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42、貴婦人の囀り ⑤
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「聞きましたわね?皆様……」
エーベ公爵邸を辞しての馬車の中、3人の令嬢達の金、緑、灰色の瞳はキラキラと異様に輝く。
「ええ、勿論ですわ。レジーネ様…聞き逃すなどあり得ませんし、勿体ない…」
「本当ですわね?スザンナ様。私、危うくティーカップを叩き割る所でしたわ。」
「ま、ユーリ様ったら…!良く耐えられましたわ!私だって叫び出したい所をフォークを机に刺して耐えようと思いましたけど、握りしめる事で耐えまして…今、手が物凄く痛いですわ。」
「まあ、スザンナ様…大切なお手を…お大事になさいませ。貴方様は文才に冴えておりますから、私達の計画をちゃんと書き留めていただかなくてはなりませんわ。」
「緊張してしまいますわね…」
「ふふ、ご安心なさって、皆様それは楽しみにしていますの。協力を惜しみなく与えて下さるそうですから。それよりもねぇ皆様…本当に夢のようなお話しね?お二人ともお名前で呼び合って?…………そして、まさかの、閨の真似事までしているって仰っていましたわよね?」
「「ええ、聞きましたわ!」」
「レジーネ様…けれど、けれども……口惜しいですわ!!」
「ユーリ様、分かります!分かりますから!そんなに扇を握りしめては貴方様まで手を痛めてしまいますわ!」
「だって……ねぇ?聞きましたわよね?」
「ええ、勿論です。ユーリ様。ウリート様ははっきりと友人と仰っていましたわ。」
「レジーネ様、私達も友人ですけれど、そんな事、なさいまして?」
レジーネ侯爵令嬢、ユーリ子爵令嬢、スザンナ男爵令嬢、本来身分の云々を鑑みるならば、この様に気安く意見を言い合える様な間柄ではないはずだ。しかし、彼女達は共通の趣味を通して同士の様な関係を築き上げて来た。だからと言って、同性婚が許されるこの国であっても、閨を共にしようとは思わない。
「何とも自覚がないのが歯痒すぎます!」
「ええ、それなのですわ。ユーリ様。ですから、打開策を考えましょう?」
レジーネの美しい金の瞳が更にきらりと光る。
「ま、レジーネ様…悪いお顔……いえ、冴えた瞳をしておいでよ?」
「ふふふ、スザンナ様…私達にできる事、まだまだありますわ…」
「勿論ですわ!何しろここにおられるレジーネ様がついておられるのですもの…して……どの様に?」
ゴトゴト揺れる馬車の中、きっと令嬢達の声は外には響かないだろうに、何故だか3名とも声のトーンをグッと落とした。
「私の父が良い物を見つけて下って……」
ふふふ、と軽やかに微笑むレジーネが言う良い物とは、きっと通常で考えた文面通りの物じゃない。
「ま、ぁ…海外にお詳しいエリッジ侯爵様が?それは?」
「今のお二人にはきっと必要になる物ですわ。もっと距離を縮めて頂いて、仲良くなってもらわなくては…!」
「ふふ、レジーネ様の事ですもの。お一つだなんて言いませんわよね?」
フォークを握りしめて痛めた手をさすりながらスザンナはニッコリと微笑んだ。
「勿論です。一つだなんて、心の狭い…大切な友のためならば、いいえ、素晴らしいお二人の愛の為ならば、二つでも三つでも必要な物は用意するのですわ。」
「レジーネ様、素晴らしいですわ!その心根……では…!私も我が家の得意分野を発揮いたします。ふふふ…楽しみだわ…!」
「スザンナ様の所は布を幅広く取り扱ってしいますものね?」
「ええ、ユーリ様。ですからこんなシチュエーションにピッタリなご衣装を用意する事は得意ですの。良く新婚ご夫婦や高齢のご夫婦にも相談されますのよ。」
「まあ、商売上手ですこと!」
「あぁ、素敵ですわ…早くお二人の仲睦まじい様をこの目に写したいですわね?どんなお顔で過ごされるかしら…」
「ふふふふ…ユーリ様、スザンナ様、焦らないことよ?これから、まずは、目覚めたゴーリッシュ騎士団長には頑張って頂かないと…!」
「きゃ…!」
「本気になった時のあのお方の瞳なんて……真っ直ぐ見つめられただけで、ウリート様が失神してしまうかもしれませんわ。」
「ですからユーリ様…徐々に、慣らしていただいて…」
「レジーネ様ったら……慣らしていくだなんて…そんな、基本的なこと……」
「あら、スルスルと事が進むにはその基本が大切ですわよ?」
「「ええ、心得ていますわ!」」
声を揃えて令嬢達は返答する。もう誰しも声を抑えようとは思わないようだ。楽しそうに声を弾ませて会話を続ける様は年相応の令嬢達にしか見えず、御者も御者台で思わずに微笑んでしまったと言う。
