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6、結婚相手はどんな方に?2
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「品定めですか?」
「そうですわ、ウリート様。お相手がどの様な方か知らないままではご不安でしょう?」
確かにレジーネの言う通り生涯の伴侶とするのだから相手の性格位は知っておかなければならないだろう。だが、ウリートにも問題はある。病弱であるから騎士となって武勲を立てての出世は見込めない。できて研究職か高貴な家の子供達を教える家庭教師だろう。そんな身分の自分でも良いと言ってくれる相手がいるのかどうか…まずは相手が見つかるかどうかもわからないのだ。
「そんなに思い込まなくても大丈夫ですわ!ウリート様。我が家は父の仕事の関係で色々な国の人々を見ますの。世界は広いんですのよ?ウリート様ほどの器量をお持ちならば一生働かなくても養って下さる方だって見つけるのも難しくは無いですわ!」
「ま、スザンナ様の言う通りだわ!この王城にだって全国、又周辺国から人が集まりますのよ?ね?お茶を飲みつついろんな方を観察するのも宜しいわ!」
「そうですわ。私もユーリ様に賛成ですわ。お茶会にいらっしゃる時にいろんな方をご紹介しましょうね?」
「ええ、楽しくなりましてよ!レジーネ様!」
「ユーリ様はどんな方もですものね?」
「あら、そんなレジーネ様だって!」
「ま、私だって見守る事は好きでしてよ?」
「あの…皆様?」
ウリートは会話からおいてきぼりだ。しかしどうやらウリートの結婚相手を探すと言う目的は理解されて受け入れられたとは思いたい。ウリート自身よりも乗り気で見定める方法などを話し始めているのだから…
「宜しい事?ウリート様?」
「はい……」
「お身体が弱くあられるとお聞きしましたわ。」
「はい、そうです。この頃は少し落ち着きましたが。」
「ではまずは逞やかなお方に目をつけるべきですわね。」
逞しい…?優しい、とか可愛らしいとかではなくて?
「だってあなた様が倒れてしまわれた時、どうやって介抱しますの?ウリート様よりもか細くひ弱な方ならばあなた様を守るどころか共倒れになってしまいましてよ?」
これでは相手も自分も不幸になる。だからある程度体力もあり夫を支える精神力を持っている、そう言う逞しさが必要なのだとレジーネは言いたいのだろう。
「なるほど…その様な考え方もあるのですね。私はただ穏やかな、優しい家庭が築けたらと…騎士職や官職は体力的に無理そうですので、どこかの良家で家庭教師でもして生計を立てようと思っておりました。」
「ご立派ですわ!」
「なんと健気な…!」
特別なことを言った覚えは無いのだが…何故かウリートはここにいるご令嬢達の心を掴んでしまったらしい。
良い出会いというものはこう言うことを言うのだろうか?
ウリートが令嬢にニッコリと微笑むと令嬢達もニッコリと笑顔を返す。この様な穏やかで暖かな雰囲気がウリートには心地よい。
「叔母上…あそこに居る者は?」
ヒュンダルン・ゴーリッシュは領地から帰って直ぐに王城に顔を出しているという父の歳の離れた妹であるメリール叔母に挨拶しようと、騎士団訓練所から花盛りの王城の中庭に足を運んだところだった。ヒュンダルンはこの国の第一騎士団の団長を務める自他共に認めることができるほどの強者である。戦場では勇猛果敢に悪鬼の如くに敵に立ち向かうと恐れられてもいる彼なのだが、情に厚くこうして城を訪れ社交を楽しんでいる未亡人の叔母の顔を時折見に来るのだ。ヒュンダルンの赤茶の髪から戦場では赤獅子などどの二つ名で呼ばれてもいる。
ヒュンダルンの後ろには副官リード・サラントが付き従う。王城のことを良く知っている者達ならばこの光景はいつものことで、彼らが通る所では何かと噂が飛ぶのも常であった。
そのヒュンダルンがメリール未亡人にいつもと同じ様に挨拶をしに中庭に訪れた時にその場が普段とは違う雰囲気である事に気がつく。
お茶会の中心は子女と夫人だ。中心と言うよりこの国ではほぼ女性しかいないものと認識している者がほとんどだろう。なのに今日は如何だろうか?この貴婦人会の中心であろう令嬢達の中に然も当然の如くに男性が混じっているのだから。
子供では無いな…
どこかの子息が親に連れられて来たものとも考えられたのだが成人に近く見える。それにしては随分と華奢なのだが……
「まぁ!ヒュンダルン…!お久しぶりね?王都は変わりなくて?」
「ええ。」
「この赤獅子率いる騎士団がおりますからね。ご安心ください、クラーナ伯爵夫人。」
「まぁ…相変わらず頼もしい副官でいらっしゃるわね?サラント卿のお美しさが変わらないのもヒュンダルンのおかげかしら?」
副官であるリード・サラントは非常に美しい外見をしている。透き通る様な碧眼に美姫の様に整った顔立ち、金の長い髪は一本に束ねられて細く締まった姿勢の良い身体の背中に流れている。間違えなくここに集っているご婦人達よりも美しいと言っても過言では無いほどの美貌の持ち主だ。
「ぅわぁ…勘弁してください…伯爵夫人…私にも人権はありますし、選ぶ権利もあるでしょう?」
