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83、初めての喧嘩 2
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同姓同士の結婚では夫婦共に働く者も多くあると聞く。騎士同士の結婚がいい例ではないだろうか。歴代の騎士物語にもそんな夫夫関係が書かれている物が沢山あるのだから。
だから、家庭教師と言う仕事について家庭を持ちたいと何度となくヒュンダルンに相談もしていたウリートととしては結婚しても働くのは当たり前でそのつもりであった。どうしてやら今はヒュンダルンの婚約者という立場に収まってしまったのだが、依然としてウリートの考えは変わっていない。
ヒュンダルンの婚約者、ウリートはそれについては全く不満はないのだ。ヒュンダルンと一緒に生きていけるのだから。
でも……
「今の立場に不満なんてありません。」
ウリートはそっと話し出した。
少し、雰囲気の暗くなってしまった朝食の場で、何か不満があるのかどうか、優しくヒュンダルンが聞いてくれたのだ。暗いと言っても会話の内容だけで、二人はピッタリと寄り添って、主にヒュンダルンが離れるのを嫌がって、食事の時にもこんな距離になるので、離れて見ている者にとっては不穏な空気はわからないのだが…
「では、どうして?ただの趣味、と言われた方がまだ理解はできるのだが…」
けれどもウリートは家庭教師と言う立場を強調してくる。エーベ公爵家出のヒュンダルンだ。ゴーリッシュ家と言えば直下の親戚筋で…はっきり言ってヒュンダルンの伴侶となる者には就労する必要性すらない。
「僕も侯爵家出ですから、ヒュンがそう言われるのは、わかるにはわかるのです。けど………ヒュン……」
真剣な表情をしたウリートは、しっかりとヒュンダルンを見つめてくる。
「ん?」
その深い青の瞳に吸い込まれそうになりながら、ヒュンダルンは踏みとどまる。
「ヒュン、僕も男です。今まで社交も出来ず、世に貢献する事もできませんでした。ヒュンと共にいられるのは…とても、嬉しくて、幸せですが、ここまでは貴方にしてもらうだばかりだったでしょう?僕も少しは体力もついたと思うのです。出来ることを始めて、ヒュンにふさわしい者であるって認めてもらいたんです…!」
そんなもの……はっきり言ってどうでもいい…
今真剣にヒュンダルンを見つめて、ウリートの青い瞳がキラキラと光っている。
愛しくて、可愛くて、今どれだけ抱きしめて、キスしたいのを我慢しているかなんて、きっとウリートは分かっていないだろう。キスだけじゃなく、それ以上を欲して…出来れば、家から一歩も外には出したく無いと、そんな風に思ってしまうこともあると、ウリートは知らないに違いない。
もし、言ってみたらどんな顔をするかな?
あの城の茶会まで、アクロース家を出た事もなかったウリートが、またヒュンダルンの手元で閉じ込められる様になると言ったら……
嫌われるか……………
家から出る事を望んでいたウリートにそんな事を言いつけたら、きっと悲しませてしまう事になるのに…それでもそんな欲がムクムクと出てきてしまって止まらない……
「俺に相応しい者?」
「そうです!ヒュンが陰口を叩かれない様に……」
「必要ない。そんな陰口ならば日常茶飯事、違う所で受けている。」
「ヒュン…?」
「ウリー、陰口ぐらい何の痛みもない。」
「僕が嫌なのです。ヒュンを馬鹿にされたくはありません。」
あぁ、駄目だ…おかしいな、口論にさえもなってない口論をしていた様に思うのだが……
気がつくとヒュンダルンはウリートに深く口付けている。自分が馬鹿にされない為だけにウリートは身を立てたいと言う。平民から見れば貴族である事だけで敬われる地位にいると言うのに、独身を貫き通していた者を落としたとして、貴族の間でも一目置かれてもいるのに、ウリートはちっともその事に気がついていないのだから。
そして、必死にヒュンダルンの立場を守ろうとする立ち回りをしようとする。
可愛くないわけがない…もう、可愛いとしか言いようがない…どうしようか?このままベッドへ……
香油はまだあったし、マリエッテが何やらまた余計な物を置いて行っていたし……使え、という事だろう?
「ん…っ」
何度も角度を変えて、キスを深め、舌や唇を吸い上げる。その度にウリートの細い腰がピクリと反応してきて、今まで意見を違えて喧嘩をしていたのではないのかと苦笑してしまいそうになるのだが、今はこっちだ。夫たる者、妻となる者が泣いて喜ぶ位の口付けを送れないでどうする?
「コホン………」
「……!?……うわっ…マ、マリエッテ…!」
「………」
マリエッテの遠慮がちな咳払いのお陰で、ウリートは現実に戻ってきた様だ。一方ヒュンダルンの方は途中で邪魔をされて少し不満気である。
「そ、そうだよね。マリエッテもいたんだ……」
今更の如くにウリートは呟く。
そうです。今まではお邪魔にならない様に、そっとお部屋を辞していましたが、今は朝、それもお二人とも朝食の途中にございますよ?
を、視線に乗せてマリエッテは二人を見る。
役得な立場ではありますが、これから若様には仕事がありますし、ウリート様の問題を解決していただかなくてはいけませんものね?