エーベ公爵邸を辞しての馬車の中、3人の令嬢達の金、緑、灰色の瞳はキラキラと異様に輝く。
「ええ、勿論ですわ。レジーネ様…聞き逃すなどあり得ませんし、勿体ない…」
「本当ですわね?スザンナ様。私、危うくティーカップを叩き割る所でしたわ。」
「ま、ユーリ様ったら…!良く耐えられましたわ!私だって叫び出したい所をフォークを机に刺して耐えようと思いましたけど、握りしめる事で耐えまして…今、手が物凄く痛いですわ。」
「まあ、スザンナ様…大切なお手を…お大事になさいませ。貴方様は文才に冴えておりますから、私達の計画をちゃんと書き留めていただかなくてはなりませんわ。」
「緊張してしまいますわね…」
「ふふ、ご安心なさって、皆様それは楽しみにしていますの。協力を惜しみなく与えて下さるそうですから。それよりもねぇ皆様…本当に夢のようなお話しね?お二人ともお名前で呼び合って?…………そして、まさかの、閨の真似事までしているって仰っていましたわよね?」
「「ええ、聞きましたわ!」」
「レジーネ様…けれど、けれども……口惜しいですわ!!」
「ユーリ様、分かります!分かりますから!そんなに扇を握りしめては貴方様まで手を痛めてしまいますわ!」
「だって……ねぇ?聞きましたわよね?」
「ええ、勿論です。ユーリ様。ウリート様ははっきりと友人と仰っていましたわ。」
「レジーネ様、私達も友人ですけれど、そんな事、なさいまして?」
レジーネ侯爵令嬢、ユーリ子爵令嬢、スザンナ男爵令嬢、本来身分の云々を鑑みるならば、この様に気安く意見を言い合える様な間柄ではないはずだ。しかし、彼女達は共通の趣味を通して同士の様な関係を築き上げて来た。だからと言って、同性婚が許されるこの国であっても、閨を共にしようとは思わない。
「何とも自覚がないのが歯痒すぎます!」
「ええ、それなのですわ。ユーリ様。ですから、打開策を考えましょう?」
レジーネの美しい金の瞳が更にきらりと光る。
「ま、レジーネ様…悪いお顔……いえ、冴えた瞳をしておいでよ?」
「ふふふ、スザンナ様…私達にできる事、まだまだありますわ…」
「勿論ですわ!何しろここにおられるレジーネ様がついておられるのですもの…して……どの様に?」
ゴトゴト揺れる馬車の中、きっと令嬢達の声は外には響かないだろうに、何故だか3名とも声のトーンをグッと落とした。
「私の父が良い物を見つけて下って……」
ふふふ、と軽やかに微笑むレジーネが言う良い物とは、きっと通常で考えた文面通りの物じゃない。
「ま、ぁ…海外にお詳しいエリッジ侯爵様が?それは?」
「今のお二人にはきっと必要になる物ですわ。もっと距離を縮めて頂いて、仲良くなってもらわなくては…!」
「ふふ、レジーネ様の事ですもの。お一つだなんて言いませんわよね?」
フォークを握りしめて痛めた手をさすりながらスザンナはニッコリと微笑んだ。
「勿論です。一つだなんて、心の狭い…大切な友のためならば、いいえ、素晴らしいお二人の愛の為ならば、二つでも三つでも必要な物は用意するのですわ。」
「レジーネ様、素晴らしいですわ!その心根……では…!私も我が家の得意分野を発揮いたします。ふふふ…楽しみだわ…!」
「スザンナ様の所は布を幅広く取り扱ってしいますものね?」
「ええ、ユーリ様。ですからこんなシチュエーションにピッタリなご衣装を用意する事は得意ですの。良く新婚ご夫婦や高齢のご夫婦にも相談されますのよ。」
「まあ、商売上手ですこと!」
「あぁ、素敵ですわ…早くお二人の仲睦まじい様をこの目に写したいですわね?どんなお顔で過ごされるかしら…」
「ふふふふ…ユーリ様、スザンナ様、焦らないことよ?これから、まずは、目覚めたゴーリッシュ騎士団長には頑張って頂かないと…!」
「きゃ…!」
「本気になった時のあのお方の瞳なんて……真っ直ぐ見つめられただけで、ウリート様が失神してしまうかもしれませんわ。」
「ですからユーリ様…徐々に、慣らしていただいて…」
「レジーネ様ったら……慣らしていくだなんて…そんな、基本的なこと……」
「あら、スルスルと事が進むにはその基本が大切ですわよ?」
「「ええ、心得ていますわ!」」
声を揃えて令嬢達は返答する。もう誰しも声を抑えようとは思わないようだ。楽しそうに声を弾ませて会話を続ける様は年相応の令嬢達にしか見えず、御者も御者台で思わずに微笑んでしまったと言う。
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