[完]腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

小葉石

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70、僕にできること 2 *

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「あの、ヒュンダルン様…?」

 闇夜の中では相手の動きがよく分からない。目を瞑ったら尚更で……

 ほぼ、毎日の様にヒュンダルンはウリートの部屋で休む様になった。知恵熱を出してからは寝ずの看病をしていたし、熱が下がってからは時間が空けばウリートの側から離れないし、夜間もその延長で…

 時折、この様な触れ合いがある。

「ん?」

 こんな時の低い声は普段よりも甘くて、身悶えそうになるのを、グッと抑えるのが辛いくらいで…時々、頬が緩んで堪らなくて笑んでいるのを見られてませんようにと祈る事もしばしば。

 返事をしたヒュンダルンは軽く触れるキスをして、それを徐々に深めてくる。舌を絡み取られて甘噛みされて…この位ですっかり反応してしまっている自分に呆れてしまうけれど、指南書には当たり前の事だと書いてあったし、恥ずかしがる事は無いのかもしれない。

 逆に触れてもらえて、嬉しい………
 そう、嬉しい…

「どうした?ウリー?」

 それでも何やら気恥ずかしくて、声を押し殺しながら、そっと精悍なヒュンダルンの頬に手を伸ばす。

「は……」

 長いキスからやっと解放されて、胸に一杯の新鮮な空気を取り入れて、一緒にヒュンダルンの香りも吸い込んで、ウリートはたまらず抱きついていく。

 ヒュンダルン様がここにいる…ここに僕の…

 伴侶を得て家を出て、自立する事が今後の目標で、残された生を精一杯生きようと思っていた。残されてしまう者の事なんて当時の僕の頭に無かったと思う。

 得られた伴侶がこんなにも愛しいなんて思わなかった…自分の事ばかりじゃ無くて、相手の事も満たせる様なそんな人間に成りたいって初めて思った。

 力強く抱きしめられる腕に溜まらずにため息が出る。

「ヒュンダルン様、僕、どうしたらいいですか?」

 いつも何かしてもらってる側で、今もこんなにも愛しくて、何かしてあげたいと心から思うから…

「なんだ?何かしたいのか?」

 散々、ヒュンダルン様の手は僕の体を巡るのに…多分、意地悪な笑みを浮かべてそんな事を聞いてくる。

「ウリー…お前の好きな様に…」

 クスリと笑われ、額に優しくキスをされた。マリエッテはお互いに信頼して進めるものだと言った。僕もヒュンダルン様から与えられる物は、ただ恥ずかしさが勝って戸惑うけれど、嫌では無い。

 好きに…ってヒュンダルン様も僕を信頼して、してもらいたいって思っている?

 ムクムクと自分の欲望が殻を破って頭を出す…
 
 僕も、ヒュンダルン様に気持ち良くなってもらいたい…だから、そっと手を伸ばした。

 自分からキスをして、ゆっくりと逞しくて、少し汗の味がする首筋を舐めてみる。

 くすぐったいのか、僕の背中を這うヒュンダルン様の手がピクリと反応した。気持ち良くなって貰いたい…ただその一心で僕は辿々しく手や舌を動かしてみる。ヒュンダルン様の表情が見えないのが非常に残念だけれども、時折僕の足に当たるヒュンダルン様の中心は、しっかりと自己主張してくださっていて、気持ちがいい事を伝えてくれている様で、なんだか背中を押されるみたいに、そこに手を伸ばした。

 自分の物に比べて遥かに立派な陰茎に、一瞬躊躇って離そうとしたのだけれど、それを見越したのかヒュンダルン様は、僕の手に自分の手を重ねてきて、離す事ができなくなってしまった。

 聳り立つ剛直は熱くて、硬くて、少し隆起があって触れば触るほど、存在感が伝わってくる。

「それで…どうしたい?」

 握りしめているヒュンダルンの剛直は、触れば触るほど硬さが増す様な気がして、手が震えて来てしまう。

「ウリー…」

 熱を帯びたヒュンダルン様の声が少し震えている…

 気持ちが、良いの、かな…?

 自分も多分、よく見ていないけれどもこうされると、息を止める程には気持ちがよかった。男性の性だし、それが普通の事と記してあった。

 気持ち良くなって貰いたい…されてばかりで、尽くしてもらうばかりではなくて…ヒュンダルン様にも……

「ウリー、酷く色っぽい顔をするな…」

 困った様な、嬉しい様なヒュンダルンの笑顔にウリートも困惑する。

「色っぽい…ですか?」

 そんな事今まで言われたことはないはずで、こんな時、自分がどんな顔をしているのなんかわからない。

 もしや、見るにも耐えないような淫らな醜悪な顔でもしているのでは、と身を引こうとしてしまう。

「ウリー…離すな…このまま…」

 懇願する様なヒュンダルンの声と手からの感触に、ちゃんと興奮してくれている事がウリートにも分かる。

「ヒュンダルン様……嫌では無いですか?」

「ふ…嫌なものか…逆に自分を抑えるのに、必死になってる…」

 ヒュンダルン様の困った様な顔は、自分の欲を抑える為の苦悶の表情だったんだ…
我慢、しなくて良いのに…

「僕も、自分がおかしい位です…」

 動悸に、火照り、緊張も相まっているけれども体調がおかしいわけではない。ヒュンダルンに触れたくて、自分の中の男の欲望に突き動かされているみたいになっている。

「ウリー…お前のやりたい様に、してくれていい。愛してるよ…」

 大きなヒュンダルンの手がウリートの片頬を撫で、ヒュンダルンはそっとウリートの頬にキスをした。













 
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