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117、ゴーリッシュ侯爵夫妻 1
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「ヒュン!!やっと帰って来た!!」
カッバァー……そんな擬音が聞こえて来そうなほどの包容がヒュンダルンの胸に飛び込んで来た。
やっとゴーリッシュ侯爵邸に到着した一行は馬車から降りて凝り固まった身体を解す間もなく邸内に案内されたのだが、先ず最初にウリートの目に入って来た光景がヒュンダルンが金髪の美女に激しく包容を受けているこの場面であった……
「う……」
流石のヒュンダルンも隙をつかれた状態で、目にも留まらないほどのスピードで懐中に飛び込んで来た長身の美女を受け止めたのには骨が折れたのだろう、短くうめき声をあげている。
「この、馬鹿馬鹿馬鹿息子!!ちっとも帰って来やしないんだから!!あのまま連絡が無かったら一軍率いて王都に乗り込もうかと思ってたのよ!!」
「…………母上…………」
息子………母……上!?
一連の流れにただ目を追うだけで声も出ないウリートの耳に、ヒュンダルンの低い声が入ってくる。ビックリしすぎてこれ以上ない程、ウリートは瞳を大きく開けてヒュンダルンの胸に飛び込んで来た豊かな金髪の髪をした長身の美女とヒュンダルンを見比べてしまう。
はっ………!これは、不作法なのでは?ヒュンは母上と言っていたのだから、この方がゴーリッシュ侯爵夫人…僕の義母上…!ご挨拶をしなければ……!
ただただ呆然と目の前の出来事を見つめるだけだったウリートが我に返る。
「あ、あの…ご挨拶が遅れました事、深くお詫びいたします…私はヒュンダルン様の婚約者とならせていただきました、アクロース侯爵家のウリート・アクロースと申します。この度、ゴーリッシュ侯爵夫妻に改めまし………」
「まあ!!貴方なの!?貴方がうちの嫁ね!!」
なんとウリートの挨拶が終わる前に、ゴーリッシュ侯爵夫人は見事な金髪を振りまいてグリンとウリートの方へと顔を向け、完全にウリートの挨拶を遮断する様に言葉をかけて来た。ゴーリッシュ侯爵夫人を初めて目の前にするウリートだ。事前にどんな人柄かを深く聞いてはいなかったが、ヒュンダルンが敬愛している義母となる方。それは素晴らしい淑女であると勝手に思い込んでいた。
男性であるウリートよりも更に上を行く長身のゴーリッシュ侯爵夫人はヒュンダルンの様な深い緑の瞳を持つ。豊かな金髪の長い髪は高い所で一つに結わえそのまま流しているだけだ。母と言うのだから年齢も中年に差し掛かろうと言うのに、少し小麦色に焼けた肌には皺の一つもない。非常に若々しい姿をしている。一番最初の登場とその容姿だけでもウリートを驚かせるには十分であったのに、更に追加で侯爵夫人の服装はどう見ても淑女には見えないものだった…
今、狩から帰って来ました…
と言われれば納得する、そんな装いでヒュンダルンに飛びついて来たのだから…
その侯爵夫人が次はウリートへとグイグイ迫ってくる。
「お初にお目にかかるわ!私はゴーリッシュ侯爵夫人のリヤーナ・ゴーリッシュよ。今日のこの日をどれだけ楽しみにしていたか分かる!?昨日は眠れなかったのだから!!」
ガッシとゴーリッシュ侯爵夫人と名乗ったリヤーナはウリートの両手を掴みブンブンと振り回して握手、らしきものをする。
お、お力が……強い……?
剣技も、馬術も、体術にも縁遠いウリートはブンブンと振り回されるままになる。
「これこれ、リヤーナ…ウリート殿が困っておられるぞ?」
今まで気がつかなかったけれども、どうやらこの玄関ホールにはリヤーナ様以外にも人が……
「母上!ウリーの目が回ってしまいますから、程々に!」
ウリートがクラクラして来そうになる前に、ヒュンダルンがヒョイとウリートを自分の胸元に抱え込んで助けてくれる。
「えええ!良いではないの!?待ちに待った、待って、待って、待ち続けたうちの嫁よ!?もう少し、親交を深めても罰は当たらないでしょう?」
ヒュンダルンの行動に異議を申し立てるリヤーナ侯爵夫人の後ろから、先程の声の主が、のっそりと大きな影と共に近づいて来た。
「これ、リヤーナ。大切なウリート殿を困らせるものではない。それにウリート殿は嫁ではなく、婿ではないか。」
近づいてきて視界に入った人物は長身のリヤーナ様を更に悠に超えてくる大きな体格を持つ大きな男性だ。焦茶の髪と豊かな髭を蓄えた、大きな大きな熊の様な大男だった。
「婿……?」
リヤーナ侯爵夫人はその大男に恐れもせずに下からジッと睨めつける様に睨みあげると、低い声でそう返す。
「嫁であっているでしょう?ヒュン?うちの可愛いヒュンの嫁で!!ウリート殿が婿というのならば、ヒュンが組み敷かれているとでも言いたいの?」
!?!?
「いえ、私が組み敷いています。」
ヒュン!!!???
「ほら、ご覧なさい!嫁ではないの!ならば私にとっても大切な可愛い嫁です!その嫁を歓迎して何が悪いというの!」
「リヤーナ………」
大きな熊の様な男は人間で、そしてここにいる誰よりも紳士の様だ。大いに困って今すぐにでもこの場から消え去りたいウリートの気持ちをこの中で一番汲んでくれそうなのは、きっとこの御仁に違いない…!
