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85、約束 2
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「それから、絶対に外さない事…」
ギュムッと抱きしめたせいでウリートの髪が乱れてしまったのをヒュンダルンは丁寧に治す。勿論、イヤーカフがしっかりと見える様にである。
「ええ、お約束します。ヒュンもですよ?このイヤーカフ外さないで…?」
今ならよく分かるのだ。もし、ヒュンに懸想している男女がいたら?きっと山の様にいるのかと思うのだけど、その人達の前でヒュンがこのイヤーカフを外していたら、きっと正気ではいられないかもしれない。
この人は僕のだから、触るな!ときっと大声で言いたくなってしまう…
ヒュンも同じなんですね?僕を誰にも渡したく無いのですね?
「外さない…死んでも、外さない……」
ヒュンダルンはウリートの体をすっぽりと覆い尽くして抱き締める。
「ヒュン、死ぬなんて言葉使わないでください。一緒に生きるんですから…ね?」
その機会をくれたのも、希望をくれたのもヒュンではないですか?
「んん、お二方。城に着きますよ…」
「あ……」
マリエッテはもう苦笑いだ。ごめんね?
「城での予定は?」
「はい、担当の方との面会と、ウリート様のご友人方がいらしているそうですから、お顔を見せにおい出になるのでは?」
マリエッテは場内には入れないので、馬車置き場で待機である。城内ではヒュンダルンがエスコート役だ。
「そうでした。少し会ってもいいですか?」
「勿論だ。友人は大切にしなければな。」
その友人に、変な意味での餌食にはなりたくは無いと思うのだが、ウリートが喜んでいるのならば、仕方ない。
「ウリート様、私からもよろしくお伝えくださいませ。」
「マリエッテも知り合いがいる?」
「………横の繋がりというものがございます。」
ニッコリと笑うマリエッテに対してヒュンダルンは苦虫を潰したような顔をしている。
「もしや、何方か苦手な方が?」
人付き合いならばサラッと難なく交わしてしまいそうなヒュンなのに、こんな顔をさせるような方がいるとは珍しい……
「…俺の事は気にしなくていいよ。ウリーがご友人とお茶をしている間に少し騎士団に顔を出してこよう。良いか?」
ここは城内、本日は第1から第3騎士団団長は城内にいるはずである。ウリーが来ているのはアランドにも伝わるだろうから、きっと奴も顔を出す。
「はい。いってらっしゃいませ。久しぶりで緊張しますが…兄様達も来ているでしょうか?」
「あぁ、今日は各団長が集まっての情報交換会と言う雑談会がある。アランドも来てるだろう。」
「そんなんですね。では、後でお顔だけでも見に行きます。」
「いや、行くとしたらアランドの方が茶会に行く。だからウリーはゆっくりしてて。」
髪にチュッと軽くキスをしたところで、馬車の下車時間だった。マリエッテと分かれて、ヒュンダルンのエスコートで城内に入っていく。国王陛下夫妻に挨拶した際に本城の奥には入ったが内部はまだまだ未知の世界だ。ついついキョロキョロとしてしまっても仕方がなかった。
可愛い……
どんな姿も可愛くてしょうがない…
ヒュンダルンはそんなウリートから目が離せないでいる。
「ヒュン、何処に行けばいいのですか?」
城は広いのだ。王族の居住区は勿論、ウリートが入ったことのある謁見室や書庫、大小のホールに、来賓の宿泊室、そして国の機関が一挙に集まっている為に、全ての機関に関する執務室に休憩室に大食堂、城外に出れば騎士団詰所に訓練場、馬場にいくつかに別れている庭園に森に離宮…
広すぎて、見学するだけでも体力をゴッソリと持って行かれそうである。心から今は城勤めは厳しいと少し残念だが思ってしまうウリートだった。
「遺跡の発掘には各部署から有識者が集まっていてな、執務棟の外れにある。今日はその代表者と会う。」
だから城の中をかなりの距離を歩いているわけなんだ。城内の広い廊下をひたすら歩かなければ辿り着けないほどの広さも仕事の効率的にはどうなのかと思えるのだが…
そして、ヒュンダルンが共にいるからなのか、先程からすれ違う人々の視線がとても気になる。チラチラと必ず見られるのだが、進んで声をかけ挨拶してくる者はいない。ジッと見つめて来るような者はヒュンに用でもあるのだろうと思っていても、ヒュンがそちらに顔を向けるとあからさまにスッと視線を外してしまうし…
「ヒュン…僕、場違いでしたか?」
服装自体は貴族なのだから違和感なく着こなしているつもりだ。しかし、こうも見られているとしたら、何かおかしな所があるに違いないと思うのだけれども………
「何がだ?今日の装いならば良く似合っているぞ?」
「なら、良かったです。けれど、先程から視線が……」
「ああ、構うな…気になるならば、気に入らん奴を守衛にでも引き渡すか?」
「え、そう言う意味ではないですよ!?ただ、どうしてかな、と…」
「クソッ……ウリーが珍しいんだろう…人払いをさせれば良かった……」
ヒュンはそんな事を平気で言う。ここはお城で、皆さん働いているのでは?私情でそんな勝手は許されないと思いますよ?
