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25 お見舞い 2
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事の始めは光大とかなでとの結婚話が持ち上がった時からで、既に光大には三人のΩ妻が居た。この三人は光生の時と同じ幼馴染の様な関係で仲も良い。後から家庭に入ったかなでが遅れをとらぬ様に変な気苦労を背負わなくてもいい様にとかなでの父で光大義理の父からある条件をつけられた。ここまでは羽織も聞いたことがある。
その条件が、かなで以外の妻との間に子供を作らない事。本宅にかなで以外の妻を住まわせないこと。かなでが受け継ぐべき事業はそのままかなでが引継ぎ、解体や売却はしない事、そしてそのままかなでの子供に受け継がせること。
今思えば横暴にも思える条件だが、当時事業の拡大を図ったばかりに大きな赤字を出してしまった天翔グループにはかなでが引き継ぐ事業はどうしても手に入れたいものだった。他のΩ妻は従業員の家庭から募って集めて来た者たちで実家の財力権力どれをとっても誰もかなでを上回る者など居なかった。
光大はそれ全てを快諾し、かなでを妻として迎え光生が生まれた。
しかし、光大もΩ妻を守ると幸せにすると誓ったαの夫だ。他のΩ妻の間の子供も諦められるものではなかったのだ。何度も他の妻達と話し合った。かなでは表立って他の妻達を牽制する様な態度も行動も取らなかったが、父が言う様に本宅に他の妻と一緒に住む事は嫌だと拒否したのだ。結婚当初の約束があるからこれ以上の説得を諦め、光大は他の方法を取ることにした。
かなでの子供がかなでの継ぐべき分を全て継げる様にすれば問題なかろう、と。光大は海外に事業進出を図る。そして比較的体力と適応力に秀でていた優季を海外事業部の代表として海外に送り出した。優季と光大の子供はあちらに優季が移ってから授かった子供だそうだ。既にあちらの教育を施され将来は海外事業の全てを引き継がせるつもりで光大は準備を進めており、かなではこの事をまだ知らないでいる。
優季の息子の名前は光司。歳は16歳だそう。
「お義父さんはかなでさんに命令はしなかったんですね?」
話を聞いていて一番に疑問に思った事。Ωは自分の番であるαに深い所で逆らえない。嫌、逆らおうとも思えない。自分の意見はちゃんと持っていて、人形の様なものではないけど、けれどΩはαに従う事に物凄く喜びを感じるんだ。それを優季さんだって十二分に分かっているだろう。それは、かなでさんもだ。
「そう、自分の満足よりもかなでさんのお父さんとの約束を守ろうとした鉄の意思を持っている人だよ。かなでさんは。」
本能で流されず理性を持って考える。Ωには少し苦手な分野…凄いんだ、かなでさん…
「契約を守り、間違える事なく履行する。αの得意とする所だね…かなでさんはα側に立ってαの立場で対応したんだ。」
だから、光大もかなでの意思を尊重し命令をしなかった…後で後悔する様な事になってもかなでに対する礼儀だと光大は言っていたと言う。
「僕から見たらあの二人はαとΩじゃなくて共同経営者に見えるなぁ、うん。これがしっくりくる。」
「はぁ…Ωにもそんなタイプあるんですね…」
「ん?あの人βからの後なりだからかな?」
ビクッと羽織の肩が揺れた…後なり…あのαもそう言ってたっけ?
「羽織君?何か気に触る事でも?」
「あ、いえ!大丈夫です…!」
「耐えられそうにない事があったら遠慮なく言いなさいね?」
「はい。ありがとうございます。」
「多分……君が心配している事は、時期に解決するよ。きっとそう遠くは無いうちにね…」
「優季さん……?」
「あぁ、そんな不安そうな顔しないで?胎教に悪いから…今度は何か可愛らしいものでも持ってこようか?」
「可愛らしい物?」
「ふふっこれも秘密だけどね?うちの光司は小さい頃からウサギのぬいぐるみが好きでねぇ。これが無いと落ち着かなくて眠れなかったんだよ?」
「へぇ。可愛らしいですね?」
「ふふっ君の場合は光生君かな?」
「こ、光君のぬいぐるみですか?」
「え……?それは、ちょっと怖いかもしれないよ?僕が光生君の等身大のぬいぐるみを持って来たら君どうする?」
「と、等身大?それは……ちょっと怖いかもしれません……」
ただでさえαはいるだけで威圧があるのに、それの等身大のぬいぐるみって……ずっと?病室にいるんでしょう?
「プックククククク……」
身動き一つもしない光生人形がぬ~~んと病室の守護神の様に立ってたら本当違和感ありすぎて返って笑えてくる。
「何が怖いんだ?羽織?」
ビックリした!
