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81、貴婦人の囀り ⑧
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先日、ご注文頂いていたお品を届けに高位貴族のお屋敷まで足を運びました。ええ、流石は公爵家、ご注文頂いた品々はどれも貴重で高価な物でございまして、我がアルントット宝飾店の売上が確実に潤った事、間違えありません。
公爵家の対応もまた申し分なく、リゾートに来ているのかと思わされる様な接待を受けてしまいまして、お店の従業員には白い目で見られたものです。
そして、またあの麗しいお二方をこの目で見られた事に、眼福でしたと心の中で祈っておきましょう…
そして本日は別件であるご令嬢のお宅でお茶会に誘われまして、件のお二方の話題があがったのでございます。えぇ、時折私の様な平民とも仲良くお茶楽しみたいと言われる酔狂な貴族のご令嬢方がおりまして、この様にお仲間に入れてもらえております。
お客様の情報を軽々しく他所で話すべきものではない、と商人としての心得がありますので、その日は聴衆に徹しておりました。
どうやらご令嬢方は、公爵家のお血筋のゴーリッシュ騎士団長様の御婚約者アクロース侯爵家の御次男ウリート様とご友人であることがわかりました。
皆様御両名が御婚約に至りました事について非常に喜ばれ、手をつなぎ合ってご自分のことの様に喜びを表現なさっておられました。
確かに、アクロース侯爵子息ウリート様は、何というか、中性的な美しさを醸し出す魅力がある、言わば可愛らしくも美人の類のお方で、きっと我が宝飾店の品物がよく似合う……そんなお方でございます。対してなぜ独身を貫いてこられたゴーリッシュ騎士団長様がすっかりとこの方の虜になってしまわれたのか、お姿も然りですがそのお心根にもお心が捕われたからなのでしょう。
先日伺いました折、ゴーリッシュ騎士団長様からは非常に、それも目のやり場に困り目を背けたい程、私は商売柄そんな失礼な事は致しませんが、甘ったるい目でアクロース侯爵子息ウリート様を見つめておられて…それに気がついておられるのか、アクロース侯爵子息ウリート様も見つめ返したりするものですから、仕事で呼ばれて伺った私がお二人の邪魔をしている様で、居た堪れませんでした。
仲良きことは良きことです。ここに集まったご令嬢方の何と晴れやかなお顔です事。他人のお幸せをこの様に自分のものとして喜び合えるなんて…お二方の関係がどこまで進んだかなんてそんな内々の事までご心配なさるとは…素晴らしいご友情と称賛すべきところでしょうか。
「ふふ、それでね?カレンさん、私達お祝いをプレゼントしようと思っていますの。」
この茶会の筆頭貴族となるエリッジ侯爵家レジーネ様が何やら嬉しい話を下さる様です。
「それは素晴らしいご友情ですわね。エリッジ侯爵御令嬢。」
「まぁ!他人行儀だわ!ぜひ、カレンさんも私達のお友達になってくれなくては!ねぇ?皆さん?」
「ええ、そうですわ!」
「勿論、賛成致します!」
ファーム子爵家御令嬢ユーリ様にイリット男爵家御令嬢スザンナ様、ご招待ありがとうございます。
「畏れ多いことにございます。」
「ふふふ、貴方の宝飾店ではこの様な物を扱っていて?」
男爵令嬢スザンナ様がスッと一枚の紙を差し出して来た。それは何かのスケッチの様で……
「こちらを……ですか?」
「ええ、そうですの。婚約のお祝いに!可愛らしく好きなように飾って頂きたいのだけれども如何?」
好きな様に飾っても良いと………
「……ご予算は…如何程でございましょうか?」
「ま、野暮な事は聞かないことよ?」
それは、予算は考えずに湯水の様に使えということでしょうか?
こんなチャンスは滅多にない。貴族家の注文を受けるには受けるのだが、それぞれに好みがあり、こだわればこだわるほど、宝飾店側はただそれに応えるだけになる。しかし今は、注文の品に好きな様にデザインし、資金の心配をせずに分断に宝石を使えと言うのだから、こんなに破格な注文はないだろう。
「直ぐに契約書を作成してくださる?そこに私、レジーネ・エリッジの名でサイン致しますから。」
今日は何と良い日であった事か…高貴な方々のお席にて目を見張る様な契約が取れました。
それにしても、高貴な方々もお好きな方は好きなのですね?この様な仕事をしていますと、口では言えない様なご注文を頂く事も御座いまして、一人心を躍らせていた物で御座いますが、中にはどうしても理解できない趣旨の物もございます。
けれど、よろしゅうございましたわ。今回のご注文は可愛らしく分断に飾り立てた、手錠で御座いましたから、私も十分にお二方がお使いになる姿に想像を馳せる事叶いました。
よろしいでしょう、ゴーリッシュ騎士団長様が泣いて喜ぶほど見事な物を作って見せましょう!
