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112、衝撃の告白 3
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「おや、ウリーはこれで騙されてはくれなかったか?」
困ったな、そんな風にアランドは笑う。
「騙されるなんて…もしや、兄様、お子のお話も作り話と?」
「いや、それは本当だよ。両親にもウリーにもセージュにも正式に紹介する席を今度作ろう。暖かく迎えてくれると良いのだが?」
「勿論です。僕も会いたいですし!」
グッと拳を握りしめて返答したのだから、僕の本気度も分かってくれたでしょう?さ、次は兄様の番ですよ?
目に力をしっかり入れて、アランドの綺麗な瞳をウリートはそらさず見つめ返す。
「ふふ…やはりウリーは賢いね?これは…」
「俺がやった。」
ドアの側に立つヒュンダルンがアランドの言葉を遮った。
「え…ヒュンが…?」
二人はずっと気の合う友人同士と思ってて………
「ウリー、理由がちゃんとあるんだよ?」
ヒュンダルンを見つめて、唖然としているウリートの方にヒュンダルンはゆっくりと歩いて来る。アランドは殴ったであろうヒュンダルンを庇う様な物言いだ。
「理由は二つだ。」
まず一つ目、アランドが先程告白した様に、ウリートをひと時の遊び相手にしようと薬まで盛ったパナイム商団の長男はアランドの子供の叔父となる者だ。しかし高位貴族家との繋がりを重要視せず、己が欲望に走ったが為に今回の騒動となった。このことに関してアランドにも責任があるとヒュンダルンは判断したわけだ。アランドが早々に商団の令嬢との関係を公にし、家族を引き合わせていたら起こりようが無かったと思われるからだ。
そして二つ目、ウリートの身に降り掛かってきた事件の現場、遺跡周辺はアランドが率いる第3騎士団管轄下だ。アランドも人気のない場で行われている大人達の遊びの事情は把握していたのだ。しかし、ウリートとは全く接点のない人種間で行われている事であるし、遊びとしてはそれ事態は法に反することでもない。本人達の裁量に任せ、個人で楽しめる範囲では高尚なお遊びとして貴人の嗜みなどとも謳われているほど。だからアランドとしても遺跡周辺に集まってくる者達を一掃することは仕事の内ではないのだが、この度のように全く関係ない貴人に被害が出てしまった。それも、強制的に薬を使用するという最悪の結果を叩き出して…なのでこの地域周辺の風紀を乱す、そこを取り締まれなかった点において第3騎士団、その長であるアランドの責任とヒュンダルンはアランドに責を突きつけたのだ。
「そういう事…これは私の受けるべきけじめだな。」
「…………では、僕にも…その責任の一旦はありますね?」
「ん?ウリーにはないよ?」
「僕が安易に付いていかなければよかったんですから…」
人を疑うこともせず、ヒョイヒョイと付いて行った方も悪いだろうから…
「その責はもう受けただろう?」
軽いため息と共にヒュンダルンはそんなことをさらっと口にする。受けた、ヒュンダルンが言ったその言葉の意味はよく分かる。ウリートはそっと自分の手首を服の上から摩ってみた。気を抜けば顔面は紅潮し、表情がにやけてしまいそうになってくるから、あえて無関心さを必死に保つ。
だからそうですね、とアランドの前で頷くには無理がありすぎて何も言えずに黙ってしまった。
「………」
「ふ……ん…?ウリー。ま、ヒュンダルンがああ言っているのならばそうなんだろう?だから君はもう何も気にしなくて良いんじゃないかな?」
不自然なウリートの挙動にアランドは深く追求しないでくれて、ウリートはホットため息を漏らした。
「けど、あまりにも酷いお仕置きだったならば兄に言いなさい。それならばこちらとしても容赦はしないからね?」
一瞬低くなったアランドの声と、笑顔なのに笑っている様には決して見えないアランドのその表情が余りにも不自然すぎてウリートは首を傾げる。
「兄様…?」
「ああ。いい…こちらの話だ。」
そっとウリートの髪を整えながらアランドは表情を柔らかくする。
「アランド、そろそろ時間だろ?」
ゆっくりと話しこめるかと思いきや、ヒュンダルンはアランドの退室を促しだした。もしかしたらアランドもヒュンダルンもまだ勤務時間は終わってないのかもしれない。
「そうだな…それにウリーにはまだ休養が必要そうだね?」
「ええと、まぁ……」
体調的には問題ないのだけれども、不慣れな身体の至らなさが今回の問題点で……
「兎に角、もう二度とあんな目には遭わせないと誓うよ。アイツにも厳しい処遇がなされたから、まぁ、我らは業腹だが、落とし所としては悪くはないからな。」
「あいつ?」
「ウリーには関係ないことだ。ほら、アランドもう行け?」
アランドが誰の事を指して言っていたのか確認する前に、ヒュンダルンはウリーの耳を塞ぐように両手で頬を包み込んできた。
フワッと香るヒュンダルンの香りに、大きな手の暖かさ…こうされるだけで、ホッと落ち着くような、全身がザワザワと熱くなってくるような感覚に陥ってしまう。
「やれやれ、ヒュンダルン過保護だね?」
「お前に言われたくはないぞ、アランド。」
「ハイハイ、そう言うことにしておこう。じゃ、ウリーを頼んだよ?」
「言われなくとも、俺の伴侶だ…」
ヒュンダルンは、そのままウリートの頭に唇を落とす。
「ちょ…!ヒュン!ちょっと!」
実の兄の前でそんな事をされるとは思ってもいなかったウリートは目を白黒させて慌てふためく。
「ふふふ、少し妬けるが仲良き事はいい事だよ、ウリー。お互いに夫を大切にね?」
アランドはウリートを軽く揶揄い退室して行った。
困ったな、そんな風にアランドは笑う。
「騙されるなんて…もしや、兄様、お子のお話も作り話と?」
「いや、それは本当だよ。両親にもウリーにもセージュにも正式に紹介する席を今度作ろう。暖かく迎えてくれると良いのだが?」
「勿論です。僕も会いたいですし!」
グッと拳を握りしめて返答したのだから、僕の本気度も分かってくれたでしょう?さ、次は兄様の番ですよ?
目に力をしっかり入れて、アランドの綺麗な瞳をウリートはそらさず見つめ返す。
「ふふ…やはりウリーは賢いね?これは…」
「俺がやった。」
ドアの側に立つヒュンダルンがアランドの言葉を遮った。
「え…ヒュンが…?」
二人はずっと気の合う友人同士と思ってて………
「ウリー、理由がちゃんとあるんだよ?」
ヒュンダルンを見つめて、唖然としているウリートの方にヒュンダルンはゆっくりと歩いて来る。アランドは殴ったであろうヒュンダルンを庇う様な物言いだ。
「理由は二つだ。」
まず一つ目、アランドが先程告白した様に、ウリートをひと時の遊び相手にしようと薬まで盛ったパナイム商団の長男はアランドの子供の叔父となる者だ。しかし高位貴族家との繋がりを重要視せず、己が欲望に走ったが為に今回の騒動となった。このことに関してアランドにも責任があるとヒュンダルンは判断したわけだ。アランドが早々に商団の令嬢との関係を公にし、家族を引き合わせていたら起こりようが無かったと思われるからだ。
そして二つ目、ウリートの身に降り掛かってきた事件の現場、遺跡周辺はアランドが率いる第3騎士団管轄下だ。アランドも人気のない場で行われている大人達の遊びの事情は把握していたのだ。しかし、ウリートとは全く接点のない人種間で行われている事であるし、遊びとしてはそれ事態は法に反することでもない。本人達の裁量に任せ、個人で楽しめる範囲では高尚なお遊びとして貴人の嗜みなどとも謳われているほど。だからアランドとしても遺跡周辺に集まってくる者達を一掃することは仕事の内ではないのだが、この度のように全く関係ない貴人に被害が出てしまった。それも、強制的に薬を使用するという最悪の結果を叩き出して…なのでこの地域周辺の風紀を乱す、そこを取り締まれなかった点において第3騎士団、その長であるアランドの責任とヒュンダルンはアランドに責を突きつけたのだ。
「そういう事…これは私の受けるべきけじめだな。」
「…………では、僕にも…その責任の一旦はありますね?」
「ん?ウリーにはないよ?」
「僕が安易に付いていかなければよかったんですから…」
人を疑うこともせず、ヒョイヒョイと付いて行った方も悪いだろうから…
「その責はもう受けただろう?」
軽いため息と共にヒュンダルンはそんなことをさらっと口にする。受けた、ヒュンダルンが言ったその言葉の意味はよく分かる。ウリートはそっと自分の手首を服の上から摩ってみた。気を抜けば顔面は紅潮し、表情がにやけてしまいそうになってくるから、あえて無関心さを必死に保つ。
だからそうですね、とアランドの前で頷くには無理がありすぎて何も言えずに黙ってしまった。
「………」
「ふ……ん…?ウリー。ま、ヒュンダルンがああ言っているのならばそうなんだろう?だから君はもう何も気にしなくて良いんじゃないかな?」
不自然なウリートの挙動にアランドは深く追求しないでくれて、ウリートはホットため息を漏らした。
「けど、あまりにも酷いお仕置きだったならば兄に言いなさい。それならばこちらとしても容赦はしないからね?」
一瞬低くなったアランドの声と、笑顔なのに笑っている様には決して見えないアランドのその表情が余りにも不自然すぎてウリートは首を傾げる。
「兄様…?」
「ああ。いい…こちらの話だ。」
そっとウリートの髪を整えながらアランドは表情を柔らかくする。
「アランド、そろそろ時間だろ?」
ゆっくりと話しこめるかと思いきや、ヒュンダルンはアランドの退室を促しだした。もしかしたらアランドもヒュンダルンもまだ勤務時間は終わってないのかもしれない。
「そうだな…それにウリーにはまだ休養が必要そうだね?」
「ええと、まぁ……」
体調的には問題ないのだけれども、不慣れな身体の至らなさが今回の問題点で……
「兎に角、もう二度とあんな目には遭わせないと誓うよ。アイツにも厳しい処遇がなされたから、まぁ、我らは業腹だが、落とし所としては悪くはないからな。」
「あいつ?」
「ウリーには関係ないことだ。ほら、アランドもう行け?」
アランドが誰の事を指して言っていたのか確認する前に、ヒュンダルンはウリーの耳を塞ぐように両手で頬を包み込んできた。
フワッと香るヒュンダルンの香りに、大きな手の暖かさ…こうされるだけで、ホッと落ち着くような、全身がザワザワと熱くなってくるような感覚に陥ってしまう。
「やれやれ、ヒュンダルン過保護だね?」
「お前に言われたくはないぞ、アランド。」
「ハイハイ、そう言うことにしておこう。じゃ、ウリーを頼んだよ?」
「言われなくとも、俺の伴侶だ…」
ヒュンダルンは、そのままウリートの頭に唇を落とす。
「ちょ…!ヒュン!ちょっと!」
実の兄の前でそんな事をされるとは思ってもいなかったウリートは目を白黒させて慌てふためく。
「ふふふ、少し妬けるが仲良き事はいい事だよ、ウリー。お互いに夫を大切にね?」
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