「さ、お二人とも、お召し上がりになってくださいませ。」
仲直りする為にか、ウリートを抱え上げようとしていたヒュンダルンの腕は未練たらたらに、そっとウリートを椅子に戻した。
だから、家庭教師と言う仕事について家庭を持ちたいと何度となくヒュンダルンに相談もしていたウリートととしては結婚しても働くのは当たり前でそのつもりであった。どうしてやら今はヒュンダルンの婚約者という立場に収まってしまったのだが、依然としてウリートの考えは変わっていない。
ヒュンダルンの婚約者、ウリートはそれについては全く不満はないのだ。ヒュンダルンと一緒に生きていけるのだから。
でも……
「今の立場に不満なんてありません。」
ウリートはそっと話し出した。
少し、雰囲気の暗くなってしまった朝食の場で、何か不満があるのかどうか、優しくヒュンダルンが聞いてくれたのだ。暗いと言っても会話の内容だけで、二人はピッタリと寄り添って、主にヒュンダルンが離れるのを嫌がって、食事の時にもこんな距離になるので、離れて見ている者にとっては不穏な空気はわからないのだが…
「では、どうして?ただの趣味、と言われた方がまだ理解はできるのだが…」
けれどもウリートは家庭教師と言う立場を強調してくる。エーベ公爵家出のヒュンダルンだ。ゴーリッシュ家と言えば直下の親戚筋で…はっきり言ってヒュンダルンの伴侶となる者には就労する必要性すらない。
「僕も侯爵家出ですから、ヒュンがそう言われるのは、わかるにはわかるのです。けど………ヒュン……」
真剣な表情をしたウリートは、しっかりとヒュンダルンを見つめてくる。
「ん?」
その深い青の瞳に吸い込まれそうになりながら、ヒュンダルンは踏みとどまる。
「ヒュン、僕も男です。今まで社交も出来ず、世に貢献する事もできませんでした。ヒュンと共にいられるのは…とても、嬉しくて、幸せですが、ここまでは貴方にしてもらうだばかりだったでしょう?僕も少しは体力もついたと思うのです。出来ることを始めて、ヒュンにふさわしい者であるって認めてもらいたんです…!」
そんなもの……はっきり言ってどうでもいい…
今真剣にヒュンダルンを見つめて、ウリートの青い瞳がキラキラと光っている。
愛しくて、可愛くて、今どれだけ抱きしめて、キスしたいのを我慢しているかなんて、きっとウリートは分かっていないだろう。キスだけじゃなく、それ以上を欲して…出来れば、家から一歩も外には出したく無いと、そんな風に思ってしまうこともあると、ウリートは知らないに違いない。
もし、言ってみたらどんな顔をするかな?
あの城の茶会まで、アクロース家を出た事もなかったウリートが、またヒュンダルンの手元で閉じ込められる様になると言ったら……
嫌われるか……………
家から出る事を望んでいたウリートにそんな事を言いつけたら、きっと悲しませてしまう事になるのに…それでもそんな欲がムクムクと出てきてしまって止まらない……
「俺に相応しい者?」
「そうです!ヒュンが陰口を叩かれない様に……」
「必要ない。そんな陰口ならば日常茶飯事、違う所で受けている。」
「ヒュン…?」
「ウリー、陰口ぐらい何の痛みもない。」
「僕が嫌なのです。ヒュンを馬鹿にされたくはありません。」
あぁ、駄目だ…おかしいな、口論にさえもなってない口論をしていた様に思うのだが……
気がつくとヒュンダルンはウリートに深く口付けている。自分が馬鹿にされない為だけにウリートは身を立てたいと言う。平民から見れば貴族である事だけで敬われる地位にいると言うのに、独身を貫き通していた者を落としたとして、貴族の間でも一目置かれてもいるのに、ウリートはちっともその事に気がついていないのだから。
そして、必死にヒュンダルンの立場を守ろうとする立ち回りをしようとする。
可愛くないわけがない…もう、可愛いとしか言いようがない…どうしようか?このままベッドへ……
香油はまだあったし、マリエッテが何やらまた余計な物を置いて行っていたし……使え、という事だろう?
「ん…っ」
何度も角度を変えて、キスを深め、舌や唇を吸い上げる。その度にウリートの細い腰がピクリと反応してきて、今まで意見を違えて喧嘩をしていたのではないのかと苦笑してしまいそうになるのだが、今はこっちだ。夫たる者、妻となる者が泣いて喜ぶ位の口付けを送れないでどうする?
「コホン………」
「……!?……うわっ…マ、マリエッテ…!」
「………」
マリエッテの遠慮がちな咳払いのお陰で、ウリートは現実に戻ってきた様だ。一方ヒュンダルンの方は途中で邪魔をされて少し不満気である。
「そ、そうだよね。マリエッテもいたんだ……」
今更の如くにウリートは呟く。
そうです。今まではお邪魔にならない様に、そっとお部屋を辞していましたが、今は朝、それもお二人とも朝食の途中にございますよ?
を、視線に乗せてマリエッテは二人を見る。
役得な立場ではありますが、これから若様には仕事がありますし、ウリート様の問題を解決していただかなくてはいけませんものね?
「さ、お二人とも、お召し上がりになってくださいませ。」
仲直りする為にか、ウリートを抱え上げようとしていたヒュンダルンの腕は未練たらたらに、そっとウリートを椅子に戻した。
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