[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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92、初遺跡 3

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「え~、ん~、そうっすねぇ~~いや~にはなっていますよ、うん。」

 何とも歯切れが悪い自警団員だ。

「もしや、兄は皆様にご迷惑を…?」

 アクロース侯爵家では誰よりも努力家で、その実力も申し分ないほど周囲には評価もされている。だから、仕事面では他人の足を引っ張る様な不出来な兄ではないと思っているのだが。

「いや、迷惑ってもんじゃないです、はい!」

 態度をコロッと変えてきた自警団員は直立不動になってしまった。

「……?」

「だから、言っているだろう?ウリー……」

 自警団員の前で小首を傾げてしまったウリートの後ろから、アランドがウリートの肩を組んできた。

「兄様……もう、終わったのですか?」


「兄様だって………」

「おい、随分可愛らしい呼び方されてるじゃないか?」

「え………あの団長様が……?」

 アランドに対するウリートの反応を目の前で見た自警団員達は目を白黒させながら、アランドとウリートの顔を見つつ、なにやらブツブツと話し合っている。


「まぁ、ね。こちらの事は粗方片付いた……で?お前達は今、何をしているんだって?交代時間でも、休憩時間でもないと思うのだが……?」

 アランドの声が低くなる。

「ひっ……!」

「うっ…………」

「す、すんません!!すんません!!こちらに、弟君がいらしてるなんて、ちっとも知らずに回って来ちまって………」

 アランドの声を聞いた自警団員は一斉に身を縮めて口々に悲鳴らしきものと、言い訳を言い募る。その様子を見るに、どうやらアランドが虐められている様子はない様で、ウリートは少しホッとする。

「こら!ウリー!ホッとするのは早い!気を付けろと言われなかったのか?警戒心を持ちなさい。」

 少しだけ真剣な表情のアランドに、ウリートは心配させてしまったのだと気がついた。

「ごめんなさい、兄様……」

「だ、そうだよ?ヒュンダルンどうする?後はお前に任せるけど?」

 アランドの後ろにはこれまた少し不機嫌なヒュンダルンが仁王立ちで立っている。

「ヒィ………ッ」

「ゥゥ………」

「すんません!すんません!すんません!!!」

 自警団員からは小さな悲鳴が上がっているし、命乞いしている様にも聴こえて……

「ヒュン……?」

 怒っている?

「あらら…これは分かってないね?ウリー?」

「え………と…ヒュンが、少し不機嫌なのは分かります。」

「げ、これで少し……!?」

「弟君……凄い、鈍感なのかよ?」

「これ以上なんかあったら、死人が……」

 なんだか自警団員の発言がどんどん不穏なものに変わっていく…

「ヒュン?どうしたんです?」

 コテンと首を傾げれば、眉間に濃く皺を寄せていたヒュンダルンが、は~~~と長いため息を吐き出した。

「済まなかった、アランド。後は代ろう。」

「はいはい。お手柔らかに。可愛い弟だからな。で?お前達はいつまでそうしているつもりだ?」

 アランドの綺麗な瞳がキラリと光ったのを自警団員達は見逃さなかった。

「も、も、申し訳ありません!!」

「ここまで、異常無しっす!!」

「すぐ、巡回に回ります!!」

 男達は一目散にこの場から逃走してしまった。

「兄様……まさかと思うのですけど、もしかして、あの方達を虐めてなんて、いないですよね?」

 ウリートの心配が逆の立場で続行している。

「いや、人聞き悪いね?彼らとは昔、色々あったんだよ。その時に少し可愛がってやったんだけどな…何でだろうね?」

「……………」

「可愛がってるのに、恐れられる?」

 少し、理解が追いつかないウリートの横で、ウリートの肩を抱きながら物知り顔のヒュンダルンは無言を通す。

「所でウリー…約束を覚えているか?」

 ウリートの耳元でヒュンダルンは小声で聞いて来た。

「お、覚えていますよ?」

 突然兄の前でするものだから、ウリートは慌ててしまう…

「では、あんな有象無象な輩を相手にする事はない。無体を強いる者も、無礼を強いる者も同じ事だ。それに……」

 サラリ、とヒュンダルンはウリートの右耳の後ろへと髪を撫で付ける。

「下々の者達の中には、の意味を知らない者達だっているんだ。」

 だから、よくよく注意しなければな、と、耳元でヒュンダルンの低い声がそう呟くのを、ウリートはゾクゾクするのを必死で抑えて堪えた。





「さて、警備の配置も終わったし、そろそろ見てきても良いんじゃないか?」

 アランドからもう遺跡を見に行っても良いとお許しが出た…!

「ロープが張ってある先は侵入禁止だが、それ以外なら大丈夫だそうだよ。色んな所で現場作業員が働いているから話を聞くのも良いし、あぁ、彼が担当するのかな?」

 アランドが言う彼とは、テント群の中をこちらに向かって歩いてくる作業員の事だろう。

「ウリーも知っている彼だから安心だろう?」

 知り合いと言うからには王城会った事がある人物で貴族だろうに、その人はどちらかというと庶民の様な軽装で、遠目には全く誰だかわからない。

「あ!ライーズ副書紀官長様!」

 いつもとちがう服装だと、違う人物に見えてしまってなんだか新鮮だった。

「お迎えに上がるのが遅くなり申し訳ありません。ゴーリッシュ騎士団長様、アクロース侯爵子息様。私が本日の担当官を務めさせていただきます。」

「よろしくお願いします。ライーズ副書紀官長様!」


























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