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39 決意 1
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あの時の、喜びは一生消えない。光生の中にも奇跡の様な出来事はあるもので、羽織を手に入れた瞬間と自分にも新しい家族が増えると分かった時……自分の手の中で逃げ出す事のない確実なものが増えていく感覚は例え用もないほどの満足感と高揚感を与えれてくれる。
今まで知らなかったと言ってもいいほどの生きる喜び…生きる意味…全てが自分の手の中にある者達で出来ていて、毎日毎日自分に生きる力を注ぎ込んでくれている様だ。
これらが無かったら生きているのもつまらない。
これらが居なかったら生きている意味がない。
これらが居なくなったら、もう生きていたくない……
こんなに心が縛られるなんて思わなかった。番としてただの嫁として受け入れてきた者達が切っても切れない者になっていた。例え、自分が裏切られて打ち捨てられても、光生からは捨てられないし裏切れない。αであって支配者なのに、魂の全てを根こそぎ絡めとられてしまっているのは光生の方だと今、強く自覚している。
何を取って、何を切り捨てるか…人の上に立つのならば絶えず迫られる選択肢。光生も十分それを理解しているし、時には判断もしてきた。しかし仕事上ではなくてこんなにも身近に、こんなにも捨てがたいものを並べられて取捨選択を迫られるとは思いもよらず、最初は混乱した。
しかし…考えれば考えるほど、事実に目を向ければ向けるほど目を背けておく事ができなくなってしまった…
見ぬふりをしたら確実に一つ、最も大切なものが手から滑り落ちる。なぜ、その対象にされたのかも見当もつかないが…事実は事実…あの時、全てが出来すぎていたからここで逃してしまってもいずれは表に出るだろう。
ならば他人の手によって暴かれるより、自分達の手で片付けたほうが少しだけ後味に違いがあるのかもしれない……
光生はジッと閉じていた目をゆっくりと開けた。
「あの三名の内二名に接触しました…」
片耳にイヤホンを付けたまま、今はサングラスを外しているのは羽織の護衛の薙と景。
「数日中にあちらから連絡があるかと思います。」
「……まりは?」
「はい。ご自宅に帰られました。」
「誘導出来そうか?」
「どうでしょう?仮にもαの面々ですからね?上手く釣られてくれるかどうか…」
「Ωのまり様には興味を持っていましたし、多くのΩとの出会いを求めているそうですよ?」
「…クズが……!」
最もな意見に護衛二人も静かに肯く。
「まだ、接点が見つかりません…」
光生の側には貝原がいる。
「あの時、お前達護衛に関わった者全ての確保と聴取を…」
事件があった折には、羽織の件で何か見た者はいないか、聞いた者はいないかに終始徹底されていたからその他の情報を得るためだ。
「ええ、それでしたらあの後三人から事情を聞く折に関わった者の所属と名前は抑えてあります。」
「貝原…その先…いや、その前に拘った者もだ。なんでそこに来たとか、ね。」
「承知しました…」
「場所はどうしましょう?」
「校内の者達は談話室…まりの方は……」
「あぁ、でしたら非公式の出会いパーティーが近々ありますね?」
「非公式?」
貝原の言うパーティーはその名の通り公式ではないΩとαの出会いの場…特性講座受講満了の者達は行政の運営するαとΩの集団見合いの権利を得られるが、大企業などで慈善事業をも手掛けている企業が非公式に運営している出会いの場もあるにはある。が、これに出席するには更に壁が高く、まずは親の職業から年収に至るまで調べ上げられ、本人の履歴書なる物も必要で時には身辺調査が入る徹底ぶり。それもそのはず、資産家を始め実家がしっかりとした子息子女の出会いの場となるからだ。
「ふ~ん。そんなのあるのか?」
「光生様も一度出席されてみますか?選り取り見取りで囲まれると思いますけど…」
光生には幼い頃から光生だけの嫁候補が宛てがわられていた為、こんな場は必要なかった。今まで興味もなかったから情報を集めようとも思わなかったが…
「要らんよ…」
本当に要らない…今、手の中にある者が愛し過ぎるんだから…それを失わない様に動いていると言うのに……
「でしょうね…」
貝原もそれを知っていてこんな事を聞いてくる。
「そんな所に…?まり様を…?」
怪訝そうな薙と景に貝原は問題ないと言い切った。
「どの出席者も身元のしっかりとした人格者…まぁ、性格はそれぞれでしょうけど、後ろ盾のしっかりとした人からの紹介でしか入れませんしね。そんじょそこらの集団見合いよりは余程安全だよ。」
「そんな所なら、奴らの方が浮きまくるんじゃ?」
「あぁ!その心配はしないといけなかったな。」
貝原の爽やかな笑顔は印象的だ……
今まで知らなかったと言ってもいいほどの生きる喜び…生きる意味…全てが自分の手の中にある者達で出来ていて、毎日毎日自分に生きる力を注ぎ込んでくれている様だ。
これらが無かったら生きているのもつまらない。
これらが居なかったら生きている意味がない。
これらが居なくなったら、もう生きていたくない……
こんなに心が縛られるなんて思わなかった。番としてただの嫁として受け入れてきた者達が切っても切れない者になっていた。例え、自分が裏切られて打ち捨てられても、光生からは捨てられないし裏切れない。αであって支配者なのに、魂の全てを根こそぎ絡めとられてしまっているのは光生の方だと今、強く自覚している。
何を取って、何を切り捨てるか…人の上に立つのならば絶えず迫られる選択肢。光生も十分それを理解しているし、時には判断もしてきた。しかし仕事上ではなくてこんなにも身近に、こんなにも捨てがたいものを並べられて取捨選択を迫られるとは思いもよらず、最初は混乱した。
しかし…考えれば考えるほど、事実に目を向ければ向けるほど目を背けておく事ができなくなってしまった…
見ぬふりをしたら確実に一つ、最も大切なものが手から滑り落ちる。なぜ、その対象にされたのかも見当もつかないが…事実は事実…あの時、全てが出来すぎていたからここで逃してしまってもいずれは表に出るだろう。
ならば他人の手によって暴かれるより、自分達の手で片付けたほうが少しだけ後味に違いがあるのかもしれない……
光生はジッと閉じていた目をゆっくりと開けた。
「あの三名の内二名に接触しました…」
片耳にイヤホンを付けたまま、今はサングラスを外しているのは羽織の護衛の薙と景。
「数日中にあちらから連絡があるかと思います。」
「……まりは?」
「はい。ご自宅に帰られました。」
「誘導出来そうか?」
「どうでしょう?仮にもαの面々ですからね?上手く釣られてくれるかどうか…」
「Ωのまり様には興味を持っていましたし、多くのΩとの出会いを求めているそうですよ?」
「…クズが……!」
最もな意見に護衛二人も静かに肯く。
「まだ、接点が見つかりません…」
光生の側には貝原がいる。
「あの時、お前達護衛に関わった者全ての確保と聴取を…」
事件があった折には、羽織の件で何か見た者はいないか、聞いた者はいないかに終始徹底されていたからその他の情報を得るためだ。
「ええ、それでしたらあの後三人から事情を聞く折に関わった者の所属と名前は抑えてあります。」
「貝原…その先…いや、その前に拘った者もだ。なんでそこに来たとか、ね。」
「承知しました…」
「場所はどうしましょう?」
「校内の者達は談話室…まりの方は……」
「あぁ、でしたら非公式の出会いパーティーが近々ありますね?」
「非公式?」
貝原の言うパーティーはその名の通り公式ではないΩとαの出会いの場…特性講座受講満了の者達は行政の運営するαとΩの集団見合いの権利を得られるが、大企業などで慈善事業をも手掛けている企業が非公式に運営している出会いの場もあるにはある。が、これに出席するには更に壁が高く、まずは親の職業から年収に至るまで調べ上げられ、本人の履歴書なる物も必要で時には身辺調査が入る徹底ぶり。それもそのはず、資産家を始め実家がしっかりとした子息子女の出会いの場となるからだ。
「ふ~ん。そんなのあるのか?」
「光生様も一度出席されてみますか?選り取り見取りで囲まれると思いますけど…」
光生には幼い頃から光生だけの嫁候補が宛てがわられていた為、こんな場は必要なかった。今まで興味もなかったから情報を集めようとも思わなかったが…
「要らんよ…」
本当に要らない…今、手の中にある者が愛し過ぎるんだから…それを失わない様に動いていると言うのに……
「でしょうね…」
貝原もそれを知っていてこんな事を聞いてくる。
「そんな所に…?まり様を…?」
怪訝そうな薙と景に貝原は問題ないと言い切った。
「どの出席者も身元のしっかりとした人格者…まぁ、性格はそれぞれでしょうけど、後ろ盾のしっかりとした人からの紹介でしか入れませんしね。そんじょそこらの集団見合いよりは余程安全だよ。」
「そんな所なら、奴らの方が浮きまくるんじゃ?」
「あぁ!その心配はしないといけなかったな。」
貝原の爽やかな笑顔は印象的だ……
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