[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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122、侯爵夫人の心得 2 *

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「あ……」
 
 身体を這う熱い大きな手はいつもと変わらないヒュンの手だ。湿った熱い唇も舌も、全部、全部愛しい人の…
 
「ウリー…?大丈夫か?」

 一瞬、意識でも飛んでいたのだろうか……ベッドに沈んだままウリートは手をヒュンダルンにしっかりと握り締められて、上からは心配そうな揺れる新緑の瞳が覗き込む。

 この角度からヒュンを見上げるのは久しぶり…旅行中は、ずっと我慢させてしまってた…

「ヒュン……大丈夫です。大丈夫だから……」

 握られていない方の手で、そっと汗ばんで上気しているヒュンダルンの頬をウリートは優しく撫でる。ゴーリッシュ領に来るまでの間ヒュンダルンはウリートに全く手を出してこなかった。それは単にウリートの体調と身体を慮ってのヒュンダルンの優しさだろう。本人はどれだけ我慢していたのか…

 伸ばされてきたヒュダルンの手にウリートはスリスリと頬擦りしながら、もう一度ヒュンダルンを見つめあげた。

「我慢させてしまって、ごめんなさい?………ヒュンの、好きに…していいですから………」

 言い終われば一瞬ヒュンダルンは眉を寄せ、苦しそうな表情をする。そしてまだウリートの中にいる肉塊はグッと質量を増した。

「ふ…っ」

 それだけでゾクゾク、とウリートの身体の中心から背中にかけて甘い痺れが走り、勝手に背がしなる。

 力…入んない………

 こんな時にはしがみつきたいと必死に腕を伸ばすのに、与えられる快感に身体が乗っ取られてしまったかの様に、手足が自由にならない。

「……ウリー…無理はさせたくないんだ……煽るな……」

 少し寄せられた眉にうっすらと上気した精悍な頬、汗が浮かんで張り付いている前髪さえも愛しく見える。

「あっ……僕、だって…ヒュンに、触りたい、し触れ、あいたかったんです…っ」

 ググッと逞しい腰が押し進められてくる度にクチュリと湿った音が響いて来る羞恥にも、ヒュンダルンと一緒だから、だからこんなにも、浅ましい位に興奮して、愛しくて…やめて欲しいだなんて、思えない…

「はっ…ん…あぅ……うっあ…ぁ……」

 苦しそうに耐えていたヒュンダルンの動きが速くなり、体内を擦り上げて来る剛直が硬さを増して、ウリートの弱い所を突いてくる……

「あっ…!だ……めっ…!」

 もう、何回目だろう…自分ばかり精を放って、振り回されて…また、落とされそうになるのが嫌で頭を振って、必死に耐えようとする。

 まだ…ヒュンは満足してない……まだ、繋がってたい……

 いやいやをしながら必死にヒュンダルンを求めて、縋っていく…まだ……まだ…
 










「昼からだ…!昼からにしてもらえ!」

 ヒュン……?

「はい。承知いたしました。」

 誰か訪室者があったのだろうか?聞き覚えのない声がした。

 マリエッテじゃない………?

 うとうとと微睡む瞼が重くて目が開かない……

「若様は訓練場でよろしいので?」

 マリエッテだ…………

「ああ。王都を離れているからな。騎士団の代表として国境付近の騎士達の技量を改めるつもりでいる。ウリーを頼んだ。」

「行ってらっしゃいませ。」

 あ……行っちゃう。ヒュン………

「ヒュ…ン…?」

 喉がカラカラ……

「お目覚めですか?ウリート様。」

 明るい室内にマリエッテの声が響く。

「マリエッテ…?おはよう?」

 首を回しても、大きな上質なベッドには既にヒュンダルンはいない。

「若様ならばもう出られましたよ?ここにゴーリッシュ領に滞在中もお仕事はある様ですから。ウリート様には少しお寂しいでしょうけれど…」

 いつもの様に部屋のカーテンをマリエッテは開け始める。陽の光が入れば、金青と白で統一された室内が明るく優しい風合いを出していて、初めて泊まる所なのに安らいだ雰囲気を与えてくれた。

「そう……」

 ヒュンは自分の役目を全うする。誇り高い騎士だから…ならば、僕も自分の勤めを果たさなければ…

「マリエッテ、義母上の所へは何時ごろ伺えばいいかな?」

 ゴーリッシュ侯爵夫人から夫人の心得を享受される。それを受け継ぐのが僕の仕事だ。
 
「ふふ…侯爵夫人もウリート様のやる気だけはお認めになられるでしょうけれども、まずは入浴をして、しっかりとお食事を摂りましょう?侯爵夫人への御目通りは午後からに、というのが若様のおいいつけです。」

 マリエッテの言う様に、はっきり言ってまだちゃんと身体が動かない………昨夜の事を思い出して、一気に火がつきそうになる顔をウリートはベッドのシーツに伏せた。

「はい………」

 ニッコニコのマリエッテに促され、言われるままにウリートは身支度を整えていく。上手く歩けないのは、ゆっくり歩いて誤魔化すしかなさそうだ。

















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