全然……羽織が痛くないなら、本当に良かった…ごめんな…?」

 傷なんて、この体に一つもつけるつもりなんて無かったのに…羽織の身体…壊れ物に触る様に大切に大切に触れていく……羽織の唇に触れていた光生の舌が首筋に降りて…
 つつっ………ゆっくりと優しく、傷痕を舐めてキスを落とす…

「ふぅっ……ん…」

 痛くはないけど、突然のそんな刺激に声を抑えるのがやっとの羽織…身体を辿る光生の手が羽織を焦らす事なく高めていくのが分かって、尚の事身体の反応を抑えられなくて焦ってしまう…

「こぅくん…!こ…こ病院だか…らぁ…」

 病院だからなんだと言うのか、とでも言いたそうな光生の手は胸から脇腹を通って迷う事なく羽織を捉えている。

「なんで…?夫が妻に触るんだから問題ないだろう?」 

 そんな当然なことを言ってるんじゃなかった様な……?そうか……当然なんだ…だったらこのままでいい……?昂った物を優しくけれどしっかりと扱われていけば、あっという間に理性なんか飛んで行きそうで…

「うっ…ふっ…きも、ち…ぃ…んっ…」

 おかしいな…懐妊中は、発情しないんじゃないっけ?こんな風に触られるだけで、光君の手の熱だけで、体の奥から溶かされていくみたい…

「羽織…辛かったら言え?勝手な事してるのは俺の方だからな?いまは発情期はないはずだろ?」

「え…うん……?」

 知ってるの?光君…

「する必要なくても…俺が触りたい…身体に障るようならすぐやめるし最後まではしないから…」 

 羽織の身体を労って、自分の欲は抑える光生…愛してると言ってくれたあの時も、今も昔も求めてくれることが…嬉しい……嬉しい……

 ベッドに座らされた羽織は既に下衣を足元まで下ろされてしまって…羽織の昂った物はまだ光生にしっかりと握られたまま、腰も抑えられてて引くこともできない…

「あっ…ぁっ……ふぅ…」

 光生のキスを受けながら、ゆっくりとした刺激を受け続ける…

「羽織……どうしようか…?これ…」

 ほとんど思考力の落ちた羽織に意地悪く光生が、聞く…

 どうする…?どうしたい?久しぶりにこんなにされて、我慢なんて出来ない…光君が、欲しい……でも、今はダメ…

 頭の中に少しだけ残っていた理性が訴えてる…

 けど、もう限界………

「こぅ…君…も、ぅ…いき、たい……」

 気持ち良すぎて、頭が焼き切れそう…理性が働いてるうちに…光君が欲しいって口走らないうちに…早く……早く…

「分かった……」

 優しくキスしていたのを、ジュウッと深く舌を絡め取られて、フッとはなされてしまった…
 寂しい…今凄く深かったものが無くなって…寂しくて光生を目で追った…

 もっと、して欲しいのに…

 羽織の目は語る…

「こっちで…するから…」

 羽織りの視線を受けて光生の瞳が優しく細められた…本当は最後までしたいんだろうし、その瞳の奥には欲望の熱がある、けど…光生は身体を下へずらして羽織の高ぶりを口に含む… 

「ふぅっ…ぁっ…あっ…んぅ…」

 欲しかった刺激にあがる声を必死に抑える為、羽織は手で口を塞ぐ。

「んぅぅぅ……っ…!」

 我慢なんて出来ない…ゆるゆる舐められた後、根元まで深く咥えられてジュッと強く吸われれば、なす術なく羽織は精を放つ……

 倒れ込みそうになる身体を光生に支えられながらベッドへ横たえられる羽織の耳に、光生がそっとささやいた…

「ごめん羽織……全部、終わらせて来るから…もう少しだけ我慢して…?」

 疲れて、すぅっと眠りに入る羽織の首の傷を光生はもう一度そっと撫でた……
 
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