82 / 135
83、初めての喧嘩 2
しおりを挟む
同姓同士の結婚では夫婦共に働く者も多くあると聞く。騎士同士の結婚がいい例ではないだろうか。歴代の騎士物語にもそんな夫夫関係が書かれている物が沢山あるのだから。
だから、家庭教師と言う仕事について家庭を持ちたいと何度となくヒュンダルンに相談もしていたウリートととしては結婚しても働くのは当たり前でそのつもりであった。どうしてやら今はヒュンダルンの婚約者という立場に収まってしまったのだが、依然としてウリートの考えは変わっていない。
ヒュンダルンの婚約者、ウリートはそれについては全く不満はないのだ。ヒュンダルンと一緒に生きていけるのだから。
でも……
「今の立場に不満なんてありません。」
ウリートはそっと話し出した。
少し、雰囲気の暗くなってしまった朝食の場で、何か不満があるのかどうか、優しくヒュンダルンが聞いてくれたのだ。暗いと言っても会話の内容だけで、二人はピッタリと寄り添って、主にヒュンダルンが離れるのを嫌がって、食事の時にもこんな距離になるので、離れて見ている者にとっては不穏な空気はわからないのだが…
「では、どうして?ただの趣味、と言われた方がまだ理解はできるのだが…」
けれどもウリートは家庭教師と言う立場を強調してくる。エーベ公爵家出のヒュンダルンだ。ゴーリッシュ家と言えば直下の親戚筋で…はっきり言ってヒュンダルンの伴侶となる者には就労する必要性すらない。
「僕も侯爵家出ですから、ヒュンがそう言われるのは、わかるにはわかるのです。けど………ヒュン……」
真剣な表情をしたウリートは、しっかりとヒュンダルンを見つめてくる。
「ん?」
その深い青の瞳に吸い込まれそうになりながら、ヒュンダルンは踏みとどまる。
「ヒュン、僕も男です。今まで社交も出来ず、世に貢献する事もできませんでした。ヒュンと共にいられるのは…とても、嬉しくて、幸せですが、ここまでは貴方にしてもらうだばかりだったでしょう?僕も少しは体力もついたと思うのです。出来ることを始めて、ヒュンにふさわしい者であるって認めてもらいたんです…!」
そんなもの……はっきり言ってどうでもいい…
今真剣にヒュンダルンを見つめて、ウリートの青い瞳がキラキラと光っている。
愛しくて、可愛くて、今どれだけ抱きしめて、キスしたいのを我慢しているかなんて、きっとウリートは分かっていないだろう。キスだけじゃなく、それ以上を欲して…出来れば、家から一歩も外には出したく無いと、そんな風に思ってしまうこともあると、ウリートは知らないに違いない。
もし、言ってみたらどんな顔をするかな?
あの城の茶会まで、アクロース家を出た事もなかったウリートが、またヒュンダルンの手元で閉じ込められる様になると言ったら……
嫌われるか……………
家から出る事を望んでいたウリートにそんな事を言いつけたら、きっと悲しませてしまう事になるのに…それでもそんな欲がムクムクと出てきてしまって止まらない……
「俺に相応しい者?」
「そうです!ヒュンが陰口を叩かれない様に……」
「必要ない。そんな陰口ならば日常茶飯事、違う所で受けている。」
「ヒュン…?」
「ウリー、陰口ぐらい何の痛みもない。」
「僕が嫌なのです。ヒュンを馬鹿にされたくはありません。」
あぁ、駄目だ…おかしいな、口論にさえもなってない口論をしていた様に思うのだが……
気がつくとヒュンダルンはウリートに深く口付けている。自分が馬鹿にされない為だけにウリートは身を立てたいと言う。平民から見れば貴族である事だけで敬われる地位にいると言うのに、独身を貫き通していた者を落としたとして、貴族の間でも一目置かれてもいるのに、ウリートはちっともその事に気がついていないのだから。
そして、必死にヒュンダルンの立場を守ろうとする立ち回りをしようとする。
可愛くないわけがない…もう、可愛いとしか言いようがない…どうしようか?このままベッドへ……
香油はまだあったし、マリエッテが何やらまた余計な物を置いて行っていたし……使え、という事だろう?
「ん…っ」
何度も角度を変えて、キスを深め、舌や唇を吸い上げる。その度にウリートの細い腰がピクリと反応してきて、今まで意見を違えて喧嘩をしていたのではないのかと苦笑してしまいそうになるのだが、今はこっちだ。夫たる者、妻となる者が泣いて喜ぶ位の口付けを送れないでどうする?
「コホン………」
「……!?……うわっ…マ、マリエッテ…!」
「………」
マリエッテの遠慮がちな咳払いのお陰で、ウリートは現実に戻ってきた様だ。一方ヒュンダルンの方は途中で邪魔をされて少し不満気である。
「そ、そうだよね。マリエッテもいたんだ……」
今更の如くにウリートは呟く。
そうです。今まではお邪魔にならない様に、そっとお部屋を辞していましたが、今は朝、それもお二人とも朝食の途中にございますよ?
を、視線に乗せてマリエッテは二人を見る。
役得な立場ではありますが、これから若様には仕事がありますし、ウリート様の問題を解決していただかなくてはいけませんものね?