公爵家の対応もまた申し分なく、リゾートに来ているのかと思わされる様な接待を受けてしまいまして、お店の従業員には白い目で見られたものです。
そして、またあの麗しいお二方をこの目で見られた事に、眼福でしたと心の中で祈っておきましょう…
そして本日は別件であるご令嬢のお宅でお茶会に誘われまして、件のお二方の話題があがったのでございます。えぇ、時折私の様な平民とも仲良くお茶楽しみたいと言われる酔狂な貴族のご令嬢方がおりまして、この様にお仲間に入れてもらえております。
お客様の情報を軽々しく他所で話すべきものではない、と商人としての心得がありますので、その日は聴衆に徹しておりました。
どうやらご令嬢方は、公爵家のお血筋のゴーリッシュ騎士団長様の御婚約者アクロース侯爵家の御次男ウリート様とご友人であることがわかりました。
皆様御両名が御婚約に至りました事について非常に喜ばれ、手をつなぎ合ってご自分のことの様に喜びを表現なさっておられました。
確かに、アクロース侯爵子息ウリート様は、何というか、中性的な美しさを醸し出す魅力がある、言わば可愛らしくも美人の類のお方で、きっと我が宝飾店の品物がよく似合う……そんなお方でございます。対してなぜ独身を貫いてこられたゴーリッシュ騎士団長様がすっかりとこの方の虜になってしまわれたのか、お姿も然りですがそのお心根にもお心が捕われたからなのでしょう。
先日伺いました折、ゴーリッシュ騎士団長様からは非常に、それも目のやり場に困り目を背けたい程、私は商売柄そんな失礼な事は致しませんが、甘ったるい目でアクロース侯爵子息ウリート様を見つめておられて…それに気がついておられるのか、アクロース侯爵子息ウリート様も見つめ返したりするものですから、仕事で呼ばれて伺った私がお二人の邪魔をしている様で、居た堪れませんでした。
仲良きことは良きことです。ここに集まったご令嬢方の何と晴れやかなお顔です事。他人のお幸せをこの様に自分のものとして喜び合えるなんて…お二方の関係がどこまで進んだかなんてそんな内々の事までご心配なさるとは…素晴らしいご友情と称賛すべきところでしょうか。
「ふふ、それでね?カレンさん、私達お祝いをプレゼントしようと思っていますの。」
この茶会の筆頭貴族となるエリッジ侯爵家レジーネ様が何やら嬉しい話を下さる様です。
「それは素晴らしいご友情ですわね。エリッジ侯爵御令嬢。」
「まぁ!他人行儀だわ!ぜひ、カレンさんも私達のお友達になってくれなくては!ねぇ?皆さん?」
「ええ、そうですわ!」
「勿論、賛成致します!」
ファーム子爵家御令嬢ユーリ様にイリット男爵家御令嬢スザンナ様、ご招待ありがとうございます。
「畏れ多いことにございます。」
「ふふふ、貴方の宝飾店ではこの様な物を扱っていて?」
男爵令嬢スザンナ様がスッと一枚の紙を差し出して来た。それは何かのスケッチの様で……
「こちらを……ですか?」
「ええ、そうですの。婚約のお祝いに!可愛らしく好きなように飾って頂きたいのだけれども如何?」
好きな様に飾っても良いと………
「……ご予算は…如何程でございましょうか?」
「ま、野暮な事は聞かないことよ?」
それは、予算は考えずに湯水の様に使えということでしょうか?
こんなチャンスは滅多にない。貴族家の注文を受けるには受けるのだが、それぞれに好みがあり、こだわればこだわるほど、宝飾店側はただそれに応えるだけになる。しかし今は、注文の品に好きな様にデザインし、資金の心配をせずに分断に宝石を使えと言うのだから、こんなに破格な注文はないだろう。
「直ぐに契約書を作成してくださる?そこに私、レジーネ・エリッジの名でサイン致しますから。」
今日は何と良い日であった事か…高貴な方々のお席にて目を見張る様な契約が取れました。
それにしても、高貴な方々もお好きな方は好きなのですね?この様な仕事をしていますと、口では言えない様なご注文を頂く事も御座いまして、一人心を躍らせていた物で御座いますが、中にはどうしても理解できない趣旨の物もございます。
けれど、よろしゅうございましたわ。今回のご注文は可愛らしく分断に飾り立てた、手錠で御座いましたから、私も十分にお二方がお使いになる姿に想像を馳せる事叶いました。
よろしいでしょう、ゴーリッシュ騎士団長様が泣いて喜ぶほど見事な物を作って見せましょう!
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