「ウリー、約束を覚えているな?」
「はい…!」
「ならば、遠慮はするな?」
ニッコリといい笑顔でヒュンは笑う。その笑顔ちょっと、ドキッとしますけど…僕はそんなに鮮やかに寄ってくる人を捌けないと思います……
ギュムッと抱きしめたせいでウリートの髪が乱れてしまったのをヒュンダルンは丁寧に治す。勿論、イヤーカフがしっかりと見える様にである。
「ええ、お約束します。ヒュンもですよ?このイヤーカフ外さないで…?」
今ならよく分かるのだ。もし、ヒュンに懸想している男女がいたら?きっと山の様にいるのかと思うのだけど、その人達の前でヒュンがこのイヤーカフを外していたら、きっと正気ではいられないかもしれない。
この人は僕のだから、触るな!ときっと大声で言いたくなってしまう…
ヒュンも同じなんですね?僕を誰にも渡したく無いのですね?
「外さない…死んでも、外さない……」
ヒュンダルンはウリートの体をすっぽりと覆い尽くして抱き締める。
「ヒュン、死ぬなんて言葉使わないでください。一緒に生きるんですから…ね?」
その機会をくれたのも、希望をくれたのもヒュンではないですか?
「んん、お二方。城に着きますよ…」
「あ……」
マリエッテはもう苦笑いだ。ごめんね?
「城での予定は?」
「はい、担当の方との面会と、ウリート様のご友人方がいらしているそうですから、お顔を見せにおい出になるのでは?」
マリエッテは場内には入れないので、馬車置き場で待機である。城内ではヒュンダルンがエスコート役だ。
「そうでした。少し会ってもいいですか?」
「勿論だ。友人は大切にしなければな。」
その友人に、変な意味での餌食にはなりたくは無いと思うのだが、ウリートが喜んでいるのならば、仕方ない。
「ウリート様、私からもよろしくお伝えくださいませ。」
「マリエッテも知り合いがいる?」
「………横の繋がりというものがございます。」
ニッコリと笑うマリエッテに対してヒュンダルンは苦虫を潰したような顔をしている。
「もしや、何方か苦手な方が?」
人付き合いならばサラッと難なく交わしてしまいそうなヒュンなのに、こんな顔をさせるような方がいるとは珍しい……
「…俺の事は気にしなくていいよ。ウリーがご友人とお茶をしている間に少し騎士団に顔を出してこよう。良いか?」
ここは城内、本日は第1から第3騎士団団長は城内にいるはずである。ウリーが来ているのはアランドにも伝わるだろうから、きっと奴も顔を出す。
「はい。いってらっしゃいませ。久しぶりで緊張しますが…兄様達も来ているでしょうか?」
「あぁ、今日は各団長が集まっての情報交換会と言う雑談会がある。アランドも来てるだろう。」
「そんなんですね。では、後でお顔だけでも見に行きます。」
「いや、行くとしたらアランドの方が茶会に行く。だからウリーはゆっくりしてて。」
髪にチュッと軽くキスをしたところで、馬車の下車時間だった。マリエッテと分かれて、ヒュンダルンのエスコートで城内に入っていく。国王陛下夫妻に挨拶した際に本城の奥には入ったが内部はまだまだ未知の世界だ。ついついキョロキョロとしてしまっても仕方がなかった。
可愛い……
どんな姿も可愛くてしょうがない…
ヒュンダルンはそんなウリートから目が離せないでいる。
「ヒュン、何処に行けばいいのですか?」
城は広いのだ。王族の居住区は勿論、ウリートが入ったことのある謁見室や書庫、大小のホールに、来賓の宿泊室、そして国の機関が一挙に集まっている為に、全ての機関に関する執務室に休憩室に大食堂、城外に出れば騎士団詰所に訓練場、馬場にいくつかに別れている庭園に森に離宮…
広すぎて、見学するだけでも体力をゴッソリと持って行かれそうである。心から今は城勤めは厳しいと少し残念だが思ってしまうウリートだった。
「遺跡の発掘には各部署から有識者が集まっていてな、執務棟の外れにある。今日はその代表者と会う。」
だから城の中をかなりの距離を歩いているわけなんだ。城内の広い廊下をひたすら歩かなければ辿り着けないほどの広さも仕事の効率的にはどうなのかと思えるのだが…
そして、ヒュンダルンが共にいるからなのか、先程からすれ違う人々の視線がとても気になる。チラチラと必ず見られるのだが、進んで声をかけ挨拶してくる者はいない。ジッと見つめて来るような者はヒュンに用でもあるのだろうと思っていても、ヒュンがそちらに顔を向けるとあからさまにスッと視線を外してしまうし…
「ヒュン…僕、場違いでしたか?」
服装自体は貴族なのだから違和感なく着こなしているつもりだ。しかし、こうも見られているとしたら、何かおかしな所があるに違いないと思うのだけれども………
「何がだ?今日の装いならば良く似合っているぞ?」
「なら、良かったです。けれど、先程から視線が……」
「ああ、構うな…気になるならば、気に入らん奴を守衛にでも引き渡すか?」
「え、そう言う意味ではないですよ!?ただ、どうしてかな、と…」
「クソッ……ウリーが珍しいんだろう…人払いをさせれば良かった……」
ヒュンはそんな事を平気で言う。ここはお城で、皆さん働いているのでは?私情でそんな勝手は許されないと思いますよ?
「ウリー、約束を覚えているな?」
「はい…!」
「ならば、遠慮はするな?」
ニッコリといい笑顔でヒュンは笑う。その笑顔ちょっと、ドキッとしますけど…僕はそんなに鮮やかに寄ってくる人を捌けないと思います……
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