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31 堪忍袋 3 *

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「………!!!!」

 叫びそうになって両手で口を抑えた。きっと両肩はビックッと派手に跳ね上がったに違いない。心臓がバクバクしてる………

「なっ…なっ…にして?……光君……??」

 バッと勢いよく振り向けば、そこには居ないはずの居ては行けないはずの光生が羽織のベッドに寝転んでた……

 驚き過ぎて力の抜けた羽織の身体は、ズルズルズルとドアを背に沈んでいく。

「なんだ?俺がいちゃいけないの?」

 ヒョイっとベッドから降りた光生は躊躇いもなく羽織の元へ。先程羽織がし損ねた鍵もしっかりと、カチャリと羽織の頭上で掛け直す。

 フルフルフル…いちゃいけないのか?の質問には首を横に振るしか出来ない。密室で二人だけで相対しては我慢など無理というもの。

「俺の事、嫌い?」

 αの彼が聞く事か?
 フルフルフルと首を振る。

「俺と同じ部屋にも居たくない?」

 フルフルフル。

「一緒に寝るなんて、もってのほか?」

 ブンブンブン!最大限に首を振る…
光生は自信をなくしていたんだろうか?αの彼からしたら酷く弱気な発言ばかりで…表情も落ち込んでて…

 離れる様に言われた後は、光生になんと説明したら良いのか見当もつかなかった。番と一緒にいるのが当たり前だし、触りたいし触られたい…出来たら今直ぐにでも子供を授かりたいくらいだったのに…それを、話し合いもせずに一方的に逃げ回って、何も告げずに鍵までつけて…無言で、全力で番を拒絶しまくっていたのは羽織だった…光生から嫌われて捨てられてもおかしく無いのは羽織だったのに…

「何か……言う事は?」

 静かな光生の声は、少し震えていたけど、低く、とても低く凄く怒っている事が分かる。

「ごめん…なさい…」

 部屋に充満するαの香り…座り込んだまま立ち上がる力も無い…こんなにΩは無力なのに、こんなに自分はこの人を求めているのに、なんで?なんで、離れても大丈夫なんて思ったの?なんで?

「俺が…お前に逃げられてて、平気だと思った?」

 抑揚が無い光君の声…少し、震えてる?

 光生の手が羽織に伸びる。そっとだけど、絶対に逃さない位の確かな力で、羽織は囚われた…

 あぁ……光君の手…熱くて、今は緊張してる?大好きで、死んでも絶対に離したくなんて無いのに、どうして離すような事しちゃったのかなぁ……

「羽織……」

 グイッと力を込めて光生の方へ引き寄せられる。

「はお…羽織……」

 熱い吐息…耳の、直ぐ横で聞こえる…

「羽織…!」
 
 あぁ……光君の匂いだ…ギュウッと抱き締められた途端に身体中で吸い取るみたいに、その香りに酔いしれて、求めて…こんなに、こんなに待ち望んでたなんて…

 あっという間に、ベッドに放り投げられる勢いで押し倒されてた。

「俺は、番の解消方法なんて、知らない…!」

 吐き出すように紡がれた光君の口からどんな暴力よりも酷い言葉が聞こえて来た。

 番の、解消……?

「どれだけ、お前がこの関係を嫌がってても…俺は…お前と離れるなんて、出来ない…!お前に、捨てられるような事があっても…!!」

 光君が…泣いてる?プライドの高いαが…?ギリ、と歯を食いしばって、眉をしかめて…胸が、最大限にズクズク痛んでる…大切な、大好きな人を…?こんなにも苦しめてたなんて…捨ててない、嫌じゃない、離れたく無い!

「捨ててない…!僕から光君を捨てるなんて、できるわけないじゃ無いか!離れて行くなんて!そんな事、考えた事もないよ!」

 僕ももう泣いてる。顔がグシャグシャでも、もうどうでも良かった。
 
 光君が良い、光君が好き…なんで離れるの?僕を捨てるの?どうして何もしないの?もう嫌いになっちゃったの?
 
 光君に抱きつきながら熱で浮かされたように言葉が出る。光君にはなんの責任も責める所も無いのに、光君を責めるような言葉が止まらない。
番の匂いに当てられて、頭はもうほとんど何も考えられない……ただ、番を求めるだけ…

 僕の番、僕の全て…早く僕に触れて?僕に触れさせて?僕と一つになって………!?

「お前が、ここ数日凄いおかしいから…部屋に鍵までかけるし…もう、ダメかと…!?
くそっ!!もう、次はないからな!もう!こんなのは二度とごめんだ!分かったか、羽織!?」

 羽織が普段聞いた事もないような怒鳴り声で言い捨てて、光生は羽織に噛み付く様なキスを落とす…

 唇も舌も、舐めて吸い上げて、噛み付いて、全てを貪り尽くしてしまうかの様な執拗なキス…苦しい筈なのに甘くて、噛まれている筈なのに気持ちが良くて、もっと、もっとと自分からも求めてしまう、そんなキス…
キュウッときつく吸い上げられた時に達してしまうほど、キスだけて羽織は翻弄されて行く……
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