「さ、お二人とも、お召し上がりになってくださいませ。」
仲直りする為にか、ウリートを抱え上げようとしていたヒュンダルンの腕は未練たらたらに、そっとウリートを椅子に戻した。
だから、家庭教師と言う仕事について家庭を持ちたいと何度となくヒュンダルンに相談もしていたウリートととしては結婚しても働くのは当たり前でそのつもりであった。どうしてやら今はヒュンダルンの婚約者という立場に収まってしまったのだが、依然としてウリートの考えは変わっていない。
ヒュンダルンの婚約者、ウリートはそれについては全く不満はないのだ。ヒュンダルンと一緒に生きていけるのだから。
でも……
「今の立場に不満なんてありません。」
ウリートはそっと話し出した。
少し、雰囲気の暗くなってしまった朝食の場で、何か不満があるのかどうか、優しくヒュンダルンが聞いてくれたのだ。暗いと言っても会話の内容だけで、二人はピッタリと寄り添って、主にヒュンダルンが離れるのを嫌がって、食事の時にもこんな距離になるので、離れて見ている者にとっては不穏な空気はわからないのだが…
「では、どうして?ただの趣味、と言われた方がまだ理解はできるのだが…」
けれどもウリートは家庭教師と言う立場を強調してくる。エーベ公爵家出のヒュンダルンだ。ゴーリッシュ家と言えば直下の親戚筋で…はっきり言ってヒュンダルンの伴侶となる者には就労する必要性すらない。
「僕も侯爵家出ですから、ヒュンがそう言われるのは、わかるにはわかるのです。けど………ヒュン……」
真剣な表情をしたウリートは、しっかりとヒュンダルンを見つめてくる。
「ん?」
その深い青の瞳に吸い込まれそうになりながら、ヒュンダルンは踏みとどまる。
「ヒュン、僕も男です。今まで社交も出来ず、世に貢献する事もできませんでした。ヒュンと共にいられるのは…とても、嬉しくて、幸せですが、ここまでは貴方にしてもらうだばかりだったでしょう?僕も少しは体力もついたと思うのです。出来ることを始めて、ヒュンにふさわしい者であるって認めてもらいたんです…!」
そんなもの……はっきり言ってどうでもいい…
今真剣にヒュンダルンを見つめて、ウリートの青い瞳がキラキラと光っている。
愛しくて、可愛くて、今どれだけ抱きしめて、キスしたいのを我慢しているかなんて、きっとウリートは分かっていないだろう。キスだけじゃなく、それ以上を欲して…出来れば、家から一歩も外には出したく無いと、そんな風に思ってしまうこともあると、ウリートは知らないに違いない。
もし、言ってみたらどんな顔をするかな?
あの城の茶会まで、アクロース家を出た事もなかったウリートが、またヒュンダルンの手元で閉じ込められる様になると言ったら……
嫌われるか……………
家から出る事を望んでいたウリートにそんな事を言いつけたら、きっと悲しませてしまう事になるのに…それでもそんな欲がムクムクと出てきてしまって止まらない……
「俺に相応しい者?」
「そうです!ヒュンが陰口を叩かれない様に……」
「必要ない。そんな陰口ならば日常茶飯事、違う所で受けている。」
「ヒュン…?」
「ウリー、陰口ぐらい何の痛みもない。」
「僕が嫌なのです。ヒュンを馬鹿にされたくはありません。」
あぁ、駄目だ…おかしいな、口論にさえもなってない口論をしていた様に思うのだが……
気がつくとヒュンダルンはウリートに深く口付けている。自分が馬鹿にされない為だけにウリートは身を立てたいと言う。平民から見れば貴族である事だけで敬われる地位にいると言うのに、独身を貫き通していた者を落としたとして、貴族の間でも一目置かれてもいるのに、ウリートはちっともその事に気がついていないのだから。
そして、必死にヒュンダルンの立場を守ろうとする立ち回りをしようとする。
可愛くないわけがない…もう、可愛いとしか言いようがない…どうしようか?このままベッドへ……
香油はまだあったし、マリエッテが何やらまた余計な物を置いて行っていたし……使え、という事だろう?
「ん…っ」
何度も角度を変えて、キスを深め、舌や唇を吸い上げる。その度にウリートの細い腰がピクリと反応してきて、今まで意見を違えて喧嘩をしていたのではないのかと苦笑してしまいそうになるのだが、今はこっちだ。夫たる者、妻となる者が泣いて喜ぶ位の口付けを送れないでどうする?
「コホン………」
「……!?……うわっ…マ、マリエッテ…!」
「………」
マリエッテの遠慮がちな咳払いのお陰で、ウリートは現実に戻ってきた様だ。一方ヒュンダルンの方は途中で邪魔をされて少し不満気である。
「そ、そうだよね。マリエッテもいたんだ……」
今更の如くにウリートは呟く。
そうです。今まではお邪魔にならない様に、そっとお部屋を辞していましたが、今は朝、それもお二人とも朝食の途中にございますよ?
を、視線に乗せてマリエッテは二人を見る。
役得な立場ではありますが、これから若様には仕事がありますし、ウリート様の問題を解決していただかなくてはいけませんものね?
「さ、お二人とも、お召し上がりになってくださいませ。」
仲直りする為にか、ウリートを抱え上げようとしていたヒュンダルンの腕は未練たらたらに、そっとウリートを椅子に戻した。
782
お気に入りに追加
2,559
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。
天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。
しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。
しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。
【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる