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53、アランドの本心 4
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「アランド、しつこくすると嫌われるぞ?」
そっとウリートの腕を撫でていたヒュンダルンが呆れた様に言い放つ。
「そこがまた、いいんだろうが…!」
グリグリグリグリ…セージュの頭をガッチリと抱え込んでアランドは好き勝手している。
「いてぇ!離せって!!ウリーを連れて帰るんだろ!?」
「連れては帰らない。」
セージュに腕を引かれた時、力では絶対にセージュに敵わなくてもウリートはわずかに足を踏ん張った。今、アランドに連れて帰らないと言われて、何故かホッとしている自分がいる。
「なんでだ!?」
「その様に話が決まっているからだ。さ、セージュ帰るぞ。ウリーの可愛い顔も見れたしな。」
「ヒュンダルン様…?決まっているって何がでしょうか?」
暴れるセージュを心配しながらも、ウリートはヒュンダルンを仰ぎ見る。
「ん?ウリートの社交に協力すると言っただろう?それに俺にも協力してもらわなければ。」
「だから!何でそれがウリーなんだ!!そんなの、下っ端の………ウグゥッ!ング!!」
セージュが必死に何か訴えているが、アランドがすかさずセージュの口を塞いだ為に最後まで聞くことができない。
「兄様、セージュが苦しそうですよ?」
もがくセージュを目の前にしてウリートはただオロオロと戸惑うばかりだ。
「大丈夫だよ、ウリー。セージュも騎士訓練でこの位の荒事には慣れている。それにこれからも慣れてもらわなくては私がちょっと困るかな?」
ニッコリと嬉しそうに語るものだから、ついついアランドが話した内容を聞き逃すところであったけれど、アランドは何か引っかかる発言をしているように思う。
何故?セージュはこれに慣れなければいけないのだろう?
「やめろ、アランド。それ以上は家に帰ってからにしろ。ウリートに変な事を聞かせるなよ。」
アランドを止めればいいのか、でもどうしたらいいのか、挙動不審のウリートの後ろからヒュンダルンはウリートの耳を塞ぎに来た。
「おや、まだウリートには刺激が強すぎるか?」
「お前、わざとか…いい性格しているな…」
「ふふ、私の弟達は可愛いだろう?だから構うのをやめられないんだ…。一番どこにも行かないだろうと思っていたウリーが手を離れてしまうのだから、これくらいは良いだろう?」
「歪んだ愛だな。」
「何も言わないよりは良いだろう?私達には私達なりの成り様があるのさ。と、言う事で、私達は明日休暇を貰う。そう伝えておいてくれ。」
「何を言う。騎士養成員に休暇は無いぞ?」
「では、私の付き添いという事で…あ、実家からウリー宛に手紙が来ている。マリエッテに渡してあるから後で見てくれ。」
ウリート宛の手紙なのに、ビュンダルンに見ておけとは…
「断れない相手だな…」
嫌な予感を置き去りにしつつ、アランドは半ばセージュを引きずりながらエーベ公爵邸を後にした。
「あいつ…後継はどうするつもりだ?」
今までの来る者拒まずであったアランドの行動を見ればあれが本気だと言うことは分かった。しかし、アランドも侯爵家の嫡男で、次男はここにいるし、このままでは今後の後継が望めないのでは無いだろうか…ヒュンダルンが取ろうとしている様に親戚筋から優秀な者を養子にすると言う手もあるのだが。
「あ、アランド様ならば大丈夫でございます。外にお子様がおりますから、今は3名ほどでしょうか?」
セージュの為にと茶と菓子を持って訪室してきていたマリエッテが、事も無げにそんな事を言ってきた。
どうやら来る者拒まずのアランドは既に子持ちだと言うのだ…
「市井出の子供となりますでしょうが、裕福な商家のお子様もおりますし、優秀にお育ちになるのでは?」
ヒュンダルンとウリートの為にお茶を入れながらマリエッテはサラッとそんな事まで暴露する。
「マリエッテ…それをここで言っても良いのか…?」
ともすれば当主が頭を抱えて悩み込みそうな問題であると思うのだが………
「はい。大丈夫だろうと存じます。アランド様もお子様の事はご存じですし…あ!ウリート様はご存知ありませんからこのままに…!」
そのウリートは未だヒュンダルンに耳を塞がられていて、少し困ったら様な表情をしている。そんなウリートにヒュダルンはニッコリと優しい笑顔を投げかけて、ウリートの塞いでいた耳をそっと外した。
「ふぅ…」
塞がれていた耳は熱くなっていて少し赤い。
「悪い、痛かったか?」
「いいえ。でもどうしたんです?突然…」
「大人のお話の様でしたよ。」
茶を煎れつつマリエッテがそう説明した。
ウリートの目の前で、セージュについて不謹慎な発言があったなどとは言えるものでは無いだろう。
「あ、お仕事の話ですね?では、守秘義務がありますね。」
ヒュンダルンと兄とアランドは騎士団長である。仕事の内容如何ではおいそれと話していいものでは無いだろうから、あの行動は理解できた。
「……………」
マリエッテは無言でウリートを座らせるべくエスコートしているヒュンダルンに視線を送り、並んで座ったヒュンダルンとウリートの前に煎れたての茶を置いた。
「マリエッテも他言無用だ。」
「承知いたしました。」