カッバァー……そんな擬音が聞こえて来そうなほどの包容がヒュンダルンの胸に飛び込んで来た。
やっとゴーリッシュ侯爵邸に到着した一行は馬車から降りて凝り固まった身体を解す間もなく邸内に案内されたのだが、先ず最初にウリートの目に入って来た光景がヒュンダルンが金髪の美女に激しく包容を受けているこの場面であった……
「う……」
流石のヒュンダルンも隙をつかれた状態で、目にも留まらないほどのスピードで懐中に飛び込んで来た長身の美女を受け止めたのには骨が折れたのだろう、短くうめき声をあげている。
「この、馬鹿馬鹿馬鹿息子!!ちっとも帰って来やしないんだから!!あのまま連絡が無かったら一軍率いて王都に乗り込もうかと思ってたのよ!!」
「…………母上…………」
息子………母……上!?
一連の流れにただ目を追うだけで声も出ないウリートの耳に、ヒュンダルンの低い声が入ってくる。ビックリしすぎてこれ以上ない程、ウリートは瞳を大きく開けてヒュンダルンの胸に飛び込んで来た豊かな金髪の髪をした長身の美女とヒュンダルンを見比べてしまう。
はっ………!これは、不作法なのでは?ヒュンは母上と言っていたのだから、この方がゴーリッシュ侯爵夫人…僕の義母上…!ご挨拶をしなければ……!
ただただ呆然と目の前の出来事を見つめるだけだったウリートが我に返る。
「あ、あの…ご挨拶が遅れました事、深くお詫びいたします…私はヒュンダルン様の婚約者とならせていただきました、アクロース侯爵家のウリート・アクロースと申します。この度、ゴーリッシュ侯爵夫妻に改めまし………」
「まあ!!貴方なの!?貴方がうちの嫁ね!!」
なんとウリートの挨拶が終わる前に、ゴーリッシュ侯爵夫人は見事な金髪を振りまいてグリンとウリートの方へと顔を向け、完全にウリートの挨拶を遮断する様に言葉をかけて来た。ゴーリッシュ侯爵夫人を初めて目の前にするウリートだ。事前にどんな人柄かを深く聞いてはいなかったが、ヒュンダルンが敬愛している義母となる方。それは素晴らしい淑女であると勝手に思い込んでいた。
男性であるウリートよりも更に上を行く長身のゴーリッシュ侯爵夫人はヒュンダルンの様な深い緑の瞳を持つ。豊かな金髪の長い髪は高い所で一つに結わえそのまま流しているだけだ。母と言うのだから年齢も中年に差し掛かろうと言うのに、少し小麦色に焼けた肌には皺の一つもない。非常に若々しい姿をしている。一番最初の登場とその容姿だけでもウリートを驚かせるには十分であったのに、更に追加で侯爵夫人の服装はどう見ても淑女には見えないものだった…
今、狩から帰って来ました…
と言われれば納得する、そんな装いでヒュンダルンに飛びついて来たのだから…
その侯爵夫人が次はウリートへとグイグイ迫ってくる。
「お初にお目にかかるわ!私はゴーリッシュ侯爵夫人のリヤーナ・ゴーリッシュよ。今日のこの日をどれだけ楽しみにしていたか分かる!?昨日は眠れなかったのだから!!」
ガッシとゴーリッシュ侯爵夫人と名乗ったリヤーナはウリートの両手を掴みブンブンと振り回して握手、らしきものをする。
お、お力が……強い……?
剣技も、馬術も、体術にも縁遠いウリートはブンブンと振り回されるままになる。
「これこれ、リヤーナ…ウリート殿が困っておられるぞ?」
今まで気がつかなかったけれども、どうやらこの玄関ホールにはリヤーナ様以外にも人が……
「母上!ウリーの目が回ってしまいますから、程々に!」
ウリートがクラクラして来そうになる前に、ヒュンダルンがヒョイとウリートを自分の胸元に抱え込んで助けてくれる。
「えええ!良いではないの!?待ちに待った、待って、待って、待ち続けたうちの嫁よ!?もう少し、親交を深めても罰は当たらないでしょう?」
ヒュンダルンの行動に異議を申し立てるリヤーナ侯爵夫人の後ろから、先程の声の主が、のっそりと大きな影と共に近づいて来た。
「これ、リヤーナ。大切なウリート殿を困らせるものではない。それにウリート殿は嫁ではなく、婿ではないか。」
近づいてきて視界に入った人物は長身のリヤーナ様を更に悠に超えてくる大きな体格を持つ大きな男性だ。焦茶の髪と豊かな髭を蓄えた、大きな大きな熊の様な大男だった。
「婿……?」
リヤーナ侯爵夫人はその大男に恐れもせずに下からジッと睨めつける様に睨みあげると、低い声でそう返す。
「嫁であっているでしょう?ヒュン?うちの可愛いヒュンの嫁で!!ウリート殿が婿というのならば、ヒュンが組み敷かれているとでも言いたいの?」
!?!?
「いえ、私が組み敷いています。」
ヒュン!!!???
「ほら、ご覧なさい!嫁ではないの!ならば私にとっても大切な可愛い嫁です!その嫁を歓迎して何が悪いというの!」
「リヤーナ………」
大きな熊の様な男は人間で、そしてここにいる誰よりも紳士の様だ。大いに困って今すぐにでもこの場から消え去りたいウリートの気持ちをこの中で一番汲んでくれそうなのは、きっとこの御仁に違いない…!
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