それなのにリードは美しい美貌が歪むのを歯牙にも掛けず思い切りギュッと顰めて本当に嫌そうだった。
「そうですわ、ウリート様。お相手がどの様な方か知らないままではご不安でしょう?」
確かにレジーネの言う通り生涯の伴侶とするのだから相手の性格位は知っておかなければならないだろう。だが、ウリートにも問題はある。病弱であるから騎士となって武勲を立てての出世は見込めない。できて研究職か高貴な家の子供達を教える家庭教師だろう。そんな身分の自分でも良いと言ってくれる相手がいるのかどうか…まずは相手が見つかるかどうかもわからないのだ。
「そんなに思い込まなくても大丈夫ですわ!ウリート様。我が家は父の仕事の関係で色々な国の人々を見ますの。世界は広いんですのよ?ウリート様ほどの器量をお持ちならば一生働かなくても養って下さる方だって見つけるのも難しくは無いですわ!」
「ま、スザンナ様の言う通りだわ!この王城にだって全国、又周辺国から人が集まりますのよ?ね?お茶を飲みつついろんな方を観察するのも宜しいわ!」
「そうですわ。私もユーリ様に賛成ですわ。お茶会にいらっしゃる時にいろんな方をご紹介しましょうね?」
「ええ、楽しくなりましてよ!レジーネ様!」
「ユーリ様はどんな方もですものね?」
「あら、そんなレジーネ様だって!」
「ま、私だって見守る事は好きでしてよ?」
「あの…皆様?」
ウリートは会話からおいてきぼりだ。しかしどうやらウリートの結婚相手を探すと言う目的は理解されて受け入れられたとは思いたい。ウリート自身よりも乗り気で見定める方法などを話し始めているのだから…
「宜しい事?ウリート様?」
「はい……」
「お身体が弱くあられるとお聞きしましたわ。」
「はい、そうです。この頃は少し落ち着きましたが。」
「ではまずは逞やかなお方に目をつけるべきですわね。」
逞しい…?優しい、とか可愛らしいとかではなくて?
「だってあなた様が倒れてしまわれた時、どうやって介抱しますの?ウリート様よりもか細くひ弱な方ならばあなた様を守るどころか共倒れになってしまいましてよ?」
これでは相手も自分も不幸になる。だからある程度体力もあり夫を支える精神力を持っている、そう言う逞しさが必要なのだとレジーネは言いたいのだろう。
「なるほど…その様な考え方もあるのですね。私はただ穏やかな、優しい家庭が築けたらと…騎士職や官職は体力的に無理そうですので、どこかの良家で家庭教師でもして生計を立てようと思っておりました。」
「ご立派ですわ!」
「なんと健気な…!」
特別なことを言った覚えは無いのだが…何故かウリートはここにいるご令嬢達の心を掴んでしまったらしい。
良い出会いというものはこう言うことを言うのだろうか?
ウリートが令嬢にニッコリと微笑むと令嬢達もニッコリと笑顔を返す。この様な穏やかで暖かな雰囲気がウリートには心地よい。
「叔母上…あそこに居る者は?」
ヒュンダルン・ゴーリッシュは領地から帰って直ぐに王城に顔を出しているという父の歳の離れた妹であるメリール叔母に挨拶しようと、騎士団訓練所から花盛りの王城の中庭に足を運んだところだった。ヒュンダルンはこの国の第一騎士団の団長を務める自他共に認めることができるほどの強者である。戦場では勇猛果敢に悪鬼の如くに敵に立ち向かうと恐れられてもいる彼なのだが、情に厚くこうして城を訪れ社交を楽しんでいる未亡人の叔母の顔を時折見に来るのだ。ヒュンダルンの赤茶の髪から戦場では赤獅子などどの二つ名で呼ばれてもいる。
ヒュンダルンの後ろには副官リード・サラントが付き従う。王城のことを良く知っている者達ならばこの光景はいつものことで、彼らが通る所では何かと噂が飛ぶのも常であった。
そのヒュンダルンがメリール未亡人にいつもと同じ様に挨拶をしに中庭に訪れた時にその場が普段とは違う雰囲気である事に気がつく。
お茶会の中心は子女と夫人だ。中心と言うよりこの国ではほぼ女性しかいないものと認識している者がほとんどだろう。なのに今日は如何だろうか?この貴婦人会の中心であろう令嬢達の中に然も当然の如くに男性が混じっているのだから。
子供では無いな…
どこかの子息が親に連れられて来たものとも考えられたのだが成人に近く見える。それにしては随分と華奢なのだが……
「まぁ!ヒュンダルン…!お久しぶりね?王都は変わりなくて?」
「ええ。」
「この赤獅子率いる騎士団がおりますからね。ご安心ください、クラーナ伯爵夫人。」
「まぁ…相変わらず頼もしい副官でいらっしゃるわね?サラント卿のお美しさが変わらないのもヒュンダルンのおかげかしら?」
副官であるリード・サラントは非常に美しい外見をしている。透き通る様な碧眼に美姫の様に整った顔立ち、金の長い髪は一本に束ねられて細く締まった姿勢の良い身体の背中に流れている。間違えなくここに集っているご婦人達よりも美しいと言っても過言では無いほどの美貌の持ち主だ。
「ぅわぁ…勘弁してください…伯爵夫人…私にも人権はありますし、選ぶ権利もあるでしょう?」
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