[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

文字の大きさ
上 下
84 / 135

85、約束 2

しおりを挟む
「それから、絶対に外さない事…」

 ギュムッと抱きしめたせいでウリートの髪が乱れてしまったのをヒュンダルンは丁寧に治す。勿論、イヤーカフがしっかりと見える様にである。

「ええ、お約束します。ヒュンもですよ?このイヤーカフ外さないで…?」

 今ならよく分かるのだ。もし、ヒュンに懸想している男女がいたら?きっと山の様にいるのかと思うのだけど、その人達の前でヒュンがこのイヤーカフを外していたら、きっと正気ではいられないかもしれない。

 この人は僕のだから、触るな!ときっと大声で言いたくなってしまう…

 ヒュンも同じなんですね?僕を誰にも渡したく無いのですね?

「外さない…死んでも、外さない……」
 
 ヒュンダルンはウリートの体をすっぽりと覆い尽くして抱き締める。

「ヒュン、死ぬなんて言葉使わないでください。一緒に生きるんですから…ね?」

 その機会をくれたのも、希望をくれたのもヒュンではないですか?

「んん、お二方。城に着きますよ…」

「あ……」

 マリエッテはもう苦笑いだ。ごめんね?

「城での予定は?」

「はい、担当の方との面会と、ウリート様のご友人方がいらしているそうですから、お顔を見せにおい出になるのでは?」

 マリエッテは場内には入れないので、馬車置き場で待機である。城内ではヒュンダルンがエスコート役だ。

「そうでした。少し会ってもいいですか?」

「勿論だ。友人は大切にしなければな。」

 その友人に、変な意味での餌食にはなりたくは無いと思うのだが、ウリートが喜んでいるのならば、仕方ない。

「ウリート様、私からもよろしくお伝えくださいませ。」

「マリエッテも知り合いがいる?」

「………横の繋がりというものがございます。」

 ニッコリと笑うマリエッテに対してヒュンダルンは苦虫を潰したような顔をしている。

「もしや、何方か苦手な方が?」

 人付き合いならばサラッと難なく交わしてしまいそうなヒュンなのに、こんな顔をさせるような方がいるとは珍しい……

「…俺の事は気にしなくていいよ。ウリーがご友人とお茶をしている間に少し騎士団に顔を出してこよう。良いか?」

 ここは城内、本日は第1から第3騎士団団長は城内にいるはずである。ウリーが来ているのはアランドにも伝わるだろうから、きっと奴も顔を出す。

「はい。いってらっしゃいませ。久しぶりで緊張しますが…兄様達も来ているでしょうか?」

「あぁ、今日は各団長が集まっての情報交換会と言う雑談会がある。アランドも来てるだろう。」

「そんなんですね。では、後でお顔だけでも見に行きます。」

「いや、行くとしたらアランドの方が茶会に行く。だからウリーはゆっくりしてて。」

 髪にチュッと軽くキスをしたところで、馬車の下車時間だった。マリエッテと分かれて、ヒュンダルンのエスコートで城内に入っていく。国王陛下夫妻に挨拶した際に本城の奥には入ったが内部はまだまだ未知の世界だ。ついついキョロキョロとしてしまっても仕方がなかった。

 可愛い……
 どんな姿も可愛くてしょうがない…

 ヒュンダルンはそんなウリートから目が離せないでいる。

「ヒュン、何処に行けばいいのですか?」

 城は広いのだ。王族の居住区は勿論、ウリートが入ったことのある謁見室や書庫、大小のホールに、来賓の宿泊室、そして国の機関が一挙に集まっている為に、全ての機関に関する執務室に休憩室に大食堂、城外に出れば騎士団詰所に訓練場、馬場にいくつかに別れている庭園に森に離宮…

 広すぎて、見学するだけでも体力をゴッソリと持って行かれそうである。心から今は城勤めは厳しいと少し残念だが思ってしまうウリートだった。

「遺跡の発掘には各部署から有識者が集まっていてな、執務棟の外れにある。今日はその代表者と会う。」

 だから城の中をかなりの距離を歩いているわけなんだ。城内の広い廊下をひたすら歩かなければ辿り着けないほどの広さも仕事の効率的にはどうなのかと思えるのだが…
 そして、ヒュンダルンが共にいるからなのか、先程からすれ違う人々の視線がとても気になる。チラチラと必ず見られるのだが、進んで声をかけ挨拶してくる者はいない。ジッと見つめて来るような者はヒュンに用でもあるのだろうと思っていても、ヒュンがそちらに顔を向けるとあからさまにスッと視線を外してしまうし…

「ヒュン…僕、場違いでしたか?」
 
 服装自体は貴族なのだから違和感なく着こなしているつもりだ。しかし、こうも見られているとしたら、何かおかしな所があるに違いないと思うのだけれども………

「何がだ?今日の装いならば良く似合っているぞ?」

「なら、良かったです。けれど、先程から視線が……」

「ああ、構うな…気になるならば、気に入らん奴を守衛にでも引き渡すか?」

「え、そう言う意味ではないですよ!?ただ、どうしてかな、と…」

「クソッ……ウリーが珍しいんだろう…人払いをさせれば良かった……」

 ヒュンはそんな事を平気で言う。ここはお城で、皆さん働いているのでは?私情でそんな勝手は許されないと思いますよ?

「ウリー、約束を覚えているな?」

「はい…!」

「ならば、遠慮はするな?」

 ニッコリといい笑顔でヒュンは笑う。その笑顔ちょっと、ドキッとしますけど…僕はそんなに鮮やかに寄ってくる人を捌けないと思います……









 









しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。

天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。 しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。 しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。 【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました

織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

処理中です...