[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

文字の大きさ
上 下
80 / 135

81、貴婦人の囀り ⑧

しおりを挟む
 先日、ご注文頂いていたお品を届けに高位貴族のお屋敷まで足を運びました。ええ、流石は公爵家、ご注文頂いた品々はどれも貴重で高価な物でございまして、我がアルントット宝飾店の売上が確実に潤った事、間違えありません。
 公爵家の対応もまた申し分なく、リゾートに来ているのかと思わされる様な接待を受けてしまいまして、お店の従業員には白い目で見られたものです。
 そして、またあの麗しいお二方をこの目で見られた事に、眼福でしたと心の中で祈っておきましょう…

 そして本日は別件であるご令嬢のお宅でお茶会に誘われまして、件のお二方の話題があがったのでございます。えぇ、時折私の様な平民とも仲良くお茶楽しみたいと言われる酔狂な貴族のご令嬢方がおりまして、この様にお仲間に入れてもらえております。

 お客様の情報を軽々しく他所で話すべきものではない、と商人としての心得がありますので、その日は聴衆に徹しておりました。
 
 どうやらご令嬢方は、公爵家のお血筋のゴーリッシュ騎士団長様の御婚約者アクロース侯爵家の御次男ウリート様とご友人であることがわかりました。
 皆様御両名が御婚約に至りました事について非常に喜ばれ、手をつなぎ合ってご自分のことの様に喜びを表現なさっておられました。

 確かに、アクロース侯爵子息ウリート様は、何というか、中性的な美しさを醸し出す魅力がある、言わば可愛らしくも美人の類のお方で、きっと我が宝飾店の品物がよく似合う……そんなお方でございます。対してなぜ独身を貫いてこられたゴーリッシュ騎士団長様がすっかりとこの方の虜になってしまわれたのか、お姿も然りですがそのお心根にもお心が捕われたからなのでしょう。
 
 先日伺いました折、ゴーリッシュ騎士団長様からは非常に、それも目のやり場に困り目を背けたい程、私は商売柄そんな失礼な事は致しませんが、甘ったるい目でアクロース侯爵子息ウリート様を見つめておられて…それに気がついておられるのか、アクロース侯爵子息ウリート様も見つめ返したりするものですから、仕事で呼ばれて伺った私がお二人の邪魔をしている様で、居た堪れませんでした。

 仲良きことは良きことです。ここに集まったご令嬢方の何と晴れやかなお顔です事。他人のお幸せをこの様に自分のものとして喜び合えるなんて…お二方の関係が進んだかなんてそんな内々の事までご心配なさるとは…素晴らしいご友情と称賛すべきところでしょうか。


「ふふ、それでね?カレンさん、私達お祝いをプレゼントしようと思っていますの。」

 この茶会の筆頭貴族となるエリッジ侯爵家レジーネ様が何やら嬉しい話を下さる様です。

「それは素晴らしいご友情ですわね。エリッジ侯爵御令嬢。」

「まぁ!他人行儀だわ!ぜひ、カレンさんも私達のお友達になってくれなくては!ねぇ?皆さん?」

「ええ、そうですわ!」

「勿論、賛成致します!」

 ファーム子爵家御令嬢ユーリ様にイリット男爵家御令嬢スザンナ様、ご招待ありがとうございます。

「畏れ多いことにございます。」

「ふふふ、貴方の宝飾店ではこの様な物を扱っていて?」

 男爵令嬢スザンナ様がスッと一枚の紙を差し出して来た。それは何かのスケッチの様で……
 
「こちらを……ですか?」

「ええ、そうですの。婚約のお祝いに!可愛らしく好きなように飾って頂きたいのだけれども如何?」

 好きな様に飾っても良いと………

「……ご予算は…如何程でございましょうか?」

「ま、野暮な事は聞かないことよ?」

 それは、予算は考えずに湯水の様に使えということでしょうか?

 こんなチャンスは滅多にない。貴族家の注文を受けるには受けるのだが、それぞれに好みがあり、こだわればこだわるほど、宝飾店側はただそれに応えるだけになる。しかし今は、注文の品に好きな様にデザインし、資金の心配をせずに分断に宝石を使えと言うのだから、こんなに破格な注文はないだろう。

「直ぐに契約書を作成してくださる?そこに私、レジーネ・エリッジの名でサイン致しますから。」

 今日は何と良い日であった事か…高貴な方々のお席にて目を見張る様な契約が取れました。
  
 それにしても、高貴な方々もお好きな方は好きなのですね?この様な仕事をしていますと、口では言えない様なご注文を頂く事も御座いまして、一人心を躍らせていた物で御座いますが、中にはどうしても理解できない趣旨の物もございます。
 けれど、よろしゅうございましたわ。今回のご注文は可愛らしく分断に飾り立てた、で御座いましたから、私も十分にお二方がお使いになる姿に想像を馳せる事叶いました。

 よろしいでしょう、ゴーリッシュ騎士団長様が泣いて喜ぶほど見事な物を作って見せましょう!















しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?

桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。 前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。 ほんの少しの間お付き合い下さい。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...