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35 接近
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「へ~~Ωの子から?」
「ふふん、良いだろ?」
一枚の名刺をひらひらさせて、得意そうに男が言う。
「ふ~~ん…危篤なΩも居たもんだな?俺らみたいな後なりにさ…」
「別に?おかしい事じゃないだろ?ま、出会いが少ないっていうんでαだけどβと一緒になるやつも多いけど…」
生まれてすぐにΩ判定される子達は、有力者達にほぼ囲われてしまう傾向にあるし、後なりのΩも自分がそうだとわかると直ぐに保護シェルターへ出向く為、街中でフリーのΩとホイホイ出会う様な事はまずない。出逢ったとしても既に番持ちか、先日のΩの様に護衛付き。
「だからだろ?条件満たして優秀αだとわかればΩとの集団見合いの権利もらえるんだからさ?」
「だからがっつくなって?」
「そうそう、焦るなって…」
「フン!番う相手が居なくてβと一緒になっても不幸になる奴いるし、集団見合いに行ったって本当に自分だけの番が見つかると思うかよ?」
「まぁ、相性の問題もあるっていうけどな…?」
「だからだって、機会が多ければ多いほど自分好みのΩが見つかるかもしれねぇじゃん。」
「けど、その名刺の子も番持ちっぽくない?」
「ん~どうだろ?俺らより若く見えたけど?」
「会うつもりかよ…?」
「そりゃあねぇ?お友達も居るみたいだし?」
「うっわ…!節操ねぇなぁ…」
「なんだよ?お前は欲しくねぇの?自分だけのΩをさ?」
「欲しいよ?だから特性講座に足繁く通って見合い権をゲットしようとしてるんじゃん。噂に聞いても別に悪くないらしいぞ?」
一般的に行われている男女の出会いの場のお見合いでは無くて、αとΩの集団見合いは文字通り一生涯の伴侶となる番を見つけるお見合いの場となる。見合いに参加できる条件として、性特性講座満了した者、とあるのだ。
参加人数は両特性とも十数名と小規模を特徴としていて、性特性講座満了者は何度でも参加可能。だが、ペナルティとして性特性変換後の特性講座未受講などの違反行為をした者、過去に自身の性特性を利用し他特性の者に性行為の強要等をした者には、性特性矯正施設の入所、矯正プログラムの受講、認可試験の通過をしなければ社会復帰もできない厳しい処置が待っている。だから後なりの者達は性特性講座の受講を必死に守る。
「はっ真面目だね?性特性が変わったのだって、俺達のせいじゃないだろ?なのに義務やらペナルティはワンサカある…楽しみがなきゃさ、やってられねぇの!」
「自分の番見つかる楽しみは通常の見合いでも普通にあるぞ~」
「お前、αのくせに自分でゲットしたいと思わないのかよ?」
「思ってるよ…だから講座頑張ってるの!」
「本当、真面目な事で……あ~ぁ!あの子、良かったなぁ~~、あんな子そうそう居ねえよなぁ~」
「ばっ!か!お前!本気でやめろよ?自分らが何したか、分かってんだろうな?」
「あぁ、ものっすごい惜しいことをしたと思ってるよ…あの子…生きててくれたら良いなぁ……」
「やめろって…!」
「もう一回、あそこに入ったら、また会えないかなぁ……」
「……おい!!!」
「だってさ!お前だって運命の番が欲しいんだろ?俺だってそうなんだよ…これだ!って思えるの今はあの子だけだもんなぁ……」
「人の物だって言ってるだろ…!小さな声で話せよ?誰が聞いてるのか分からないんだからな?」
普通に話していた男の声がグッと小さく緊張みを帯びて…内容は不穏な物へと変わっていき、辺りのさざめき声の中に会話は徐々に消えていく…
「そうそう……何したか分かって貰っていないとこっちは困るんですよね~?」
片耳イヤホンの男が独りごちる…
「感度は?」
「良好!」
「羽矢兄弟…私も聴ける?」
「え?まり様も?」
一瞬躊躇を見せるサングラスの男が、コーヒーショップの窓辺のテラスでゆっくりティータイムを過ごしているまりへ目を向ける。
「全て録音していますよ?音声も良好。言い逃れも逃しもしませんから…」
ニッコリと笑っている顔からは似つかわしくない言葉が出てきた。
「羽矢兄弟、私も逃すつもりも許すつもりも全くないの…だから全部知って何をするか私も考えたいの。」
「……まり様……予備の通信機です。こちらをどうぞ。前半部分は後ほど録音をお渡しします。」
あの事があってからこの護衛担当羽矢兄弟は物凄く反省し、気落ちしていた。不可抗力が重なった結果だとしても、どうしてもあちらに都合よく動きすぎていたとしか思えないからだ。最後に側を離れた宗もあの後校舎の外で足止めを食らっている…よくよく考えてみれば、嵌められた………?三人共口を揃えて出てきたくらいである。起死回生のチャンスとばかりにこの策に名乗り出たし、まりの気持ちも理解できた。
「ふふん、良いだろ?」
一枚の名刺をひらひらさせて、得意そうに男が言う。
「ふ~~ん…危篤なΩも居たもんだな?俺らみたいな後なりにさ…」
「別に?おかしい事じゃないだろ?ま、出会いが少ないっていうんでαだけどβと一緒になるやつも多いけど…」
生まれてすぐにΩ判定される子達は、有力者達にほぼ囲われてしまう傾向にあるし、後なりのΩも自分がそうだとわかると直ぐに保護シェルターへ出向く為、街中でフリーのΩとホイホイ出会う様な事はまずない。出逢ったとしても既に番持ちか、先日のΩの様に護衛付き。
「だからだろ?条件満たして優秀αだとわかればΩとの集団見合いの権利もらえるんだからさ?」
「だからがっつくなって?」
「そうそう、焦るなって…」
「フン!番う相手が居なくてβと一緒になっても不幸になる奴いるし、集団見合いに行ったって本当に自分だけの番が見つかると思うかよ?」
「まぁ、相性の問題もあるっていうけどな…?」
「だからだって、機会が多ければ多いほど自分好みのΩが見つかるかもしれねぇじゃん。」
「けど、その名刺の子も番持ちっぽくない?」
「ん~どうだろ?俺らより若く見えたけど?」
「会うつもりかよ…?」
「そりゃあねぇ?お友達も居るみたいだし?」
「うっわ…!節操ねぇなぁ…」
「なんだよ?お前は欲しくねぇの?自分だけのΩをさ?」
「欲しいよ?だから特性講座に足繁く通って見合い権をゲットしようとしてるんじゃん。噂に聞いても別に悪くないらしいぞ?」
一般的に行われている男女の出会いの場のお見合いでは無くて、αとΩの集団見合いは文字通り一生涯の伴侶となる番を見つけるお見合いの場となる。見合いに参加できる条件として、性特性講座満了した者、とあるのだ。
参加人数は両特性とも十数名と小規模を特徴としていて、性特性講座満了者は何度でも参加可能。だが、ペナルティとして性特性変換後の特性講座未受講などの違反行為をした者、過去に自身の性特性を利用し他特性の者に性行為の強要等をした者には、性特性矯正施設の入所、矯正プログラムの受講、認可試験の通過をしなければ社会復帰もできない厳しい処置が待っている。だから後なりの者達は性特性講座の受講を必死に守る。
「はっ真面目だね?性特性が変わったのだって、俺達のせいじゃないだろ?なのに義務やらペナルティはワンサカある…楽しみがなきゃさ、やってられねぇの!」
「自分の番見つかる楽しみは通常の見合いでも普通にあるぞ~」
「お前、αのくせに自分でゲットしたいと思わないのかよ?」
「思ってるよ…だから講座頑張ってるの!」
「本当、真面目な事で……あ~ぁ!あの子、良かったなぁ~~、あんな子そうそう居ねえよなぁ~」
「ばっ!か!お前!本気でやめろよ?自分らが何したか、分かってんだろうな?」
「あぁ、ものっすごい惜しいことをしたと思ってるよ…あの子…生きててくれたら良いなぁ……」
「やめろって…!」
「もう一回、あそこに入ったら、また会えないかなぁ……」
「……おい!!!」
「だってさ!お前だって運命の番が欲しいんだろ?俺だってそうなんだよ…これだ!って思えるの今はあの子だけだもんなぁ……」
「人の物だって言ってるだろ…!小さな声で話せよ?誰が聞いてるのか分からないんだからな?」
普通に話していた男の声がグッと小さく緊張みを帯びて…内容は不穏な物へと変わっていき、辺りのさざめき声の中に会話は徐々に消えていく…
「そうそう……何したか分かって貰っていないとこっちは困るんですよね~?」
片耳イヤホンの男が独りごちる…
「感度は?」
「良好!」
「羽矢兄弟…私も聴ける?」
「え?まり様も?」
一瞬躊躇を見せるサングラスの男が、コーヒーショップの窓辺のテラスでゆっくりティータイムを過ごしているまりへ目を向ける。
「全て録音していますよ?音声も良好。言い逃れも逃しもしませんから…」
ニッコリと笑っている顔からは似つかわしくない言葉が出てきた。
「羽矢兄弟、私も逃すつもりも許すつもりも全くないの…だから全部知って何をするか私も考えたいの。」
「……まり様……予備の通信機です。こちらをどうぞ。前半部分は後ほど録音をお渡しします。」
あの事があってからこの護衛担当羽矢兄弟は物凄く反省し、気落ちしていた。不可抗力が重なった結果だとしても、どうしてもあちらに都合よく動きすぎていたとしか思えないからだ。最後に側を離れた宗もあの後校舎の外で足止めを食らっている…よくよく考えてみれば、嵌められた………?三人共口を揃えて出てきたくらいである。起死回生のチャンスとばかりにこの策に名乗り出たし、まりの気持ちも理解できた。
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