「光君!?」
「やぁ、こんばんは。お邪魔しているよ?光生君。」
病室の入り口に、人形じゃ無い喋る本物の光生が立っていた。
その条件が、かなで以外の妻との間に子供を作らない事。本宅にかなで以外の妻を住まわせないこと。かなでが受け継ぐべき事業はそのままかなでが引継ぎ、解体や売却はしない事、そしてそのままかなでの子供に受け継がせること。
今思えば横暴にも思える条件だが、当時事業の拡大を図ったばかりに大きな赤字を出してしまった天翔グループにはかなでが引き継ぐ事業はどうしても手に入れたいものだった。他のΩ妻は従業員の家庭から募って集めて来た者たちで実家の財力権力どれをとっても誰もかなでを上回る者など居なかった。
光大はそれ全てを快諾し、かなでを妻として迎え光生が生まれた。
しかし、光大もΩ妻を守ると幸せにすると誓ったαの夫だ。他のΩ妻の間の子供も諦められるものではなかったのだ。何度も他の妻達と話し合った。かなでは表立って他の妻達を牽制する様な態度も行動も取らなかったが、父が言う様に本宅に他の妻と一緒に住む事は嫌だと拒否したのだ。結婚当初の約束があるからこれ以上の説得を諦め、光大は他の方法を取ることにした。
かなでの子供がかなでの継ぐべき分を全て継げる様にすれば問題なかろう、と。光大は海外に事業進出を図る。そして比較的体力と適応力に秀でていた優季を海外事業部の代表として海外に送り出した。優季と光大の子供はあちらに優季が移ってから授かった子供だそうだ。既にあちらの教育を施され将来は海外事業の全てを引き継がせるつもりで光大は準備を進めており、かなではこの事をまだ知らないでいる。
優季の息子の名前は光司。歳は16歳だそう。
「お義父さんはかなでさんに命令はしなかったんですね?」
話を聞いていて一番に疑問に思った事。Ωは自分の番であるαに深い所で逆らえない。嫌、逆らおうとも思えない。自分の意見はちゃんと持っていて、人形の様なものではないけど、けれどΩはαに従う事に物凄く喜びを感じるんだ。それを優季さんだって十二分に分かっているだろう。それは、かなでさんもだ。
「そう、自分の満足よりもかなでさんのお父さんとの約束を守ろうとした鉄の意思を持っている人だよ。かなでさんは。」
本能で流されず理性を持って考える。Ωには少し苦手な分野…凄いんだ、かなでさん…
「契約を守り、間違える事なく履行する。αの得意とする所だね…かなでさんはα側に立ってαの立場で対応したんだ。」
だから、光大もかなでの意思を尊重し命令をしなかった…後で後悔する様な事になってもかなでに対する礼儀だと光大は言っていたと言う。
「僕から見たらあの二人はαとΩじゃなくて共同経営者に見えるなぁ、うん。これがしっくりくる。」
「はぁ…Ωにもそんなタイプあるんですね…」
「ん?あの人βからの後なりだからかな?」
ビクッと羽織の肩が揺れた…後なり…あのαもそう言ってたっけ?
「羽織君?何か気に触る事でも?」
「あ、いえ!大丈夫です…!」
「耐えられそうにない事があったら遠慮なく言いなさいね?」
「はい。ありがとうございます。」
「多分……君が心配している事は、時期に解決するよ。きっとそう遠くは無いうちにね…」
「優季さん……?」
「あぁ、そんな不安そうな顔しないで?胎教に悪いから…今度は何か可愛らしいものでも持ってこようか?」
「可愛らしい物?」
「ふふっこれも秘密だけどね?うちの光司は小さい頃からウサギのぬいぐるみが好きでねぇ。これが無いと落ち着かなくて眠れなかったんだよ?」
「へぇ。可愛らしいですね?」
「ふふっ君の場合は光生君かな?」
「こ、光君のぬいぐるみですか?」
「え……?それは、ちょっと怖いかもしれないよ?僕が光生君の等身大のぬいぐるみを持って来たら君どうする?」
「と、等身大?それは……ちょっと怖いかもしれません……」
ただでさえαはいるだけで威圧があるのに、それの等身大のぬいぐるみって……ずっと?病室にいるんでしょう?
「プックククククク……」
身動き一つもしない光生人形がぬ~~んと病室の守護神の様に立ってたら本当違和感ありすぎて返って笑えてくる。
「何が怖いんだ?羽織?」
ビックリした!
「光君!?」
「やぁ、こんばんは。お邪魔しているよ?光生君。」
病室の入り口に、人形じゃ無い喋る本物の光生が立っていた。
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