業務中に知り得た情報は他で話す事を禁じられている侍女にまで口止めをすると言う事は、きっと何か重要なやり取りだったに違いない。
そっとウリートの腕を撫でていたヒュンダルンが呆れた様に言い放つ。
「そこがまた、いいんだろうが…!」
グリグリグリグリ…セージュの頭をガッチリと抱え込んでアランドは好き勝手している。
「いてぇ!離せって!!ウリーを連れて帰るんだろ!?」
「連れては帰らない。」
セージュに腕を引かれた時、力では絶対にセージュに敵わなくてもウリートはわずかに足を踏ん張った。今、アランドに連れて帰らないと言われて、何故かホッとしている自分がいる。
「なんでだ!?」
「その様に話が決まっているからだ。さ、セージュ帰るぞ。ウリーの可愛い顔も見れたしな。」
「ヒュンダルン様…?決まっているって何がでしょうか?」
暴れるセージュを心配しながらも、ウリートはヒュンダルンを仰ぎ見る。
「ん?ウリートの社交に協力すると言っただろう?それに俺にも協力してもらわなければ。」
「だから!何でそれがウリーなんだ!!そんなの、下っ端の………ウグゥッ!ング!!」
セージュが必死に何か訴えているが、アランドがすかさずセージュの口を塞いだ為に最後まで聞くことができない。
「兄様、セージュが苦しそうですよ?」
もがくセージュを目の前にしてウリートはただオロオロと戸惑うばかりだ。
「大丈夫だよ、ウリー。セージュも騎士訓練でこの位の荒事には慣れている。それにこれからも慣れてもらわなくては私がちょっと困るかな?」
ニッコリと嬉しそうに語るものだから、ついついアランドが話した内容を聞き逃すところであったけれど、アランドは何か引っかかる発言をしているように思う。
何故?セージュはこれに慣れなければいけないのだろう?
「やめろ、アランド。それ以上は家に帰ってからにしろ。ウリートに変な事を聞かせるなよ。」
アランドを止めればいいのか、でもどうしたらいいのか、挙動不審のウリートの後ろからヒュンダルンはウリートの耳を塞ぎに来た。
「おや、まだウリートには刺激が強すぎるか?」
「お前、わざとか…いい性格しているな…」
「ふふ、私の弟達は可愛いだろう?だから構うのをやめられないんだ…。一番どこにも行かないだろうと思っていたウリーが手を離れてしまうのだから、これくらいは良いだろう?」
「歪んだ愛だな。」
「何も言わないよりは良いだろう?私達には私達なりの成り様があるのさ。と、言う事で、私達は明日休暇を貰う。そう伝えておいてくれ。」
「何を言う。騎士養成員に休暇は無いぞ?」
「では、私の付き添いという事で…あ、実家からウリー宛に手紙が来ている。マリエッテに渡してあるから後で見てくれ。」
ウリート宛の手紙なのに、ビュンダルンに見ておけとは…
「断れない相手だな…」
嫌な予感を置き去りにしつつ、アランドは半ばセージュを引きずりながらエーベ公爵邸を後にした。
「あいつ…後継はどうするつもりだ?」
今までの来る者拒まずであったアランドの行動を見ればあれが本気だと言うことは分かった。しかし、アランドも侯爵家の嫡男で、次男はここにいるし、このままでは今後の後継が望めないのでは無いだろうか…ヒュンダルンが取ろうとしている様に親戚筋から優秀な者を養子にすると言う手もあるのだが。
「あ、アランド様ならば大丈夫でございます。外にお子様がおりますから、今は3名ほどでしょうか?」
セージュの為にと茶と菓子を持って訪室してきていたマリエッテが、事も無げにそんな事を言ってきた。
どうやら来る者拒まずのアランドは既に子持ちだと言うのだ…
「市井出の子供となりますでしょうが、裕福な商家のお子様もおりますし、優秀にお育ちになるのでは?」
ヒュンダルンとウリートの為にお茶を入れながらマリエッテはサラッとそんな事まで暴露する。
「マリエッテ…それをここで言っても良いのか…?」
ともすれば当主が頭を抱えて悩み込みそうな問題であると思うのだが………
「はい。大丈夫だろうと存じます。アランド様もお子様の事はご存じですし…あ!ウリート様はご存知ありませんからこのままに…!」
そのウリートは未だヒュンダルンに耳を塞がられていて、少し困ったら様な表情をしている。そんなウリートにヒュダルンはニッコリと優しい笑顔を投げかけて、ウリートの塞いでいた耳をそっと外した。
「ふぅ…」
塞がれていた耳は熱くなっていて少し赤い。
「悪い、痛かったか?」
「いいえ。でもどうしたんです?突然…」
「大人のお話の様でしたよ。」
茶を煎れつつマリエッテがそう説明した。
ウリートの目の前で、セージュについて不謹慎な発言があったなどとは言えるものでは無いだろう。
「あ、お仕事の話ですね?では、守秘義務がありますね。」
ヒュンダルンと兄とアランドは騎士団長である。仕事の内容如何ではおいそれと話していいものでは無いだろうから、あの行動は理解できた。
「……………」
マリエッテは無言でウリートを座らせるべくエスコートしているヒュンダルンに視線を送り、並んで座ったヒュンダルンとウリートの前に煎れたての茶を置いた。
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「承知いたしました。」
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